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艦隊これくしょん~男艦娘 木曾~

作者:V・B
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第八話

 
前書き
どうも。基本的に軽巡洋艦と駆逐艦大好きです。 

 
あー、コイツ化け物だ。
 
俺は木曾今、木曾と一緒にこの建物の一階、トレーニング施設に来ている訳なんだが……ぶっちゃけ木曾にドン引きだ。
 
木曾はだいたい俺より十二、三センチ位低い身長だから、百五十後半って所だろう。……そんな体でベンチプレス百五十キロを軽々持ち上げるんだ。そりゃあドン引くわ。
 
因みに俺がやってみたら、上げれて精々百キロ位だった。いや、それでもなかなか強いけどさ。
 
「一体俺らの体ってどんな構造になってんだか………。」
 
俺は自分の腕とか脚とか触りながらそう言った。さっき天龍と握力勝負したときも感じたが、明らかに身体能力が向上している。
 
部活でここまでの訓練……もはやトレーニングと言おうか、をしようものなら、恐らく疲れきって動けない……以前にこのトレーニングをそもそもきちんとこなせないだろう。こなせるような奴はアメリカ軍人位のものだろうな。
 
「まーそれでも俺のトレーニングに付いてこれるってだけでなかなかすげぇよ。他の奴ならもう倒れてる頃だな。」
 
そんなことを木曾は言った。今はセーラー服から着替えて、スポーツ用のタンクトップにハーフパンツだった。年頃の女の子が脚やら腕やら露出するのは些かけしからん気がするが……それは気にしたら負けなのだろう。
 
「んで、そんなのに付いてこれる奴って居るのか?」

俺は単純な興味からそう聞いてみた。男である俺の身体能力が大幅に強化された俺ですら正直付いていくだけでやっとだ。……流石に「五十メートルシャトルランしよう。」って言ったときは頭おかしいんじゃないかと。
 
「一応居るぜ。まずお前。」
 
と言って、俺を指差す木曾。
 
「やっぱり元が男であるってのは大きいんだろうな。俺も最初はここまでできなかったしな。」
 
……いやいや、女の子がこんなにトレーニングしようって考えが既におかしいだろ、と言う台詞は飲み込んだ。
 
「後は天龍だな。あいつは俺より後に着任してきてな。似た者同士仲良くなって、一緒にトレーニングするようにするようになってな。だんだん俺と同じメニューができるようになったんだ。」
 
と、懐かしむ様にしゃべる木曾。やはり努力の力というのは大きいのだろう。
 
「んで、後一人が―」
 
「すまない、遅くなった。」
 
そう言って入ってきたのは、黒髪を長く伸ばしたなかなか美人な人だった。いや、つーかこの人身長たかっ。俺よりでかそうだ。
 
「この人がそのもう一人―長門さんだ。」
 
木曾はニヤリと笑って言った。
 
「む、二号のほうも居たのか。なら、自己紹介しよう。私は戦艦 長門。第一船隊の旗艦を勤めている。宜しくな。」
 
かなり丁寧な挨拶をしてくれた長門さん。
 
「あー、さっきも言いましたけど、軽巡 木曾です。何か知らねぇけど男なのに艦娘なりました。それでも頑張ろうとは思うので、宜しくお願いします。」
 
なんと言うか、この長門と言う人は………なんと言うか、きっちりしておかないといけない雰囲気を醸し出してる人だ。
 
しっかし、長門ってゆーと……。
 
「やっぱり、あの戦艦長門ですか。」
 
戦艦長門と言えば、第二次世界大戦で日本軍が運用していた中でもトップクラスに有名な戦艦だ。史実に疎い俺ですらそのくらいは知っている。
 
俺がそう言うと、長門さんは少し笑みを浮かべた。
 
「あぁそうだ。私の元になっている艦は、当時ビックセブンの内の一つである、あの長門だ。」
 
さて、知らない単語が出てきた。ビックセブン?スロットの当たりか何か……では無いんだろうな。後で調べておこうか。
 
「しかし、この鎮守府もだんだん艦娘が増えてきたな。一時期少なくなっていたのだがな。」
 
「え、そうなんすか?」
 
予想外だった。確かに親父が現役の頃からあった鎮守府だから、もっと人が居てもおかしくないとは思っていたが……。
 
「あぁ。実は前任の提督が退職してから、ここに所属していた艦娘が様々な鎮守府に移動してったのだ。それほどあの提督のカリスマ性が強かったのだろう。聞いた話によれば、その時は後任、つまり今の提督はかなり落ち込んだらしい。」
 
「…………その提督ってのに一度会ってみたいっすね。」
 
まぁ、うちの親父なんだけどさ。家じゃ酒とお袋位にしか興味の無い奴だったのにな…………。多分この人達そんなこと知らないんだろうなぁ…………。
 
「あぁ、そうだな。さてと、私も始めるとするかな。木曾はどうする?」
 
と言いながら、近くに合ったサンドバッグの前に立つ長門さん。いや、そのサンドバッグでかくないすか?通常の三倍位はあるな。
 
「あー、俺はこれからコイツを案内して来る。まだこの鎮守府の事を何も知らないからな。」
 
それはさっきトレーニング中に決めていた事だった。俺が木曾に迷子になりそうだからと言ったら、快く引き受けてくれた。
 
「ふむ、そうか。ならばしっかり案内して来るといい。」
 
ではな、と言うと長門さんは、目の前のサンドバッグを一発殴った。
 
ドゴォッ。ドンッ。
 
何故か音が二回したが、すぐに理由は分かった。
 
一発目は長門さんがサンドバッグを殴った音。もう一発は、その衝撃でサンドバッグが天井に振り子のようにぶつかった音だった。
 
サンドバッグは当然下に勢い良く振られ、長門さんに向かっていく。長門さんはそれを同じ様になぐり始めた。
 
「………………………。」
 
「気にすんな。戦艦と軽巡のそもそもの差だ。」
 
いや、何かもう次元が違いすぎて気にするどうこうの話ですら無いんですけど………。
 
「取り敢えず、お互いに着替えて来るか。十五分後にまたここの前に。」
 
そう言って、木曾はスタスタとその場を去ってしまった。
 
…………正直、キツいとか言うことではなく、ここに来たことを後悔しそうだ。なんだこのビックリ人間の集まりみたいな所は。
 
まぁ、どんなことが起きようとも屈せずに頑張ろうとは思っていたが、人間と言うのはギャグ漫画みたいなことが身近で何回も起きると逆にテンションが下がるらしい。そう考えるとギャグ漫画のツッコミ役と言うのはかなり凄いんだなと思った。
 
しかし、ここにはツッコミ役と言うか、そもそもこれが普通な訳だ。慣れるしかあるまい。
 
「さてと、一回部屋に戻るか。流石にシャワーでも浴びないと失礼だろうしな。」
 
と言う訳で、俺はトレーニング施設を後にした。
 
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 
さて、俺は今、猛ダッシュで階段を降りている。以下、回想
 
「クマー。さっきの奴だクマー。」
 
「そうだにゃ。おい、ちょっと待つにゃ。」
 
「あ?確か球磨と多摩だっけ?何か様か?」
 
「そうだクマ。お前は、球磨型軽巡洋艦五番艦 木曾であるクマ。」
 
「まぁ、確かにそうだが。」
 
「つまり、私たちの弟ということだにゃ。」
 
「は?」
 
「これから私のことはお姉ちゃんと呼ぶクマ。」
 
「私のこともお姉ちゃんと呼ぶにゃ。」
 
「(イラァ)あーはいはい、分かりましたよ、球磨多摩ネーチャン。」
 
「む、ひとまとめにされたクマ。」
 
「しかもネーチャン呼ばわりだにゃ。」
 
「これはお仕置きが必要だクマ。」
 
「そうだにゃ。」
 
「は?」
 
「砲雷撃戦用意にゃ。」
 
「え、」
 
「かかるクマー!」
 
「いや、単純に追っかけて来るだけじゃねぇかよ!ふざけんじゃねぇ!」
 
以上。ぶっちゃけ、あいつらに捕まったら、お姉ちゃんと呼ばされるだけでなく、もっととんでもないことになりそうだ。例えば、語尾に「キソー」とか付けられたり。
 
因みにあの二人は摩耶と言う人に捕まってたが。ザマァ。
 
さて、それでは何故俺が走っているかと言うと、単純に待ち合わせに遅れそうだからだ。
 
そりゃあんな姉妹に追いかけられたら遅れもする。……木曾が怒りそうで怖い。
 
結局俺は待ち合わせに五分遅れてしまった。
 
「遅かったな。何があった?」
 
木曾はとっくに来ていたらしく、若干待ちぼうけていた。服装もセーラー服に戻っている。
 
「いや、球磨と多摩ってのに追いかけらて。」
 
「あー、ならしゃあねぇ。この先も絶対あるから気ィ抜くなよ?」
 
どうやらあの姉妹はデフォルトであれらしい。木曾も被害者みたいだし。
 
「えーっと、今十一時か……。ういじゃ、行くかね。」
 
と言う訳で、俺と木曾は歩き始めた。
 
…………そういえば、全く筋肉痛無いな、と今更ながら思った。
  
 

 
後書き
読んでくれてありがとうございます。この話を投稿する前に累計PVが四桁に乗りました。……まさかこんな駄文をお気に入りして下さる方までいらっしゃるとは、本当に驚きです。これからも誠心誠意投稿に励みたいと思っております。
それでは、また次回。
追記 五月二十三日 誤字修正しました。 
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