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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百十二話 一族の争いその三

「八条荘はあまり」
「内輪揉めはですか」
「ないと思いますが」
「いえ、これがです」
「違うんですか」
「実は芽は時折見られます」
 内輪揉めのそれはというのだ。
「これが」
「そうなんですか」
「はい、そしてそうしたことにならない様にしています」
「そうだったんですか」
「意外でしょうか」
「はい」
 実際にとだ、僕は畑中さんに答えた。
「八条荘は別に」
「平和ですがやはり芽は時折あるのです」
「そうは見えないですが、いえ」
 ここで僕は気付いた、僕は十七年しか生きていない。今年で十七歳になる。それ位の年齢ではとてもだ。
「見えないこともありますね」
「そう言われますか」
「はい、まだ若いので」 
 自分でも畑中さんに言った。
「どうしても」
「そうしたことはやはり」
「年齢を重ねるとですね」
「わかってくるものかと」
「そうですよね」
「ですから義和様も」
 僕に穏やかな声で話してくれた。
「是非です」
「長く生きることですか」
「そうされればですね」
「わかるものもわかってきますので」
「生きることですか」
「天が定められた寿命まで」
 人は何時か絶対に死ぬ、けれど死ぬその時までというのだ。
「そうされて下さい」
「わかりました、生きることですね」
「何かを知り、理解する為にも」
 ここで話した内輪揉めの芽、それが見える様にもなるというのだ。僕が見たところ本当にそうしたことはないけれど。
「是非」
「そうさせてもらいます、自殺はですね」
「絶対にされないで下さい」
「はい」
 僕は畑中さんに少し苦い顔になって答えた。
「それは本当にですね」
「するものではないですね」
「あれだけは」
 心から思う、自殺はだ。
「してはいけないです」
「義和様もそう言われますね」
「あんなことをしたら」
「あれ以上無念なことはありません」
「全くです」
 知り合いの人が自殺して遺族の人達、残された人達の顔を見て心から思ったことだ。人をあんな顔にさせるならだ。
「私もそう思います」
「自殺は八条家の家訓にはないですが」
「それでもですね」
「するものじゃないですね」
「全く以て」
「本当に」
 僕は俯いていた、そのうえでの心からの言葉だった。 
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