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angelcode~とある少女の物語~

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運命の出会い

 
前書き
はい、angelcode第2話です。

どうしようか悩んだんですが、ここでソフィアの宿敵を紹介程度に出してもいいかな~なんて思って、べリアルを出すことにしました(ゲームとしてのラスボスは『ルシファー』なんですが、この小説としてはソフィアがメインな為、べリアルが敵側のメインになります) 

 
 ソフィア、ルゥ、べティの3人を乗せた荷馬車が学習院を出発して3時間ほど経った頃、見渡す限りの麦畑の中をゆっくり移動していた。

 空は青く澄んで冴え渡り、雲は所々にポツリポツリと浮かんでいる。

 3人はともに、藁束をクッション代わりにして座り、本を開いていた。ルゥとべティは小さい割には厚みのある聖書(教会が全員に配布したもの)なのだが、ソフィアが開いているのは、聖書の4倍くらいの大きさで、表紙の角が丸くなっていて古めかしさを醸し出している。

「あれぇ~?ソフィアは何を見てるの?」

 好奇心旺盛なルゥは、ソフィアが聖書とは違う本を開いているのに気付いて、横から首を伸ばして覗き込んだ。

「キャッ!」

 おどろおどろしい挿絵に、咄嗟に悲鳴が上がる。

「なんてものを見てるのよぅ~。ビックリしたじゃない、もぅ…」
「え…、これ『ゲーティア』なんだけど…。だって、私たちはエクソシストになったのよ。悪魔の知識は読んでおくべきでしょ。それとも『アルマデル』のほうが良かった~?」

 ちょうど開いていたページを、ルゥとべティに向ける。左側には説明がびっしりと書き込まれ、右側にはカラスの頭をした悪魔や、孔雀という彼女達は見たこともない極彩色をした鳥の悪魔や、少年の姿の悪魔等が描かれている。

「ゲーティアは『ソロモン72柱』についての記述があるだけだから『偽王国』よりは少なくて覚え易いんだけど……」
「どうりで、筆記試験で上位な筈だわぁ~。私なんて祭司から習った内容すら頭に入ってないって言うのに、ソフィアはそんなのばっかり、いつも読んでたんでしょ~…?」
「っていうか、昔からいろんな本を読んでたのよ…」
「昔から…?……ソフィアってホントは金持ちのお嬢様かなんか?」
「本って、普通の家には、まず無いわよねぇ」

言われて、ソフィアは俯くと、目を閉じ…意を決したように見開くと俯いたまま、ぽつりぽつり話し始めた。

「私…、修道院育ちだから、本は身近な物だったのよ」
「成る程ねぇ~。でも今の御時世、修道院育ちなんて珍しくもないんだからね。気にしちゃダメよ、ソフィア」

 シリアスな話を聞くまいと、御者台の農夫が鼻歌を歌っていたが、話が終わったらしいのを知るや、鼻歌は明るめの曲調のものになっていた。

「どうしやすか?
少し先に、休憩に良さそうな木が見えますけど~」

 言われて目を凝らせば、こんもりとした枝葉を広げた1本の大木が路の脇に聳えている。

「そうね~、ちょうどお腹も減ってきたことだし、あそこでお昼にしましょ。ね、ルゥちゃん、ソフィアちゃん」

 ということで、大木の脇に荷馬車を停めると、ルゥは毛布の敷物を木陰に広げ、ソフィアはサンドイッチの包みを開き、べティはミルク缶とブリキのコップを荷台から降ろして配りはじめた。
 農夫は自分の分は用意していたらしく、荷台から包みを取り出すと御者台に戻り、一人で食事を始めている。手綱を結べるところが無いので、馬番もしなければならないのだ。この農夫は3人を運ぶ契約を教会と結んだが、指定された教会へ連れていって契約の残りの金貨を手にするためには、確実に3人を運ばなければならない。
 悪魔が跋扈し、疫病が蔓延するこの時代、農作業していても無事で済むとは言い難く、この農夫は、教会がエクソシストを各地に派遣する為に、馬車や荷馬車を出す農家に金貨を出すという話を聞きつけ、申し出た一人だった。
 農作業は家族兄弟でこなしていたが、一人また一人と悪魔に襲われたり、疫病に患って命を落としたりで、家族唯一の男手になってしまい、金貨が直ぐ手に入ると言うことで、新米エクソシストの移動に荷馬車を提供したので、なにか起こって3人を運べなければ、残りの金貨を入手出来なくなる。それを懸念するのも仕方のない事である。

 そんな事情を知ってか知らずか、3人はサンドイッチを片手にお喋りに高じていた。

「ルゥちゃんて、元々この世界の人じゃなかったの~っ?ビックリだわ~…」
「ソフィアは修道院育ちって事は、根っからのこの国の住民なんよね」
「う、うん。そう……なるかな」

 どうりでルゥの着ている服が、この辺りでは見掛けない姿形をしていると、ソフィアは思った。
ソフィアは普段からシスターの服を着用しているし、べティは町民と似たり寄ったりな服を着ている。3人に共通してるのは、聖書とともに、配布されたロザリオで、それ自体が教会が認定したエクソシストの証明になっている。

「でも、思ってたよりはエクソシストになるのって簡単だったわね~。そう思わない?」
「そうやねぇ~。まさか、祈りを捧げると天使が降臨するとは思わんかったわぁ~」
「エクソシストになるだけなら、簡単だけど、なってからが大変なのよ…」

「んじゃあ、食事も終わった事だし、お祈り(ヒーリング)しとく?」






 食事とお祈りを済ませ、暑い時間を避けるべく休憩を続けていたが、ソフィアだけはミルク缶とブリキコップををまとめ持つと、遠く聞こえるせせらぎの音を目指して歩き始めた。
 木陰を振り返ると、ルゥとべティがお互いに寄りかかりあいながら昼寝をしていた。

 あまり大きくないせせらぎが、やがてソフィアの目の前に現れた。流れに突き出ている岩にしゃがみ、ためしに手を浸して見ると、雪解け水なのかとても冷たく、それが逆に心地よい。

 一つコップを手に取り川の水で濯ぐと、川の水を汲んで飲んでみる…。
冷たくて、それでいておいしい。
まだ、町までは相当の距離がある。ソフィアはミルク缶を水面に沈めると、両手でミルク缶を回しては濯ぎ回しては濯ぎを繰り返して、すっかりきれいにすると、川の水を川の水で満たし蓋を閉めた。

 屈んでいるソフィアの背後に向かって、何か黒いものが滑空してくる。

「キャッ!!」

短い悲鳴が上がる。
カラスがソフィアに向かって攻撃をしていた。ソフィアは隠れる所もないので、川のそばで周囲を回りながら逃げ惑っていたが、突然

パンパンッ

と、乾いた音がしたかと思うと、カラスは地面に落下したようで、襲われなくなった。
周囲を見回すと、貴族らしい人影が二つこちらへとやって来るのが見える。

「大丈夫でしたか?お嬢さん。
お一人でどうされたのです?お付きの方は?」
「あ……、助けていただき、ありがとうございます。
私はソフィアと申します。付き人ではなく仲間が二
人、あちらの木陰で休んでるんですけど、食器を洗っていたらカラスに襲われてしまいました…」

 カラスにつつかれて乱れた頭部を直そうと外したフードの下から、陽の光を受けて輝くオレンジ色の髪が姿を表す。


「お怪我はありませんか?」
「ご心配には及びません。怪我はありませんわ」
「それはなによりです。
申し遅れました。私はベリル。
しがない田舎貴族ですが、領地を守るのも私の役目ですので、悪魔狩りに出ていたところ、悲鳴が聞こえたので、駆けつけてみれば鳥が滑空を繰り返していたので撃ち落としたのですよ」
「悪魔狩りをされていたのに、お邪魔をしてしまい、申し訳ありません」
「別に構わないですよ。襲われている女性を助けないとあっては、紳士とは言えませんからね。
鳥は部下に任せて、私はお仲間のところまでお連れいたしましょう」

 ベリルと名乗った貴族は、見た目は25、6だろうか。緩やかにウェーブを描く彼の髪は申し分のない見事な金髪、その髪に映えるように瞳はこれまで見たこともないような澄んだ深紅で、ソフィアは微笑を湛えるその瞳に見とれていた。

「どうかされましたか?ソフィアさん」
「え?あっ、私としたことが申し訳ございません。ベリル様のように美しい殿方を初めてお目にしたものですから…。お許しください」
「ソフィアさんの髪も充分美しいと思いますよ」

 そう言うと、ベリルは白い手袋を嵌めた手でソフィアの髪をひと束手に取ると、ソフィアににっこりと微笑む。
それだけでソフィアは、悪魔の微笑に魅せられてしまっていた。 
 

 
後書き
はい、前書きどおり出しましたよ、べリアル様~♪
べリアルと言えばご存じ、5指に入る程の上位悪魔=魔王の1柱で、悪魔一美しく、悪魔一醜悪な魂の持ち主といわれていますよね。
 ゲームでは、本文にあるようにウェーブのかかった美しく金髪に深紅の瞳、更には女性をエスコートするかのような手つきの美丈夫として描かれ、言葉遣いも気品溢れるものでしたが、最期ばかりは主人公に対して呪いの言葉を吐き捨て、祓われ消えていきます(始まってすぐの頃は、各エリアボスがソロモン72柱を逆に遡っていく事に気付いてるユーザーがいなかったのですが、実は私の書き込みから、序列を辿っていく事が知られるようになりました。そして、べリアル様は数エリアをまとめた最初の章のボス=中ボスの立場にありました。)
 私の拙い表現で、べリアル様の美しさが再現できているのか不安ですが、筆者が一番に惚れ込んだ悪魔ですからね、手を抜くつもりはありません。

それにしても、ほんとソフィアって筆者の自キャラですねぇ(当然)。というのも、私が当のべリアル様に一目惚れしたのが、クエストを進めて会ったからではなく、「こんなイケメン悪魔がいたよ~♪」というような主旨のコミュトピが当時ありまして、ユーザーがまだ少なかったのもあるのですが、悪魔に特化したトピックスという事もあって、べリアル様の画像がアップされていたからなんです(笑)
もう何年も前にサービス終了してしまったのですが、サービス終了日はおろか、こうして今でも「べリアル様」「べリアル様」と拗らせる程好き過ぎて、周りのユーザーからは「ブレないね」なんて言われるのですが……ブレる訳ないでしょ、と言うくらい惚れてますからね~。
ソフィアちゃんも災難ですわ、ほんと(笑)

そんなソフィアちゃん、悲劇としか言い様のない生い立ちなんですが、それもこれも、筆者がべリアル様に惚れてしまい、「自キャラにべリアル様との劇的なストーリーを……」と考えに考え抜いた結果なんです(笑)

 追い追い、書いていく事になりますが、しばし疑問を膨らませていただけたら嬉しいですね~♪


 今のうちに書いておきますが、こちらの小説は不定期連載になりますので、ご了承ください。
 
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