水車
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第三章
二人はそのすっかり変わったという諏訪の近くでよく遊んだ、家の中で遊ぶこともあれば外で遊ぶこともあった。
夏も同じだ、二人は夏休みよく外で遊んだ。そのある日のことだ。
二人で昼飯を食べた後虫を採って遊んでいるとだ、その二人にだ。
小柄な、二人と同じ位の年齢の黒いロングヘアの女の子が声をかけてきた。服は白の膝までのワンピースで頭には麦藁帽子がある。顔立ちは楚々としている。
その娘がだ、二人に聞いてきたのだ。
「あの、ここって何処なの?」
「何処って長野だけれど」
「長野の諏訪だけれど」
「それはわかってるけれど」
それでもと言う女の子だった。
「ちょっと、諏訪の何処かがわからなくて」
「ああ、住所だね」
「そう、何処になるの?」
「それはね」
宗則が女の子にだ、この辺りの住所のことを話した。女の子はその住所を聞いてにこりと笑って言った。
「よかった、叔父さんのお家のすぐそこね」
「叔父さんって?」
「実は真柴さんって人が叔父さんで」
そしてというのだ。
「私今叔父さんの家に法事で来てるの」
「そうなんだ」
「叔父さんが長男さんだからって」
それでというのだ。
「お父さんがお母さんと私を東京からここに連れて来てくれたの」
「あっ、東京から来たんだ」
「そうなの」
女の子はにこりと笑ってだ、宗則に答えた。
「練馬からね」
「練馬から来たんだ」
「そこからね」
「東京生まれなんだ」
「育ちもね」
「真柴さんって確か酒屋の」
拓哉はその苗字から言った。
「あの大きなお家の」
「ああ、そうだよね」
宗則も拓哉のその言葉に頷いた。
「一杯お酒やお米を売ってる」
「あのお家だよね」
「そうだよね」
「ええ、私そこに今いるの」
女の子もにこりと笑って話した。
「法事でね」
「そうなんだね」
「君今あそこにいるんだ」
「そうなの、それで私名前は桐子っていうの」
女の子は二人に自分の名前も話した。
「真柴桐子、宜しくね」
「うん、宜しくね桐子ちゃん」
「こちらこそね」
二人も挨拶を返す、そして二人も名乗った。少し話すと三人共同じ学年であることもわかった。それから桐子は二人にこう言ってきた。
「あの、ここって凄い場所ね。はじめて来たけれど」
「東京からなんだ」
「はじめて来たんだ」
「そうなの、練馬とは全然違うわね」
桐子は自分の周りを指差して言った。
「本当に、田んぼや畑が一杯あって」
「あれっ、練馬には田んぼないんだ」
「ないわ、もう周りは全部お家かマンションよ」
そうだとだ、桐子は宗則に話した。
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