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レーヴァティン

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第十話 巨人その九

「あるに越したことはないな」
「何にでも使える」
「だからな」
「貨幣経済が成り立っているならだがな」
 この前提が必要にしてもというのだ、社会によっては貨幣経済が成り立っていない世界も存在しているからだ。彼等の世界でも。
「だが成り立っているならだ」
「この世界でもそうだしな」
「それならあるに越したことはない」
「それも多くな」
「それだけ色々なことに使える」
「ものも買ってな」
「そしてだ」
 英雄は金塊を一つ拾いつつ久志にこうも言った。
「袖の下もある」
「賄賂かよ」
「いざとなればだ」
「そうしたこともしてか」
「ことを乗り切ることも有り得る」
「奇麗なやり方じゃないな」
「奇麗でなくても危機を前にしてだ」
 そうした事態になってというのだ。
「それで乗り越えられるならいい」
「賄賂もか」
「そうだ、それでいい」
「そんなものか、世の中は」
「命と金どちらが大事だ」
 かなり素気なくだ、英雄は久志に問うた。
「一体」
「命に決まってるだろ」
 すぐにだ、久志は英雄に答えた。彼も金塊を拾っている。
「やっぱりな」
「そうだ、命があってこそ金も使える」
「そうだな、金は命あってだ」
「何でもそうだけれどな」
「命が金で買えるなら安いな」
「だから賄賂もか」
「必要ならば使うことだ」
「そういうことなんだな」
 久志もここで納得した。
「よくわかったぜ」
「だからその場合もだ」
「金は大事ってことだな」
「とにかく金に価値がある社会ならだ」
 それならというのだ。
「多く持っているに越したことはない」
「結局はそうだな」
「わかったな、ではだ」
「ああ、出来る限り多く持って行くか」
「そうだ、半分ずつだ」
 英雄は久志に金の額のことも話した。
「俺は三人、御前も三人倒した」
「だからだな」
「半分ずつだ」
 倒した数がそれだけだからだというのだ。
「貰うぞ」
「ああ、それでいこうな」
「それじゃあな」
 こう話してだ、そのうえでだった。
 久志と英雄は実際に金塊達を半分ずつ手に入れた、そうしてから再び旅に入った。そしてそのうえでだった。
 休憩の時に食事を摂った、久志はデルフォイで買った魔法の道具で湯を沸かしそこにやはりデルフォイで買ったお茶の葉を入れた。
 そうしてその茶を飲みつつだ、自分と同じ様にして茶を作って飲んでいる英雄に対してこんなことを言った。食事はパンと干し肉だった。 
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