艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~
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第二十二話
前書き
どうも、世界バレーと弟の練習試合を交互に見ています。どっちもどっちでおもろいわー。うわー、柳田すげー、うわー、とか言って世界バレーばっか見てて弟に怒られる今日この頃。
木曾さんはだいたい四年前位にここに着任したらしいんですよ。
流石にどういう経緯でだとか、元々何処に住んでいただとかのプライバシーな話は聞けてないですけどね………残念ながら。
それで、最初の一年位は、遠征と出撃を繰り返してた、あまり特徴のない人だったらしいんですよ。
らしい、と言うのはですね。私がここに着任したのはつい二年ほど前位ですからね……この話も天龍さんや摩耶さんから聞いた話ですし。
話を戻しますけど、そんな木曾さんも、今から三年前から、急に訓練を物凄い量をこなすようになったらしいんですよ。
天龍さんや摩耶さん、更には大淀さんとかに聞いたんですけど、結局は誰も教えてくれなかったんですよね。
仕方ないから、個人的に提督の居ない間に、執務室やら図書室の過去の資料を調べてみたんですけど…………どうやらとある出撃での事件が関係してるのではと見てるんですよ。
勿論、この仮説は私の独断と偏見と妄想から生まれているものですから、合ってるとは限りませんよ?それでも良いですか?
…………分かりました。話しましょう。
三年前の、五月九日。
その日は、沖ノ鳥海域に出撃していたみたいです。木曾さんも当然ながら編成に入っていました。余談ですけど、この頃の木曾さんの撃沈数は、三十回の出撃で六十隻位でして、まだまだおとなしかったみたいです。
そこで、轟沈した味方艦が居たんですよ。
名前は五月雨と言うらしいんですけど……その辺りの資料が綺麗さっぱり無くなって居ましてね。
どうやらその間は、提督が本部の方に仕事に行っていて、その間に本部の方から来たお偉いさんが仕切ってたようでして………本部はそんな汚点を記録として残したく無かったんでしょうね。
そして、その後ですね。木曾さんが化物のようになっていったのは。
その後の一年間は、出撃数は百越え。撃沈数は五百とか。一回の出撃で五隻ですね。頭おかしいですよ……まぁ、今なんて一回の出撃で二桁行かない方がおかしいとか言われてますけどね。
まとめますと、私の予想ではその間に木曾さんの心情になにかとてつもなく大きな変化があった、と考えてます。」
まぁ、今でも見付けれて無いんですけどね。と、青葉は最後にそう言った。
「要するに、その沖ノ鳥海域への出撃のことを知っている奴を探せばいいんだな。」
「そうですけど………厳しいと思いますよ?」
青葉は肩をすくめてそう言った。
「ここだけの話なんですけど……当事ここにいた人の殆どが戦艦や空母の人達なんですけど……その人達の中には、木曾さんを嫌っている人達が多いんですよね。」
言われてみると、確かにそうだった。
俺がここに着任の挨拶をしたときも、なんか木曾は喧嘩腰だったし、戦艦や空母の人達の中には険しい目つきの人がいた。
「たぶんだけど、長門さんや加賀さんは少なくとも嫌ってそうですよね……。」
春雨はしょんぼりしたようにそう呟いた。
第一船隊と第四船隊の旗艦二人がか…………確かに厳しいな。
「天龍さんはこの中でも最古参クラスですし、話を聞こうかと思ったんですけど……木曾さんと仲がいいからかもしれませんけど、話してくれないんですよね……。」
となると……。
「摩耶さん、か。」
摩耶さんは、確かここの重巡洋艦の中でも最古参だったはずだ。なかなかオープンな性格の摩耶さんなら話してくれるかも。
「そう言えば、明石さんはどうなんですか?ここだったら、大淀さんの次くらいに古参ですよね?」
「「あ。」」
俺と青葉は同時に言った。完全に盲点だった。
……つーか青葉。なんでお前がそこを忘れてんだよ。
「そう言えばそうですよね。明石さん、なにか知りませんか?」
しかし、まったく恥じている様子も無く明石さんに質問する青葉。なかなかいい度胸してんなこいつ。まぁ、度胸が良くないとあんな質問できないよな……と、俺はいつぞやの取材を思い出していた。
「うーん、知らない事は無いんだけど……木曾に口止めされてるのよねぇ……。」
迷ったように頬を掻く明石さん。
「お、俺のドラム缶一個で手を打ってくれませんか?」
「「「アホですか?」」なの?」
三人全員に突っ込まれた。そこまでいらないのかよドラム缶。遠征とかに便利だろ。俺は遠征には行ったこと無いから使ったこと無いけどさ。
「うーん、そうね。木曾がどういう感情を持ってああなったか位なら教えたげるわ。」
「えっと、やっぱり……復讐、とかですか?」
仲間を沈められた敵討ち。
それがいろんな意味で一番納得が行く。
だが、明石さんが言ったものは、俺達の想像とはだいぶ違っていた。
「それはね………………自己嫌悪よ。」
―食堂―
「んで、アタシに頼ってきたと………情けねぇなぁ。」
俺と春雨はその後、図書室に戻って昔の資料を漁ってみたりしたが、青葉の言う通り、何も出てこなかった。
それで、ついさっき摩耶さんを捕まえて三人で話している、と言うわけだ。
理由を聞いてさっそく罵倒だけど。この辺は木曾より厳しい。
「情けないとは思ってますけど……他に当たるアテも無いですし…………。」
「ま、そりゃそうだろうな。当事ここにいた奴らってのは、アタシ含めても七人だけだしな。後は他の鎮守府に引き抜かれたしな。」
その話はよく聞くが、それって提督がかなりしんどそうだ。育ててきた艦娘を他のところに強制的に連れてかれてる訳だし。
「まぁ、いいぜ。条件付きだけどな。」
「…………なんですか?」
俺は半分諦めたようにそう呟いた。
「簡単な話だ。一週間以内にアタシに魚雷訓練での成績で勝てばいい。」
「…………へ?」
俺は完全に予想してなかった条件を提示されて、変な声を出した。
「あぁ、当然春雨もな。」
「え?」
春雨も似たような声を出す。
「それくらいできねぇような奴に、仲間の情報を簡単に教える訳には行かねぇなぁ。」
摩耶さんは、完全に楽しんでいるようだ。なかやか性格の悪そうな笑顔をしている。
「ま、いらねぇっつーんなら話は別だがな。」
「うっ…………。」
確かに、木曾の情報がいらないってんなら、この条件を受ける必要性は全く無い。無いんだが…………。
「分かりましたよ!その条件、受けてやろうじゃあ無いですか!」
俺は啖呵を切った。
「そうか。そんじゃ、これから一週間、いつでも受け付けてやるからよ。精々頑張ってみな。」
最後に摩耶さんはニヤリと笑ってから、いつの間にやら空になっていたざる蕎麦のお盆を持って立ち上がった。
俺は摩耶さんが居なくなった後、机に突っ伏した。
「に、二号さん………大丈夫なんですか?」
春雨が心配そうに聞いてきた。
「…………正直、自分でもかなりヤバイと思ってる。」
俺は机に突っ伏したまま答えた。正直、涙が出そうだ。
この敗北感。
見事に摩耶さんに乗せられた。
「確か………二号さんの魚雷の成績って…………。」
「……………おう、エグいぞ?」
この鎮守府では、週に一回、軽巡洋艦には近接戦、砲撃、雷撃のテストみたいな物がある。俺は砲撃は中の中、近接戦は中の上ぐらいなんだが………。
「雷撃の成績は、全艦娘の中でも恐らく最下位だろうな。」
そう、俺はだいたい一~二メートル位の距離までじゃないと魚雷を当てれない。
提督に言わせると、「なんで砲撃がそこそこで雷撃ができないの?」とのこと。そこまで簡単なのかよ、雷撃って。
余談だが、木曾はオール一位だ。砲撃は金剛さんより正確で、雷撃は北上より精密、近接戦は、あの長門さんと互角以上に戦うときた。もうあいつ一人でいい気がしてきた。まぁ、流石にそれをしたら轟沈しそうだけど。
「………春雨は?」
「全部真ん中位です………。」
「「……………………………。」」
絶望感しかねぇ。
なんてったって、相手はあの摩耶さんだ。
「わが鎮守府最強の重巡洋艦相手だぜ………?」
もう一度言おう。絶望感しかねぇ。
「仕方ねぇ…………教えて貰うか…………。」
これまでも訓練はしてきたのだが、どうにも上手くならなかったのだ。自分一人じゃ限界がある。
「えっと…………誰にですか?」
問題はそこだ。
実のところ、駆逐艦と軽巡洋艦、そして重巡洋艦の魚雷の撃ち方が違うらしい。
「私は時雨ちゃんに教えて貰えばいいとして………二号さんは?」
「……………………。」
北上………はなに言ってるか分からない。
大井………は北上が居ないと使い物にならない。
天龍と那加…………は遠征で殆ど居ない。
球磨と多摩………は論外。
神通さん………は一番マシだが、摩耶さんと戦う前に倒れそうだ。
川内………は昼間起きてない。
となると…………。
「あいつしか居ねぇか。」
俺は立ち上がった。
「春雨、暫くはお互いに練習をつけてもらもう。」
「えっと………誰にですか?」
俺は春雨に、ある軽巡洋艦の名前を言った。
―トレーニング施設―
「………と言うわけで教えてくれ……いや、下さい。」
俺はトレーニング施設にいたそいつに頭を下げた。
「お前さ…………目的の為には手段を選ばねぇのか?」
木曾は、呆れた顔をしてこちらを見ていた。
後書き
読んでくれてありがとうございます。我が家で執筆するのって、なかなか落ち着いて書けますねぇ。外だとクラスメートの目を気にしないといけないのがまた………あいつらなかなか鋭いし………。
それでは、また次回。
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