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レーヴァティン

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第九話 別れその十一

「破滅主義っていうとな」
「太宰だな」
「ああ、斜陽だったな」
 この小説の中で上原、太宰本人を書いたと言われている破滅的な作家が仲間内で飲んでいるうちに笑って言った言葉だ。終戦直後の退廃し先の見えない世相や農地改革等で変わっていく自身の実家等を反映していと言われる作品の場面の一つだ。
「そうだったな」
「太宰になるつもりはないか」
「もっと言えば坂口安吾にもな」
 太宰と同じく新戯作派に属する作家だ、その破天荒かつ破滅的な生き様や主張や太宰以上だとされている。
「ならないさ」
「そちらも極端にはか」
「なるつもりはないさ」
「そうか」
「ああ、遊ぶけれどな」
「破目は外さずにか」
「楽しく長くな」
 太く短く、ではなくというのだ。
「やっていくさ」
「それならだ」
「ああ、遊んでもな」
「適度なところで止めておくことだ」
「実際にそうしていくな」
「そうだな、では街を出てだ」
 英雄はそこから先のことも話した、ここでまた。
「そしてだ」
「港町に行くか」
「俺はそこから馬と俺の持ちものを持ってだ」
「金も半分持って行けよ」
 久志は英雄に明るく笑ってこのことを言った。
「そっちもな」
「ああ、金もだったな」
「おいおい、忘れたのかよ」
「実はな」
「これも忘れたら駄目だろ」
 馬や持っていく武器等と共にというのだ。
「そうだろ」
「そうだな」
「パンシャは俺が持って行くな」 
 驢馬はというのだ。
「そうするな」
「そうしろ、俺は俺でだ」
「驢馬を買うか」
「それだけの金は充分にあるからな」
 半分に分けて彼の分だけでもというのだ。
「そうする」
「そうか、そっちを飼うか」
「あの驢馬はいい驢馬だが名前が気に食わない」
「おい、いい名前だろ」
「西武ライオンズのマスコットなぞ知るものか」
 彼等の世界のことから言うのだった。
「面白くない名前だ」
「じゃあトラッキーでよかったのかよ」
「野球から離れろ」
 英雄は冷静な口調で言った。
「別の名前にしろ」
「駄目か」
「驢馬には合わない」
「そういえば驢馬とか馬のマスコットキャラいないな」
 日本の野球のそれにはだ。 
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