艦隊これくしょん~舞う旋風の如く~
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出会う風と乗り越える壁
出会う風と乗り越える壁④
「初風ちゃーん!」
泊地の案内が終了し、これからどうしようか考えていると後ろからセーラー服姿の艦娘が駆けてきた。若干あか抜けていない顔つきをしており、茶髪のセミロングを後ろで2つ括りにしたその艦娘は、急いで初風を追いかけてきたからだろうか、肩で息をしている。この泊地で舞風が出会った4人目の艦娘だ
「あら、白雪じゃない。どうしたのよ?」
「どうしたのよ?じゃないでしょ!演習の時間になっても一向に来ないから探しに来たんだよ?」
白雪と呼ばれた艦娘は少し怒ったように頬を膨らませる。一方であーと頭を掻く初風。どうやら今日舞風の案内をすることを伝え忘れていたようだ。しかし、初風の表情を見るに、あまり演習に乗り気でないようにも見えるが
「あっ、そうだ」
初風が舞風を見てニヤリと笑う。何か嫌な予感がする・・・・・・舞風は不安を胸に抱きつつ事の顛末を見守る
「折角あの横鎮から新人が来たんだからお手並み拝見と行きましょうか、ね?舞風」
初風の発言に呆れる舞風と驚きの表情を見せる白雪、折角ここまで追いかけてきたのに演習を反故されるという始末。少しかわいそうになってくる
「えー・・・・・・私がやるのぉ?」
「あんた以外に誰がいるのよ?これから一緒にやっていくうえで実力を把握しておくことは重要だし」
それに、と初風は舞風の耳元で
「白雪って戦闘になると怖いのよ、すっごくね」
と囁いた。その後いたずらっぽく笑うと白雪の肩に手を置き
「そういうわけだから、提督に意見具申よろしくね白雪♪」
「ちょ!ちょっと初風ちゃん!」
そんな勝手にという言葉が出る前に初風はとっとと出撃ハッチのある方向に向かって行ってしまった
「もう!本当に勝手なんだから!」
かなり本気で怒っているのだろう、白雪は声を荒げる。どうしていいかわからずしばらく固まっていた舞風に、白雪はため息を一つついて声をかける
「舞風さん・・・・・・でしたっけ?早く出撃ハッチに向かった方がいいですよ?演習の時間、とっくに回ってますから。場所は分かりますよね?」
「あっはい!」
声をかけられ、慌てて出撃ハッチに向かう舞風。その背中を見つめ、白雪はポツリと呟く
「犠牲者が・・・・・・また一人」
白雪から演習相手の交代の意見具申を受けた提督はこれを快諾。自身も白雪を引き連れて演習場に訪れた。最も、提督を連れ出したのは白雪なのであるが
白雪は初風よりも前にこの泊地に着任した最古参メンバーの一人である。それ故、この鎮守府のほぼ全ての駆逐艦の面倒を見てきた。そんな白雪が最も危険視する駆逐艦が初風であった。初風は駆逐艦の中でもエリートに属する『陽炎型駆逐艦』の一人で、彼女もまた自身が陽炎型であることに並々ならぬ誇りを抱いている。一方で陽炎型以外の、というよりは自分以外の駆逐艦を見下しているような節があり、事実白雪が戦闘訓練を行った際にもろくに指示を聞かず、勝手気ままに振る舞っており、それを指摘しても聞く耳を持たなかった。当然、そんな態度をとって周りとの協調などできるはずもなく、様々な艦娘と対立して喧嘩という個人演習を挑まれてきたが、初風はそのことごとくを蹴散らし、挑んだ艦娘の自信をへし折ってきた。彼女がもっと社交的であれば、この泊地の人員は今の倍近くはいたであろう。
今日もまた、かわいそうな犠牲者が一人・・・・・・そんなことを考えていると艤装を装着した陽炎型の二人、初風と舞風が出撃ハッチから姿を現した
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