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魔道戦記リリカルなのはANSUR~Last codE~

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Eipic33これからの八神家~His case~

 
前書き
エピソードⅣ完結まで、可能な限り1万文字未満のショートストーリーで行こうと思います。それで投稿速度が少しでも上がれば・・・上がればぁ~・・・! 

 
†††Sideルシリオン†††

プライソンの身勝手な動機によって引き起こされた今回の事件は、“プライソン戦役”と称されることとなった。プライソンを殺し、レーゼフェアを救えはしたが・・・その被害は66年に起きた“クラナガンの悪夢”以上のものだった。数年前のアジト潜入捜査に際、きっちりレーゼフェアとフィヨルツェンを救い、プライソンを殺しておけば・・・。後悔ばかりが俺を苛む。

「――で? このくそ忙しい時に俺を呼び出して何のつもりだ、リアンシェルト」

終結から5日目。機動六課の活動を調査する役目を担っている特務調査官として、俺は今日もひたすら書類作成だった。そんな時にリアンシェルトから呼び出しを受けた。あの子とはレーゼフェアを救った後、はやてと共に居たところを見つけ、ご苦労さまでした、と労いの言葉を俺とはやてに送ってすぐに去られたっきり。

「本局評議会――権威の円卓は未だに続いています」

「なに?」

俺に背を向けたまま信じられないことを言い放ったリアンシェルト。確かに向かう先はいつも会議に使っていたあの秘密の部屋のある方角だ。しかしまだあの組織が残っていることが不思議でしょうがない。

「驚くことはないでしょう。法の抜け穴だけでなく財力・権力を用いて罪から逃れるクズどもは減ることを知らず。1111部隊は未だに必要不可欠です。そして1111分隊を動かすのに必要な組織が権威の円卓。ならば・・・」

「潰さずに残しておく方が吉だと? ふんっ。本当に正義を謳う管理局員のようだな。俺を殺すことを至上の目的とするエグリゴリの言葉とは思えないな」

リアンシェルトはいつでも俺を殺せるだけの戦闘力を有しているため、本当に余裕を見せつけて来る。正直、今のあの子の背中は隙だらけだ。救おうと思えば出来そうなんだが、実際に手を出したら即座に俺は死ぬだろうな。

(残るエグリゴリはフィヨルツェン、リアンシェルト、そしてガーデンベルグの3機。次はフィヨルツェンが相手になるだろう。その次がリアンシェルト・・・)

だが勝てるのか、今の俺に。プライソンのリンカーコアのおかげで通常時でSSSランクの魔力をドーピング無しで引き出せるようになった。アイリとのユニゾンやドーピングでX-ランクからXランクとなることが出来る。フィヨルツェン相手なら労することも無く勝てる。しかしリアンシェルトに勝つビジョンを想像すら出来ないときた。

「なかなかに居心地の良い生活ですよ、管理局員というのも。多少暇が多いのが難点です・・・。神器王、あなたと闘う時までは続きそうですが、それを含めて今の時間が愛おしい。とは言え、あなたと殺し合うその時は一切の手加減なしで・・・殺します」

「っ・・・!?」

リアンシェルトから放たれる殺気に思わず俺は2歩3歩と後退するが、「チッ・・・!」爪で手の平の皮膚を裂くほどに両拳を強く握りしめて、殺気に呑み込まれないように耐える。あぁ、ダメだ、改めて思い知った。今の俺にあの子を救うことは出来ない・・・。

「少々遊びが過ぎました。さぁ入りましょう、セインテスト調査官」

いつもの会議室のドアの前へと来た。先にリアンシェルトが開いたドアを潜り入室。遅れて俺も入室し、円卓のみが置かれた会議室を見る。普段はホログラム参加が目立つ会議だが、今回ばかりはさすがに全員生身で参加しているようだな。

(半数以上が空席になってしまったんだ、何か大きな話し合いでもあるのかも知れないな)

本局捜査部の分枝課である特別技能捜査課の課長であり、俺たち八神家とシャルの直属の上司であるクー・ガアプ一佐。戦技教導隊の1班班長であり、暗殺部隊1111航空武装隊の隊長でもあるロッキー・サブナック一佐。本局・支局・各地上本部すべての捜査部の最高長官であるビディ・アーリー大将。本局情報部の長官であるイレアナ・コスンツァーナ中将・・・の4人。

(それにエーアスト・ルター。フリーランス魔導師派遣会社、エモーションサービスカンパニーの社長)

この中で唯一にして最後の民間メンバー。金糸のようなブロンドのアシンメトリーヘアに金色の瞳、縦に白いストライプの入った黒のスーツ一式という社長然とした、身嗜みをしっかり整えた青年。プライソンの一件で、俺は改めて彼の身辺調査を行った。非合法の手段もいろいろ用いたが、結局粗を探し出すことは出来ず白と決めざるを得なかった。プライソンの事もあったし、エーアストも何かがありそうなんだよな・・・。

「お待たせしました。リアンシェルト・キオン・ヴァスィリーサ少将、およびルシリオン・セインテスト一尉です」

俺の分まで名乗ったリアンシェルトはそのまま部屋の中を進み、俺は「ルシリオン君、こっち」ガアプ一佐に手招きされたためにそちらへ向かう。そして彼女は右隣にある空席の肘掛けをポンポンと叩いた。

「ここに座りなさい」

「しかしここは・・・ホドリゲス元大将の席・・・。さらに言えば自分は円卓のメンバーではないのですが・・・」

空席は6脚。その席に座っていたのは、拳銃自殺として処理されたホドリゲス元大将とフォーカス元少将。ようやく目を覚ました騎士ゼストによって逮捕されたゲイズ元中将。そして議長デュランゴ、書記トレイル、評議員リョーガ――最高評議会。最高評議会の全員もまた死亡したことが管理世界中に発表された。

「セインテスト調査官。今日からそこが、あなたの席です」

「はい? というか、おま――リアンシェルト少将もどこに座って・・・!」

「どこに? 今日からここが、私の席ですから」

リアンシェルトが座ったのは議長デュランゴの席だった。驚いているのはどうやら俺だけのようで、ガアプ一佐たちはあの子が議長の席に着いても何も言わず、あの子が議長になることを納得しているかのようだ。

「では本日の暗殺対象の決議を――」

「いやいやいや! 待て、待ってくれ、待ってください! 自分はかなり置いてけぼりを食らっているんですが!」

しれっと会議を始めようとしやがる。慌てて敬語に戻してから説明を求める。リアンシェルトが議長になることは全員が納得しているなら、俺からは何も言わない。言ったところで意味が無いしな。だが、俺が円卓のメンバーになることには待ったを掛ける。

「俺が権威の円卓に入るなど聞いてはいないし、承諾もしていないんですがね」

「まぁいいじゃないか、ルシリオン。お前もこっち側に来いよ。今さら善人ぶっても手遅れだぞ? 俺たちは必要悪だ。そう割り切って、これまで多くの暗殺を繰り返してきただろう?」

「もう少し言葉を選んではどう? サブナック」

サブナック一佐が手招きして来る。彼とは1111部隊を通じて知らない仲じゃない。共に仕事を遂行したこともある。そんな彼の言葉には頷くしかない。俺はもう善人という枠には入れない。それは“界律の守護神テスタメント”になってから・・・いや、人間で魔術師だった頃からすでに・・・。

「権威の円卓のメンバーになったら自分に何かメリットでも?」

「あなたが私たちに従事していた理由であるチーム海鳴。今後一切、彼女たちへ手を出さないことを、そしてあなたがPT事件の死亡したとされている被疑者、テスタメントであることも黙っておきます。ジュエルシードも変わらず所有していても構いません。あなたを縛っていた脅しのネタの全て、破棄することを約束します」

それが俺のメリットになるらしい。結局は何も変わらず俺は円卓に使役され続けることになるわけだが、「これまでの条件と比べるまでも無い・・・」か。ここに居るメンバーは俺を奴隷ではなく同胞として見てくれている。それは態度から見てとれる。今、円卓メンバーに入れば、はやて達に俺の正体がいつバラされるかって不安を抱える日々も無くなるわけだ。

「・・・権威の円卓入り、承諾します」

なら答えはそれしかないだろう。リアンシェルトが「では改めてようこそ。権威の円卓へ」と拍手をすると、ガアプ一佐たちも拍手して俺を迎え入れた。それから俺たちは暗殺対象を決める会議を開き、犯罪組織の大物数人と議決した。会議はそれだけで終わり、死亡した元メンバーや逮捕されたゲイズ元中将の話は一切しなかった。アッサリしたものだ。

「では本日の評議会をこれにて閉会とします。お疲れ様でした」

リアンシェルトの解散宣言でメンバーは各々の持ち場へと戻って行く。俺も席を立ってミッドに帰ろうとした時、ポンっと背中を叩かれた。振り向けば「サブナック一佐」だった。

「とりあえず、おめでとさん。これで晴れてお前も円卓の仲間入りだ」

「ありがとうございます・・・と言うべきかどうか迷っています」

「ま、お前は心の奥底じゃ望んでないんだろうが。俺としては嬉しいぞ? ここだけの話、ホドリゲス大将とゲイズ中将とフォーカス少将が抜けて、議長たちも居なくなって・・・正直ホッとしてる」

まさかの発言に「はい?」と俺は返した。側に居たガアプ一佐も俯いたことで、彼女もそうなのだと察することが出来た。

「今回、プライソンが管理世界全体に向けて名指ししたろ。そして2人は質量兵器――拳銃で自殺。1人は数年間と意識不明だった親友の手によって逮捕。議長たちも自殺として発表されたが、俺の見立てじゃあれは殺されたな。スキュラとか言うサイボーグを殺した連中か、もしくは・・・」

その先は言われずとも解る。内部犯行というわけだ。そして容疑者にアタリを付けるとなれば・・・。俺たちは横目でリアンシェルトを見る。最高評議会の世話係であるあの子なら、連中を殺すことなど造作も無いだろう。

「俺たちは最悪の罪である殺人をやってる。必要悪とはいえ罪は罪だ。でもな。プライソンほどのクズじゃないんだよ。あんな奴を生み出し、散々利用して裏切られた。悲しみより哀れの感情しか湧いて来んよ。だから俺は、連中の代わりにお前が入るのが・・・まぁ嬉しいわけだ」

「そうっすか」

サブナック一佐の言葉を適当に聞き流す。リアンシェルトが最高評議会を殺したとすれば、その理由はなんだ。あの子は“エグリゴリ”のクセに今の管理局員としての時間を大切にしている節がある。だから殺した?のか。いやまだ温い。まだ何か他に理由があるはずだ。

「ま、そんなわけでこれからもよろしくな、ルシリオン」

サブナック一佐がもう一度俺の背中を叩き、そして去って行った。彼を見送っていると「実はね、私もなのよ」とガアプ一佐も本音を漏らした。殺害された最高評議会、自殺した将校2人は、かなり昔からゲイズ元中将より正義にとり憑かれ、暴走気味だったらしい。危ういと思ってはいたが、上官でもあるため進言は出来なかったそうだ。

「ともあれ、暴走しそうで常にハラハラさせられていた元凶は揃って退場。少しは心労が減りそうで良かった。・・・ではルシリオン君、これから頑張って行きましょう」

ガアプ一佐はそう言い残して去って行った。最後に「遠路ご苦労さまでした」とリアンシェルトが俺の背中にそう声を掛け、脇を通り過ぎて去って行こうとした。返すべきかどうか逡巡した俺は、「これからは通信での参加を所望する」と明後日なことを口走っていた。

「であれば局の施設のどこかに私室を手に入れてください。最年少で調査官になったとしても所詮は一等空尉止まりの平局員。ですから・・・」

「偉くなれってことか」

「そういうことです。では私もこれで。・・・私と闘うその日までよい人生を、神器王」

今度こそリアンシェルトは俺の前から去って行った。背中が廊下の角の向こう側へ消えるまで見送った俺は、その足で次元港を目指す。今は管理世界標準時間で15時過ぎ。六課の隊舎に戻る頃には18時を回るだろうな。とにかく次元港へ向かい、ミッドの首都クラナガン行きの便に搭乗。

「ねえねえ。あの席の人見て見て」

「ほら、あの人。ニュースで観た・・・」

「ルシリオン・セインテスト調査官でしょ。テレビで観るよりずっと綺麗・・・」

リアンシェルトが全体通信で俺を名指ししたことで、“アグレアス”破壊の立役者として有名人になってしまった。サインをねだられるようなことはないが、こうやってヒソヒソと話のネタにされる。特に嫌なことじゃないが、どうもこういうのは昔から慣れない。
それからゆっくりと機内で過ごし、数時間ぶりのミッド地上だ。次元港を出て、駐輪場に停めてある愛車、リバーストライクの“マクティーラ”の元へ。メガーヌさん達が六課に侵攻した際、正直覚悟はしていたが幸いなことに無傷だった。あの時ばかりは神に感謝したよ。

「ん? メールか・・・」

ヘルメットを被って“マクティーラ”に跨ったところで、通信端末にメールが入ったことを知らせるメロディーが鳴った。端末を開いてメール画面を展開する。

『パパ、いつ帰って来る~? いっしょにご飯たべよ~♪』

『出来れば早う帰って来てな~』

『待ってるからね~♪』

フォルセティとはやてとアイリの顔がアップで表示され、3人の音声が流れた。俺は「ふふ。今から首都の中央次元港から帰るよ、っと」“マクティーラ”に跨った状態で自撮りをし、そうメッセージを添えて返信する。

「よし、帰るか」

アクセルグリップを回して発進、そして一路六課へ。プライソン戦役の陸戦兵器が齎した被害はすぐには癒えず、被害が特に大きかった中央区画は至るところで復旧工事が行われている。だからか迂回する回数も多いが、時間帯からして帰宅ラッシュなはずだが、運が良かったのかさほど遅れることなく六課に到着。

「早く戻ってあげないとな」

ガレージに“マクティーラ”を停めて、急いで寮へと駆ける。チラッと見える隊舎の損壊レベルは酷いが、寮は俺のルーン魔術のおかげでほぼ無傷で済んだ。隊舎の復旧は急ピッチで行われているものの、もうしばらくは掛かりそうだ。だから今は海上に設置されているシミュレータの側に停泊しているアースラが一時的な本部となっている。

「あ、パパ!」

寮の前にまで来た時、開いたエントランスドアから「フォルセティ!」が飛び出して来た。あの子もヴィヴィオと同じように“レリック”ウェポンとしてプライソンに施術を受けていたが、今日までの精密検査の結果、ヴィヴィオと揃って問題無しと診断を受けた。俺と戦っている最中の記憶は薄ら残っているようで、最初の頃はずっと謝ってばかりだった。

「おかえり~!」

俺はその場に屈んだうえで両腕を広げ、飛び付いてきたあの子を受け止め「ただいま!」と挨拶を返す。あの子を抱えたまま立ち上り・・・

「ただいま、はやて」

「おかえり、ルシル君♪」

フォルセティに遅れてやって来たはやてと挨拶を交わす。六課課長としての立場から考えれば、この時間帯はまだ忙しいはずなんだが。とりあえず、「パパ、ごはん~」と腹を鳴らしたフォルセティの言うように食堂へ向かう。俺とはやてとフォルセティは横に並んで手を繋ぎながら食堂へ入ると・・・

「おー、帰ってきたな」

「おっ帰り~❤」

ヴィータとアイリから挨拶を貰った。それにシグナムとシャマルとザフィーラも2つのテーブルに着いていて、周りにはなのは達みんなも揃っていた。この早い時間帯で勢揃いは本当に珍しい。なのは達からも「おかえり~♪」の挨拶を受け、「ただいま!」と返していく。

「パパ、こっちっこっち♪」

フォルセティに手を引っ張られて着いたテーブル。そこははやてとヴィータとリインの3人と同じテーブルだ。それにしても結構な御馳走がそれぞれのテーブルの上に置かれている。はやてが「飲み物取って来るな~♪」と受け取りカウンターに向かうと、「ぼくも~」フォルセティも付いて行った。

「ありがとう。・・・なあ、アイリ、ヴィータ」

「な~に?」

「んあ? なんだよルシル」

調査官は本来、出向先の部隊に知人・友人・家族が居ても他人行儀で接しないといけないとされている。公私混同が絶対に許されない役職だからだ。が、俺は今回だけは特別に普段通りに振舞うことを許された。それもフォルセティの情操教育云々からだ。さすがに養子として引き取られ、俺とはやてが両親となっている今、演技とは言え目の前で冷めた関係を見せるわけにはいかないしな。

「(調査部長にもちゃんと許可を貰ったし。あの子に淋しい思いをさせずに済みそうだ・・・)今日は随分とメンツが揃っているな。しかも料理も豪勢だ。何かの祝い事か?」

今日が何か特別な日だったかと思考を巡らせるが、特にそう言った日じゃないと頷く。六課が担っている役割からしていつ出動が掛かるか判らないということで、特定の誰かの誕生日の祝いはしない事にしているから、バースデーパーティじゃないのは確かだ。

「あー、そっか。お前朝から居なかったしな。六課に出向してたアリサとすずかとギンガが古巣に帰るんだよ明日」

「うん。だから今日は送別会ってわけだね」

「はあ? 待て、そんな大事な話聴いていないぞ」

「いやだってお前居なかったし」

「メールがあるだろ。くれ」

危うくこのイベントを逃すところだった。文句を返すとヴィータから「こっちはこっちで忙しいんだよ、事後処理とかでな」ムスッとした口調でそう返された。プライソン一派はほぼ全員が死亡した。しかも訳の判らない暗殺者によって。さらに加えて本局の上層部が犯罪者と通じ、しかも自殺・逮捕となれば、管理世界からの大バッシングは当たり前だった。その対応にも忙しいしな~。

「アイリも備品整理とかで忙しかったからね。ごめんね、ルシル」

言外に疲れたと溜息を漏らすヴィータとしょんぼりするアイリ。仕事量が半端なく増えたことは知っているから、「すまん」こちらが謝ってしまう。そんなところに「お待たせや、ルシル君」はやてと、「おまたせ~」フォルセティが帰って来た。

「ありがとう、2人とも」

俺の右隣にフォルセティが座り、あの子の右隣にはやてが座る構図になるが、はやてだけは座ることなく、アリサ、すずか、なのは、フェイト、ヴィヴィオの着いているテーブルと、スバル、ティアナ、エリオ、キャロ、ギンガの着いているテーブルの間に向かった。

「ではこれより、本日までお世話になったすずかちゃん、アリサちゃん、ギンガの送別会を始めます! 長々と挨拶をするとせっかくの料理も冷めるし、ささっと終わらせます。ではすずかちゃん、アリサちゃん、ギンガ、お疲れ様でした!」

はやての音頭に合わせて「お疲れ様でした~!」と続く六課メンバー。それからこれまでの忙しさ、これから待ち受ける忙しさを忘れるかのように和気あいあいと喋りながら、短い期間ながら世話になったアリサとすずかとギンガに感謝をした。あの3人には本当に助けられたからな。本当に味方として居てくれてよかったよ。

「なあなあ、ルシル君」

フォルセティとヴィヴィオがお互いに「あーん♪」としているのを微笑ましく眺めていると、なのは達と談笑していた「はやて」が近付いてきた。

「ちょう相談なんやけどな、その・・・あんな・・・」

六課の部隊長としてのはやてらしくない言い淀み。だからと言って急かすことなく、その先を黙って待つ。すぐにはやては意を決したかのように頷き、何故か俺の左隣へと移動して来た。そして「フォルセティ、楽しそうやな」と、俺と同じあの子たちを見て小さく笑い声を上げた。

「ああ。本当に兄妹のようだ」

「そやね~・・・。ルシル君。フォルセティはもう養子として八神家に引き取って、名前も八神フォルセティになってる。もちろん住む家は私らの家や」

「? あー、うん、そうだな」

「前にもちょろっと相談したけど、改めて・・・。ルシル君。一緒に暮らさへん? 私が養母、ルシル君が養父やし、子供のフォルセティの事を考えれば一緒に住むのがええと思うんよ」

それがはやての話だった。不安を湛えた瞳で俺を見るはやて。俺はその申し出にそう長く思案することなく「そうだな。お世話になろうかな」そう答え、彼女に微笑みを向ける。リアンシェルトからの提案を受けた今、俺にはある程度の自由が利くようになった。もう離れて暮らす理由も無いだろう。

「ホンマか!? やった!・・・ルシル君たちの部屋は以前から出来てるから、六課解散後にすぐに戻って来れるからな♪」

そう言ってはやては俺に寄り添って、傾けた頭を俺の左肩に乗せた。傍から見えれば完全に恋人同士だ。いやもうフォルセティが居る以上は夫婦になるのか。こいつは非常にまずい。俺への恋心を覚まさしてやるどころか、階段を何段階もすっ飛ばした状態だ。

「シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、リイン。六課解散後、ルシル君とアイリとフォルセティが一緒に住むことになったからな~♪」

そんな体勢のまま喜色満面の笑顔と声でそんなことを言うものだから、今の俺たちの様子に気付いていなかった女子メンバーも、俺とはやてを見て頬が赤くなっていく。そこからはもう送別会とかいう空気ではなく、何故か俺とはやてのお祝い空気に変貌していった。

 
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