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『八神はやて』は舞い降りた

作者:羽田京
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最終章 ハッピーエンドを君に
  第52話 手伝ってやろうか?ただし真っ二つだぞ

 
前書き
・遅くなりました。最終章開始です。 

 
 サイオラーグ・バアルとリアス・グレモリーのレーティングゲームは盛り上がっていた。
 まず、出席者の顔ぶれが豪華である。
 堕天使総督、天使長、魔王、そしてオーディン。
 駒王協定を結んだ三大勢力の顔合わせと同時に、北欧神話との同盟を意図していた。

 
 話題の中心は禍の団である。アインハルトによる冥界襲撃以来、その活動は活発化しており、天界や堕天使領も被害を受けていた。
 北欧神話の主神オーディンが呼ばれたのも、禍の団対策の一環だった。


「結局、詳しいことはわからんのだな」
「オーディンには申し訳ないが、まだ情報が足りていない」
「サーゼクスは旧魔王派のテロで手一杯だもんな。一応、俺の情報網によると、英雄派、ヴァーリ・チーム、旧魔王派が中心になっていて――」


 一番の事情通であるアザゼルが意見を交換する。
 見どころのあるレーティングゲームをセッティングしただけあって、観衆も盛り上がっている。
 今日のところは三大勢力と北欧神話の同盟に向けての意見調整に過ぎず、和やかなムードで会話をしていた。
 と、そのとき、突然巨大なスクリーンが投影された。





『――皆さん、楽しんでもらえたかな? これでハーデスは死んだ』


 場はシン、と静まり返っていた。いや、無理もない。突然現れたモニターには、冥府の様子が中経されているようだった。
 そして、先ほどの戦闘。ハーデスを圧倒するなど、信じられない。


『なぜ死んだかって? ――坊やだからさ』


 ドヤ顔で意味の分からないことをのたまっている。
 後ろでリインフォースが微妙な顔をしている。


「はやて、君は一体何のつもりで……」
『サーゼクス、見た通りさ。ちょっと約束を果たすために、サマエルが必要になってね』


 私の言葉にこともなげに返事をする彼女は、普段と変わらなかった。不自然なまでに自然体。
 けれども、先ほどまで冥府を火の海にしていた。


 その光景を思い出す。喜々ととして砲撃魔法を打ち込んでいきながら、なんだかよくわからない喝采をあげていた。
 既にユニゾンを解除して子どもの姿から戻っている。そのせいで、余計に違和感があった。


『粉砕! 玉砕! 大喝采!!』


 ……玉砕してもいいのだろうか。
 後ろでリインフォースが微妙な顔をしている。
 「ま、マスター、はしゃぎすぎです」と言って止めようとしている。


『強靭! 無敵! 最強!!』

 
 あ、頭を抱えた。頭痛が痛いとかそんな感じの表情をしているリインフォースを尻目に、はやてが高笑いをあげている。


『見ろ、死神がゴミのようだ!』


 後ろで、リインフォースが死んだ魚のような目をしていた。


 ――そして、今に至る。
 八神はやて。私サーゼクスが保護した少女。
 神器『夜天の書』の所持者で、ライザー・フェニックスを圧倒するほどの強い力を持つ。
 だが、ここまでとは知らなかった。仮にもハーデスは冥府の主。本気の私でさえ苦戦する相手だ。


『最高のショーだと思わんかね?』
「……戦争でも起こすつもりか?」


 厳しい表情をしながら、アザゼルが問いかけた。確かにその通り。神話勢力の一画を崩す。その意味が分からないはやてではないはずだ。
 そのような危険な力、他の神話勢力が黙っていないだろう。もちろん、私たちもだ。


『何を言うかと思えば……戦争屋風情が、偉そうに。選んで殺すのがそんなに上等かねぇ?』 
「何をッ!?」


 冷たい言葉を投げかけると、突然魔力砲を放った。これまでにない強力な一撃。先ほどの砲撃がお遊びだったかのような、比べ物にならないほどの強烈な一撃。
 衝撃の影響かちらつくモニター越しからも、いかに強力かが伝わってくる。砲撃された地点からは、巨大なキノコ雲が上がっていた。


『まずは一撃。これで2000万ほど死んだ』


 絶句する。たった一つの魔法でこれだけの破壊をもたらす。信じらないし、信じたくない。だが、画面に映る現実が、否定を許さなかった。
 唖然としている私たちを尻目に彼女は、愉しそうに嗤っていた。
 あいむしんかーとぅーとぅーとぅー、よくわからない鼻歌を歌いながら砲撃を放っていく。


『4000万! 6000万!! 8000万!!! ……1億ゥ!!!!』
「はやて!」
『さて、仕上げといこうか』
「はやて!!」
『……うるさいなあ』


 止めようと声をかけても、一顧だにしない。と思った次の瞬間、三角形と剣十字の魔法陣が展開された。……これは八神家の魔法陣!?


「やあ、ご機嫌はいかがかな。サーゼクスがうるさいから来てあげたよ」


 目の前に転移してきたのは、八神はやてとその家族たちだった。





 おー、壮観だね。アザゼル、ミカエル、サーゼクス、オーディンを筆頭にたくさんいる。思わず頬が緩んでしまう。だって――


「駒王協定とはよくできたシステムだね――まとめて殺るには最適だ」


 こいつら皆殺しにすれば、僕の願いは果たせるんだから。
 ボクがぽろっと本音を言った瞬間、皆が戦闘態勢をとる。おっと、でもお楽しみはまだ残っているんだよ。
 そういって、遠隔操作で次元震を起こすと――


 ――冥府が丸ごと消滅した。


 絶景かな絶景かな。おー、絶句している絶句している。
 声にならない悲鳴をあげる連中が滑稽で仕方ない。にやつく頬を抑えようとしていると、サーゼクスが、厳しい目でこちらをみてきた。


「はやて、なぜこんなことをするんだ!?」
「ふん、殺してるんだ。殺されもするさ。だろう、アザゼル?」
「……殺しすぎる、お前らは」


 おや、陰謀じじいのアザゼルなら同意してくれるんだと思ったんだが。それに、ボクがこうなる切っ掛けを作ったのはお前だろうに。
 顔面を蒼白にしたアザゼルをせせら笑うと、何も知らないオーディエンスに、語ってやった。はぐれ悪魔の襲撃から、ジュエルシード、ボクといういびつな存在まで、いろいろと。
 

「騙して悪いが、使命なんでね。死んでもらおう」


 悲しそうな顔をするなよ、サーゼクス。これでも、君には感謝しているんだよ。
 でも、ボクの使命は変わらない。


「さあ、ブタのような悲鳴をあげてくれ!」





 オーディン様に救助された私たちは、観客席に向かった。そこでは、八神家と三大勢力陣営が激しく戦っていた。すぐに、私たちも参戦する。
 八神先輩、なんで、なんで裏切ったの?
 訓練してもらって、いっぱい一緒の時間を過ごしたのに。


「スターライト・ブレイカー!!」
「させん!」


 私の全力の掌底を軽々とガードしてくる男の人、ザフィーラさん。私の師匠。


「やるな、塔城小猫!」
「軽々とガードしてそのセリフはないですよ、ザフィーラ師匠」
「ははは、まだやられるわけにはいかん――これでも八神家の自宅警備員なのでな。主も世界一の自宅警備員だと褒めてくださった」


 く、ここは笑うところなのだろうか。そんなことを思ったせいか、一瞬の隙をついてザフィーラさんが殴りかかってきた。とっさにガードするけれど、軽い私は吹き飛ばされてしまう。
 卑怯ですよ、師匠。周囲の戦闘を見渡すと、こちら側が圧倒的に不利だった。


 ユウト先輩はシグナムさんに押し負けているし、リアス先輩と朱乃先輩はリインフォースさんに圧倒されている。
 でも一番すごいのは、八神先輩だ。アザゼル、ミカエル、サーゼクス様たちをまとめて相手にしている。
 他の出席者は、いつの間にか現れた禍の団に襲われ、数の上でも不利になっている。
 回復役のアーシアがいないのも痛い。おしなべて戦況は悪い。


 誰か、たすけて……。私の祈りが通じたのだろうか。


「WRYYYYYYYYYYYYYYY!!!!!」


 突然、奇声を上げて乱入する影があった。この気配、ギャーくんだ!
 ギャスパー・ウラディ。グレモリー眷属の司祭(ビショップ)だけれど、時を止める強力な神器を扱いこなすため、特訓中。
 秘密の特訓を受けるため、修行の旅に出ていたはず。そっか、助けにきてくれたんだ!


「ありが――ぎゃ、ギャーくん???」


 振り返ると筋骨隆々の大男が立っていた。しかも、女装している。死ぬほど似合っていない。
 え? でも確かに気配はギャーくん。面影もなんとなくある。
 あれ、私の知るギャーくんはもっと弱弱しくて女装の似合う男の娘だったはず。 


「貧弱! 貧弱ゥ!」


 なんで叫びながらザフィーラさんと拳で打ち合ってるです?
 

「手伝ってやろうか? ただし真っ二つだぞ」


 ギャーくんに続いて偉そうなセリフとともに、偉そうな幼女が現れた。
 貧弱なボウヤが私好みのいい漢女(おとめ)になっただろう! とかほざいている。
 ふふん、と自慢げに無い胸を逸らしている。


「エヴァさん!」


 お 前 が 犯 人 か ! 
 

 
後書き
・坊やだからさ
一度でいいから言ってみたいセリフ。ガンダム。

 
・粉砕! 玉砕! 大喝采!
・強靭! 無敵! 最強!
もうやめて! リインフォースのライフはゼロよ!
ついでに、Aricadiaの『社長キャロ』面白いのでおすすめです。


・見ろ、死神がゴミのようだ!
・最高のショーだと思わんかね?
ムスカ大佐も大満足。リインフォースは涙目。


・戦争屋風情が偉そうに、選んで殺すのがそんなに上等かねえ?
・殺してるんだ、殺されもするさ
オールドキングかっこよくて好きです。ACfa。


・駒王協定とはよくできた体制だ。まとめてヤるには最適だ
・2000万! 4000万! ~ 一億ゥ!
クレイドル一機に本当に2000万人も入るのでしょうか?
一億ゥ!は未使用ボイスにあります。
冥府の人口は不明ですけど、ノリというやつです。


・だまして悪いが仕事なんでね、死んでもらおう
騙して悪いがはACの伝統?


・ブタのような悲鳴をあげろ
アーカードは好きです。でも、ロリカードのほうがもっと好きです。ヘルシング。


・世界一の自宅警備員ザフィーラ
笑えばいいと思うよ。


・WRYYYYYYYYYYYYYYY
・貧弱! 貧弱ゥ!
ギャーくん魔改造。犠牲になったのだ……。JOJO。


・エヴァさん
みんな大好きエヴァンジェリン。ネギま!。
やっと登場しました。名前だけはちょこちょこ出していたんですけれどね。
とある漢女に惚れています。


・手伝ってやろうか? ただし真っ二つだぞ
素晴らしい人の迷台詞。ジャイアントロボ。 
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