艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~
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第十話
前書き
どうも。十話です。
さてさて、それからは五人でいろんなところを回った訳であるが…………ぶっちゃけ特筆すべきような事が何一つとして無かった訳だ。強いて言えば球磨多摩コンビが大井と言う姉妹艦に正座させられてた位の事だった。……悪いことしたかなとか思ってねぇから。
さて、そんで今俺は艤装を着けて海の上に立っている。これから海上訓練とのことで、本来であれば陣形の連携確認したりするはずなのだが、初日の俺はまず基本動作の練習と言うことになっているらしい。まぁ、むしろありがたい話だ。
んで、今回俺に基本動作を教えてくれるってのが
「それじゃ、自己紹介からさせて頂きますね。私は川内型軽巡洋艦二番艦 神通。よろしくお願いしますね?」
何とも優しそうな人だった。
―約六時間後―
「おーい、木曾ー?大丈夫かー?」
現在、夜七時五十分。
現在、自分の部屋で木曾と天龍に看病されている所だ。
……理由を説明するならば、神通さんの訓練が半端なくハードだったからだ。無論、木曾のトレーニングに付いていけたのだから、それなりにはできていたのだが、慣れない海の上に重たい艤装を着けての訓練だったため、現在グロッキー。
しかし、最後に神通さんから、「これで陣形さえ頭に入れればいつでも実戦に向かえますよ。」と満面の笑みで言われた。うん、そんなに急がなくてもいいと思うのだが。
「しっかし神通もよくやるよなぁ。終わったのって二十分前だろ?」
そうだ。ここで更に問題になってくるのはその時間だ。なにせ、午後二時に始めた訓練が夜の七時半まで続いたのだ。そりゃあ死ぬ。
「まぁ、あれに耐えれたら大丈夫だ。あれ以上の苦痛はそー無いからな。」
あったほうが困る。この五時間半が生き地獄だったのに、それ以上の地獄なんてあってたまるか。
「あー、やっと落ち着いてきたな……悪いな、わざわざ来てもらって。」
「いやいや。それで、ひとつ質問があるんだけどさ。」
と、天龍が切り出してきた。
「このドラム缶なに?しかも二個あるし。」
と、天龍は壁際にまで移動させたドラム缶ふたつを指差した。
「あー、つまりだな……………と言うこと。」
すると天龍は。
「ぶわっはっはっはっはっは!んなことって有り得んのかよ!ドラム缶ふたつ連発!?くっそ、ハラいてぇ!」
爆笑した。解せる。俺だってそんな話を聞いたら爆笑するだろう。しかし、そんなことを自分でやっちゃったから笑えない。
「でも良かったじゃんか!体のいい在庫処分にしても装備貰えるって羨ましい限りだしな!」
……やっぱり在庫処分の意味合いもあったのかよ。つーか多分そっちの方が強いんだろうな。そりゃドラム缶だもん。工廠に転がる程有ったもん。ざっと三、四十個は有ったもん。
すると、誰かが部屋の扉をノックしてきた。
「はーい、どーぞー。」
と言うと、扉が開いて、見たことある顔が入ってきた。
「お、木曾に天龍もか。ちょうどいいや。」
さっき球磨多摩コンビを捕まえてくれた摩耶さんだった。
「あ、摩耶さん、朝はありがとうございます。」
「いやいや、どうってこたぁねぇよ。」
そんな感じで会話していると、木曾が不思議そうな顔をした。
「あれ?お前姉貴と知り合い?」
姉貴て……と突っ込みたかったが、何となく返り討ちに合いそうだから自重しておく。
「あぁ、朝に球磨と多摩を取っ捕まえてくれてな。」
「へぇー、んじゃ話は早いな。姉貴は重巡洋艦って言われる分類の艦娘なんだよ。」
うん、今までノータッチで来たけどいい加減触れておこう。俺、艦の種類なんてわかんねぇよ。精々空母と戦艦位だ。なんだよ駆逐艦って。どう考えても一番強そうじゃねーか。なのになんだあの驚異のガキ率は。もっと言うと自分の艦種も良く知らねぇよ。なんだよ軽巡洋艦って。一気に弱そうになったなおい。
…………後で調べておこう。
「あーそんじゃ、本題に入ろうか。」
と、摩耶さんが切り出してきた。
「お前ら、今何時か分かるか?」
そう言うと、天龍が時計を見て答えた。
「えっと、一九五〇だけど………あ。」
天龍は何かに気付いた様だが、俺はこの滅茶苦茶濃い一日を早く終わらせて眠りに入りたいと考えていた。
「そうか!今日二〇〇〇から着任祝いがあったな!」
え。
俺は記憶の引き出しを開くように今日の内容を思い出そうとした。
『提督ー、夜戦はー?』
違う。もうちょい後。確か長門さんが……。
『それでは、木曾二号の着任祝いの場を設置する。場所は遊技場。時間は二〇〇〇より。以上。』
「んなこと言ってたな……。」
思い出した。天龍に気を取られて完全に忘れてた。
「ういじゃ、伝えること伝えたし、アタシは先に行ってるなー。」
と、摩耶さんは部屋を出ていってしまった。
「………行かなきゃ駄目?」
「「おう。」」
デスヨネー。
「ういじゃ、行きますかね。」
と、天龍は椅子から立ち上がり、ドアノブに手を掛けた。
「木曾?早くしねぇと置いてくぞ?」
と、木曾が木曾(俺)に向かって言った……なんだこの言葉遊びは、ややこし過ぎる。
いつかちゃんと呼び方考えて貰わねぇとな。
「分かった、今行く。」
俺はベッドから立ち上がった。
―遊技場―
「それではこれより木曾二号の着任祝いの場を開催する。」
何かもうちょっと名前捻れなかったのか、と思った。流石に直球すぎる。
ここは二階にある遊技場。施設が施設ならリクリエーション室とか言われそうな感じの広い部屋だ。今は十個位の机に取り敢えず酒とつまみ置いときましたみたいな状況だ。
これ、ただの飲み会じゃね?
「それでは、着任した木曾二号に乾杯の音頭を取って貰う。」
と、長門さんが俺にマイクを渡してきた。いや、そんなことやったことすらない、どころかまだ未成年なんすけど……。
もう今更な感じがしすぎてるので、大人しくマイクを受けとる。
「えー、どうも。二号です。」
会場から笑いが起こる。いやいや、今のは笑う所か?何かおかしなテンションになってる感じがする。
「今日は何か俺のためっつったら変な感じがするけど、この様な場を設置してくれてありがとうと言っておこう。これから精進していこうと思うので、どうぞよろしく、と言う訳で。」
と、俺は手に持っていたグラスを掲げた。
「乾杯!」
『カンパーイ!』
―二時間後―
うん、もう帰りたい。ただでさえ疲れてるのにこの馬鹿騒ぎはけっこう堪える。
「おーい、二号ー?飲んでるかー?」
と、そんな俺の考えも知らないで話し掛けてきたのは天龍だった。天龍は既に出来上がってるいらしく、飲んでもいるし呑まれてるらしい。
「おう、一応な。しっかし、未成年なのに飲んでも良いのか?」
「だいじょーぶ!俺達働いて金稼いでる訳だし、立派な大人よ!」
因みに後から提督に聞いたら、『乾杯はいつ死んでしまうか分からない。それなのに酒の味の一つも知らないで死んでしまうのは忍びないから。』と言うれっきとした理由があった。
(※一応言っておくが、この物語はフィクションであり、実際は未成年の飲酒は法律で禁止されている。決して未成年者に飲酒を進める意図はねえからよいこのみんなは二十歳になってからな。破ったら……わかってんよな?by 木曾)
……何か今、変な注意が頭をよぎった気がするが気のせいだろう。
それはさておき、まさか自分がこうも酒に強いとは思いもしなかった。今ワイン一本にビール二杯、チューハイ三本開けたがまだまだ余裕だ。今は日本酒に手を伸ばしてる所だ。
「しっかし……この人達はただ単に馬鹿騒ぎがしてぇだけなんじゃねぇの?」
すると、天龍は、
「バッカヤロウ!馬鹿騒ぎしてぇにきまってんだろ!」
やっぱりそうだった。考えてみたら当たり前だ。あんな命懸けた戦いをしてるんだ。たまには息抜きも必要なのだろう。
「ういじゃま、楽しんでけよー。」
と、天龍はどこかに行ってしまった。
やれやれ……こりゃ明日二日酔いで大変だろうな、と考えていた矢先だった。
「おい貴様、もう一度言ってみろ。」
なかなかどす黒い声が聞こえた。どうやら長門さんらしい。
すると、話していたであろう女の人がこう答えた。
「いやー、実際第二次世界大戦で活躍したのは長門より金剛デース!」
なんでここには一癖も二癖もある奴しか居ないのだろうか。しかし金剛とやら、それは火に油を注ぐような行為だぞ?
「あ?」
すると長門さんは、酒が入っているせいか案の定ぶちギレた。
「ぶっとばす!!」
その後は阿鼻叫喚だった。
「おい、長門さんと金剛さんが喧嘩始めたぞ!総員撤退!駆逐艦は急げ!巻き込まれたら死ぬぞ!」
「巻き込まれて那珂が気を失いました!」
「遊技場壊滅状態!」
「ちくしょう、木曾はまだか!」
「ちくわ大明神!」
「誰だ今の!」
もうてんやわんや。
「おいおい…これどうすんだよ……。」
と、途方にくれていたとき、
「おいおい…俺が居ない間に面白そうなことしてんじゃねえか…。」
背中に悪寒が走った。
振り替えるとそこには、こめかみに青筋立てた木曾が立っていた。
「木曾?どこ行ってたんだ?」
「なぁに、ちょっと提督に用事があってな。おーい、どーゆー状況よ?」
木曾は近くにいた恐らく駆逐艦の子に声を掛けた。
「は、はい!先程から長門さんと金剛さんとの間で喧嘩発生!巻き込まれて那珂さんが気を失いましたのです!遊技場は壊滅状態なのです!」
「そっかー……ありがとうなー……。」
「ひっ。」
その女の子は、この世の鬼でも見たかのような恐怖に染まった顔をして走って行った。
「さーて、ちょっくら行ってくるわ…。」
そう言うと木曾はゆっくり二人に向かって歩いて行った。
「この外人かぶれが!一発ぶっ飛ばす!」
「なんだとゴルァ!返り討ちデース!」
二人がお互いに右ストレートを打とうとしたときだった。
「おーいてめぇら……喧嘩か……?」
長門さんと金剛さんは、その場でお互いにピタリと止まった。そして、カクついた動きで声のした方を見た。
「喧嘩ねぇ……俺も混ぜてくんねぇかなぁ!?」
長門さんと金剛さんも、さっきの駆逐艦の子と似たような顔をしていた。
えっと……取り敢えず、南無阿彌陀仏。
「「ギャアアアアアアアアアアアアア!!」」
かくして、俺はこのとき始めて知った。
この鎮守府最強と言われている、『魔神木曾』を。
後書き
読んでくれてありがとうございます。第十話です。良くここまで続いたな……。これからも頑張って行こうと思っております。
それでは、また次回。
追記 誤字修正しました。
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