グランドソード~巨剣使いの青年~
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第2章
1節―旅の中で―
閑話…なぜソウヤは口調が固いのか?
「そういえばソウヤ。ちょっと良いか?」
ガタゴト…と馬車が移動する音をBGMに御者をやっていたソウヤは、不意に馬車の中から質問するエレンの言葉に「なんだ?」と答える。
「今まで昔の事を思い出して気付いたんだが、なぜお前はそんな威圧的な言葉を発しているんだ?」
ソウヤはその言葉を聞いて「あぁ、そのことか…」と苦笑いをしながらエレンの言葉を返す。
それを耳に入っていたルリは「確かに…気になります」と答え、レーヌは驚きの声を素の様子で口から出した。
「ソウヤって昔からこんな感じじゃなかったの!?」
「あぁそうだな。そうだな…。この喋り方になったのはルリの村から出たときか……?」
「はい、確かそうです」
あの時はなぁ…とソウヤは内心で笑っていると、エレンが何故だ何故だとしつこく聞いてくるので、ソウヤは答えることにする。
昔を思い出すような顔をして、静かにソウヤは”元通りの口調で”語りだす。
「…ここにトリップする前さ、俺は高校にいたことは知ってるよな?」
ソウヤはチラッと馬車の中を見て、頷く3人の顔を見て確認すると再び前を見て話しだす。
「高校のとき、俺はあんまりその安全で安心な生活がめんどくさったんだよ」
「どうしてですか?魔物に襲われる心配もない世界って、とても良いじゃないですか?」
ルリの疑問にソウヤは振り向かずうなずくことで肯定すると、3人には見えないように苦笑しながら話を続ける。
「何もないっていうのは、俺たちの中では普通で。それがとてもありがたいことだと実感できずにめんどくさいと俺は考えていたんだだから――」
そこでソウヤは一区切り置いてから、自分のあほらしさをかみしめるように口から言葉を発した。
「――トリップされたと聞いたとき、とても”嬉しかった”んだ。やっと退屈な日常から脱出できる…って」
「今でもその気持ちはあるのか?」
「ある。でも、それ以上にこの生活に生きるのに”今は”必死だからそこまで強くはない。」
ソウヤは静かに青空を見つめ、目を細める。
その姿は、なにかに後悔しているようにエレンたちは感じていた。
「でさ、俺がいきなりトリップされた場所が『瞬死の森』だった」
「はぁっ!?」
「本当か!?」
「え、『瞬死の森』って、え?」
ソウヤから発せられた爆弾発言はエレンやルリ、レーヌに見事直撃してレーヌは単に驚き、エレンは疑い、ルリは疑問符を出していた。
「まぁ、トリップされた時にもう結構強かったから生き延びられたけど…。それでエレンが居た城に住まわせてもらって、調子に乗ってたんだ」
「調子に乗っていたのか?あれでか??」
「俺に言わせれば…だよ。……それで、魔族と戦って死にそうになって…ルリと出会った」
そのソウヤの言葉にルリはうなずく。
ルリをちら見したエレンは再び背を向けるソウヤに顔を向ける。
「で、そこで1週間のんびり暮して、賊に村を襲われてさ…。そこでやっと気が付いたんだよ」
「なにに?」
「この世界は俺が思うほど絶対的に”甘く”はないってね。その体験から出来るだけ厄介ごとを避けようと強気の口調にしてきた」
なるほど…と3人が納得したようにうなずく。
そして、不意にソウヤは馬車を止めると、目の前にここらへんでは稀にみる『竜もどき』が目の前に現れる。
ソウヤは竜のような姿をした魔物を見据えて地面に下りると、言葉を紡ぐ。
「だから――」
その言葉を気にしないとばかりに『レーグン』はソウヤにとびかかる。
そしてソウヤに今ぶつかるというときに…『レーグン』は真っ二つに裂かれその命を散らした…。
ソウヤは、いつの間にかその手に持っていたサイレンを持ったまま、空を見上げ…
「――もう、俺は調子には乗らせない」
…”いつもの口調で”そう口にした。
それと同時にソウヤの内心は深い意思を燃えたぎらせていたのだった…。
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