ハイスクールD×D/EXTELLA
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旧校舎のディアボロス
オカルト研究部
棟夜side
一誠が堕天使、ドーナーシークに襲われた翌日。何時も通り登校していると、正門から殺気や悲鳴に近い声が上がっていた。
・・・十中八九原因は、あの二人だろうな。
「な、何故だ!?」
「あんな奴にありえねえ!」
「よりにもよってあんな下品な奴と!? リアスお姉さま!!」
皆の視線の先には、リアスと一誠が歩いているのだから。凛としているリアスとは違い、一誠は不服そうな表情を浮かべていた。
「後で使いを出すわ」
「使い?」
「放課後にまた会いましょう」
リアスは一誠に微笑みかけ、玄関で別れた。
「え? あ、ちょ、リアス先輩!」
「一誠!!」
一誠が言葉をかけようとしたが、横から松田に殴られ柱に激突した。
「一誠貴様、俺たちはモテない同盟の同志だったはずじゃないのか!?」
「まあ落ち着け松田。とりあえず、理由を聞かせて貰おうか一誠? 俺たちと別れてから、昨日一体何があった!!」
嫉妬心丸出しの二人に、一誠は笑ってやった・・・鼻血が出たままで。
「松田、元浜」
「な、何だ一誠」
そして力強く言った。
「お前ら、生乳を見たことはあるか?」
その一言に、二人は戦慄していた。そこまで驚くか?
放課後。俺と一誠は教室で使いが来るのを待っていた。
「使いが来るとか言ってたけど、結局誰も来なかったな」
「そうでもないぞ」
「え?」
一誠が顔を上げた瞬間、教室の各所と廊下から黄色い歓声が響いた。もう歓声だけで分かるわ。
「やあ」
「木場君!!」
ドアの近くに女子を虜にし、男子全員の敵である爽やかスマイルを浮かべた木場がいた。俺は別にそうじゃない。むしろ木場と似たような感じだ。
「ケッ。イケメン野郎が」
途端、一誠が一気に不機嫌になり半眼で睨みつける。
本当にイケメンが嫌いなんだな。最初は三人で襲い掛かってきたっけな。
「ちょっと失礼するよ」
スマイルを浮かべながら、俺達に近づいてくる。
「や、どうも」
「・・・何だよ?」
一誠は面白くなさそうに返すが、木場は変わらずスマイルで続けてくる。
「リアス・グレモリー先輩の使いで来たんだ」
「え? じゃあお前が・・」
「僕について来てくれない?」
イヤー! 今度は悲鳴が上がった。
「そんな。木場君とエロ兵藤が一緒に歩くなんて!」
「穢れてしまうわ木場君!!」
「木場君×兵藤のカップリングなんて許せない!」
「でも、木場君と神咲君のカップリングなら良いかも!」
「ううん、もしかしたら木場君と神咲君×兵藤かも!」
・・・俺が〇L系の妄想ネタにされるのは勘弁だな。これには木場も苦笑いを浮かべていた。
「クッソ、分けわかんないこと言いやがって」
一誠は文句を言いながら俺らの後をついてきた。
一誠side
リアス先輩が使いに出した、木場と棟夜の後を俺はついていってるんだけど。
「じゃあね、木場君、神咲君」
・・・この二人何かと廊下や教室のドアから女子に声をかけられてる光景がうぜぇ。木場と棟夜は手を振ったりしてるけど・・・やっぱり超うぜぇ。
「おい、まだ着かないのかよ?」
「ハハ。もう少しだよ」
「そう急かすなよ」
そう言い向かった先は、校舎の裏手だった。
木々に囲まれた場所には旧校舎と呼ばれる、現在使用されていない建物があった。
昔、この学園で使われていた校舎なわけだが、人気がなく、学園七不思議があるぐらいの不気味な佇まいだった。
・・まあ、外見は木造で古いけど、ガラス一枚も割れていないし、壊れた部分も一目じゃ分かり辛い。
「ここに部長がいるんだよ」
部長? 先輩のことか?
先輩って、何かの部活に属していたのか? じゃあ木場はそこの部員? 棟夜は木場と会話してるけど・・。
「棟夜、何か知ってるか?」
「・・・百聞は一見にしかずってやつさ」
自分で見ろってことですか。まあ、着いていけば分かるだろう。二階建ての木造校舎を進み、階段を上がる。更に二階の奥まで歩を進めた。
廊下も綺麗で、使われていない教室も散り一つ落ちていない。
掃除はマメにしているってことか。
そうこうしているうちに目的の場所とやらに着いたようだ。木場と棟夜の足が、ある教室の前で止まる。
戸にかけられたプレートには、『オカルト研究部』と書かれてた。
何とも名前だけで首を傾げたくなるな。
「部長、連れてきました」
「ええ、入ってちょうだい」
木場が中に確認をとると、先輩の声が聞こえてくる。
戸を開け、棟夜の後に続いて入ると、中の様子に驚いた。
室内、至るところに謎の文字が書き込まれていた。床、壁、天井に至る所まで見たことの無い面妖な文字が記載されていた。
そして、一番特徴的なのは中央に描かれている強大な魔方陣らしきものだ。
後は、デスクが何台か置かれていて、ソファーも幾つかあって内一つに小柄な女の子が座っていた。
って、あの子は一年生の塔城小猫ちゃんだ!
ロリ顔、小柄な体、一見では小学生にしか見えない我が高校の一年生のマスコット的な存在!
何時も眠たそうな表情で黙々と羊羹を食べている。
こっちに気づき、視線が合う。
「こちらは、兵藤一誠君」
「あ、どうも」
ペコリと頭を下げてきたので、俺を頭を下げた。それを確認すると、羊羹の皿をテーブルに置き、こっちに近づいてきて、棟夜の手を取ってソファーに移動し一緒に座った・・・って何!?
そのまま小猫ちゃんは羊羹を再度食べ始め、棟夜は本を読み始めた。
・・・何だあの二人!
-シャーッ-
部屋の奥から、水が流れる音が聞こえる。
シャワー? 部室に?
見れば、室内の奥にはシャワーカーテン。カーテンに陰影が映っている。
女性の肢体。女の人がシャワーを浴びてる。
「部長、お召し物です」
「ありがとう朱乃」
リアス先輩!? やはりか! あの素晴らしいボディーラインは間違いない。
「・・・いやらしい顔」
小猫ちゃんがボソリと呟く。
そうか、いやらしい顔していましたか。ゴメンよ。
「仕方ねぇよ小猫。一誠は元からいやらしい顔つきなんだからな」
「うるせぇな棟夜!」
「あらあら。あなたが新しい部員さんですわね?」
声の方向に顔を向けると、黒髪のポニーテールの女の人が近づいてきた・・ッてマジか!!
「初めまして。私、副部長の姫島朱乃と申します。どうぞ以後お見知りおきを」
「兵藤一誠です。こちらこそ初めまして」
絶滅危惧種の黒髪ポニーテール! 大和撫子を体現した究極の癒し系にして、リアス先輩と並び、この学園の二大お姉様の一人、姫島朱乃先輩!!
な、何て素敵な部活なのだ!!
「お待たせ」
カーテンが開き、制服に身を包んだリアス先輩が出てきた。
濡れている紅い髪が何とも艶っぽい。
「ゴメンなさい。アナタの家にお泊りしたままだったから」
「い、いえ。おきにぜず」
「さあ、これで全員揃ったわね。私たちオカルト研究部はあなたを歓迎するわ」
「え、ああ、はい」
「悪魔としてね」
・・・っ。どうやら何かが起こりそうです。父さん母さん。
「単刀直入に言うわ。私たちは悪魔なの」
そ、それはとても単刀直入ですね。
「信じられないって顔ね。まあ、仕方ないわ。でも、昨日の黒い翼の男を見たでしょう?」
・・・確かに、あれが夢じゃないなら、俺はそれを見ている。
「あれは堕天使。神に仕えし天使でありながら、邪な感情を持っていたため、冥界に堕ちてしまった者たちよ。私たち悪魔の敵でもあるわ」
堕天使ときましたか。
ファンタジーここに極まるね。
「私たち悪魔は太古の昔から。冥界、人間界で言うところの地獄の覇権を巡ってね。地獄は悪魔と堕天使の領土二分化しているの。悪魔は人間と契約をして代価を貰い、力を蓄える。堕天使は人間を操りながら悪魔を滅ぼそうとする。堕天使以外にも、神の命を受けて悪魔と堕天使を倒しに来る天使もいるわ。つまり三すくみの状態なわけ。それを大昔から繰り広げているのよ。ここまでは理解できたかしら?」
「いやいや、先輩。いくら何でも普通の男子高校生には難易度の高いお話ですよ。え? オカルト研究部ってこういうこと?」
「オカルト研究部は仮の姿。私の趣味。本当は私たち悪魔の集まりなの」
・・・いえいえ、オカルト研究部の会話でしょ。
「天野夕麻」
! その一言を聞いて、俺は目を見開いた。
「忘れてはいないでしょう。デートまでしていたんですもの」
「・・・どこでその名前を聞いたのかは知りませんけど、そのことをオカルト云々で話されるのは、困るって言うか、正直不愉快なんで、すみませんけど・・」
いつの間にか、俺の声には怒気が含まれていた。
その話をした所で誰も信じちゃくれなかった。誰も覚えていなかった。
俺はソファーから立ち上がり、出ようとするが、リアス先輩が一枚の写真をテーブルに置いた。
写真に写っていた者を見て、俺は言葉を失った。
「この子よね? 天野夕麻ちゃんって」
「そ、そうです。でも、どうやってこれを・・・」
写真に写っていたのは探しても見つからない彼女の姿だった。
「この子は、いえ、これは堕天使。昨夜あなたを襲った存在と同質の者よ」
「で、でも! 松田や元浜も彼女のことを覚えていなかったし」
「力を使ったのよ。その堕天使は目的を果たしたので、あなたと周囲から自分の記憶と記録を消したの」
「目的?」
「あなたを殺すため」
!? な、なんだよそりゃ!!
「あなたのその身に物騒な物をついているかどうかを確認するため・・・それが確認されたから殺された。光の槍に貫かれてね」
『恨むなら、その身にを神器を宿した神を恨んでちょうだい』
あの時、夕麻ちゃんはそう言った。
・・・俺の中に神器て言うのがある?
「神器は、特定の人間の身に宿る規格外の力。歴史上に残る人物の多くがその神器の所有者だと言われているんだ」
「現在でも体に神器を宿す人々はいるのよ。世界的に活躍する方々がいらっしゃるでしょう? あの方々の多くも、体に神器を宿しているのですよ」
木場に続いて姫島先輩も説明してくれた。
「大半は人間社会でしか機能しないものばかり。ところが、中には私たち悪魔や堕天使の存在を脅かす程の力を持った神器があるの。イッセー、左手を上にかざしてちょうだい」
え? 手を上にかざす? なぜに?
「いいから、早く」
「こ、こうですか?」
「目を閉じて、あなたの中で一番強いと感じる何かを心の中で想像してみてちょうだい」
「い、一番強い存在・・・・。ドラグ・ソボールの空孫悟かな・・・」
「では、それを想像して、その人物が一番強く見える姿を思い浮かべるのよ」
・・・俺は心の中でドラゴン波を撃つ姿を思い浮かべた。
「ゆっくりと腕を下げて、その場で立ち上がって」
腕を下げて立ち上がる。
「そして、その人物の一番強く見える姿を真似るの。軽くじゃダメ。強くよ?」
なんてこった。
周囲に人がいるのに、この歳になってドラゴン波のポーズを取らないといけないのか!?
「ほら、早くしなさい」
リアス先輩が急かす。
マジか! マジでやらないといけないのか!
なら見てろ! 兵藤一誠、一世一代の・・・。
「ドラゴン波!」
開いた両手を上下に合わせて前へ突き出す格好のまま、声を張り上げる。
「さあ、目を開けて。この魔力漂う空間でなら神器もこれで容易に発現するはず」
先輩に言われ、目を開けると・・。
-カッ!-
俺の左手が光りだす・・・ッてはあぁぁぁぁ!?
何これ! 何これ!? 俺、ドラゴン波出せるの!?
光はしだいに形を形成していき、左腕を覆っていく。
そして、光が止んだ時には、赤色の籠手らしきものが装着されていた。手の甲には丸い宝石・・と言うより宝玉がはめ込まれていた。
「な、なんじゃこりゃぁぁぁぁ!」
叫ぶ俺。
当たり前だ! ドラゴン波撃ったと思ったら、変身ヒーローみたいなアイテムが腕に装着されていた。
「それが神器。あなたのものよ。一度ちゃんと発現ができれば、あとはあなたの意思でどこにいても発動可能になるわ」
・・・ッ。この赤い籠手が神器。
「あなたはその神器を危険視されて、堕天使に殺されたの」
夕麻ちゃんも、神器も本当のこと。
「じゃあ、俺が殺されたことが本当なら、生きているのはおかしくないですか?」
「これよ」
リアス先輩が一枚のチラシを出した。
「瀕死の中、あなたは私を呼んだのよ。この紙から私を召喚してね」
・・・そうだ。あの時、俺はリアス先輩の紅い髪を思い浮かべたんだ。
「イッセー。あなたは私、上級悪魔であるグレモリー公爵家の娘、リアス・グレモリーの眷属として生まれ変わったの。私の下僕の悪魔としてね」
-バッ!-
その瞬間、俺と深以外の人間の背中から翼が生える。
堕天使とやらの黒い翼とは違う、コウモリのような翼だ。
-バッ-
俺の背中からも何かの感触が生まれる。背中越しに見てみれば、俺の背中からも黒い翼が生えていた。
・・マジか。
俺、悪魔? 人間やめちゃったの?
「改めて紹介するわね。祐斗」
「僕は木場祐斗。兵藤君と深君と同じ二年生ってことは分かるよね。僕も悪魔です。よろしく」
「・・・・・・一年生。・・・・・・搭城小猫です。よろしくお願いします。・・・・・・悪魔です」
「三年生、姫島朱乃ですわ。一応、研究部の副部長も兼任しております。今後もよろしくお願いします。これでも悪魔ですわ。うふふ」
木場、小猫ちゃんに姫島先輩が自己紹介してくれて、最後にリアス先輩が紅い髪を揺らしながら堂々と言う。
「そして、私が彼らの主であり、悪魔でもあるグレモリー家のリアス・グレモリーよ。家の爵位は公爵。よろしくね、イッセー」
どうやら、俺はとんでもないことになってしまったようだ。
俺が呆然としていると、リアス先輩が棟夜に向かって話す。
「トーヤ。挨拶してないのはあなただけよ」
顔を上げた悠夜は、立ち上がり俺と相対する。
「神咲棟夜・・・って言わなくても分かるか。去年からオカルト研究部に入っている。悪魔じゃなく人間だ。そこんとこ間違えんなよ?」
へ? 棟夜は悪魔じゃなくて人間?
「棟夜はオカルト研究部の中で人間で特別な力を持っているの。あなたの危機を救ったのもユウなのよ。思えていないでしょうけど」
悠が俺を救ってくれた?
「あ、助けてくれてありがとうな棟夜」
「気にすんなよ。お前の命を救ったのはリアスだ。俺は相手を退けたに過ぎない」
肩をすくめ皮肉っぽく言う。
「さあイッセー。悪魔としてこれから頑張りなさい」
「はい!」
リアス先輩の言葉に力強く答える。
絶対にハーレム王になってやる!
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