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歌集「春雪花」

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 風吹きて

  揺らぐ緑の

   木洩れ日に

 想ふは近く

    遠き君かな



 暑き陽射しを避けるように、葉桜の下へと入る。

 風が色濃くなった葉桜を揺らし、落ちた光と影はモノクロの万華鏡のように変化する。

 そんなささやかな時、彼と居れたら…そう考えてしまう…。

 近くなりはした…が、彼の影さえないここでは…もっと遠くなったのかも知れない…。


 もう二度と…会うことはないのかも知れない…。



 徒然に

  ふりさけ見れば

   光り射す

 君を想いし

     青き空かな



 何となく歩く…然したる用事もなく…。

 陽射しは夏そのもの…暑さもまた、然り…。

 あぁ、彼はどうしているだろうか…。
 この暑さに弱っていやしないだろうか…。

 傍らに居れぬ身に…そう思うことさえ痴がましいこと…。

 それでも…想ってしまうのだ…。


 あぁ…彼はこの同じ青空を見てるだろうか…。
 たまには私のことを…思い出してはくれまいか…と…。




 
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