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魔法少女リリカルなのは~無限の可能性~

作者:かやちゃ
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第4章:日常と非日常
  第104話「祝福の風Ⅱ」

 
前書き
タイトルからわかる通り彼女が登場します。
 

 




       =優輝side=



「...では、お世話になりました。」

「いやいや、こちらこそ。いい経験だった。」

 高町家の門の前で、蓮さんが士郎さんにそういう。
 蓮さんが来てから一週間ほどが経ち、この街を離れる事になった。
 その見送りとして、僕らは集まっている。
 一応、織崎と遭遇した時のために司に祈りの加護を付けてもらった。

「御神流以外の剣術の使い手は身近にはいないからね、こちらとしても助かった。」

「僕らからも、霊術の特訓を手伝ってくれて助かった。」

「そうですか...。それならよかったです。」

 あれから、何度も実践形式でアリシア達を鍛えた。
 武器の振るい方などを教えるのも手伝ってもらったので、そうとう捗ったな。
 それと、何度か僕と手合わせもしてもらった。
 結果?...剣の腕では負けたけど、導王流としては勝てたな。初見殺しなのも効いた。

 ちなみに、那美さんと久遠もこの一週間の間に蓮さんに紹介した。
 久遠の存在に少し驚きはしたものの...まぁ、普通に一緒になって霊術の特訓をした。
 なお、那美さんも忙しいので別れの挨拶には来ていない。

「無茶はしないようにね。」

「そちらこそ、お達者で。」

 椿と葵も蓮さんと挨拶を交わし、アリシア達も一言ずつ別れの言葉を言う。

「では...また縁があれば会いましょう。」

「またねー!」

 去っていく蓮さんに、アリシアは手を振る。
 契約した事もあってか、ここ一週間で仲良くなっていたからな。

「一週間だけとは言え、寂しくなるな。」

「あれほどの使い手、優輝以外に早々いないからな...。」

 士郎さんと恭也さんも同じ剣士として交流が多かったからなぁ...。
 美由希さんも巻き込んで何度か試合をしてたっけな。

「じゃあ、僕らも一度家に帰ろうか。」

 朝のまだ涼しい時間帯に蓮さんは出て行ったので、僕らはそれぞれ朝食を取るために家へと戻る。...実際、なのははまだ寝てたりするんだよな。





「...あれ?」

 玄関を開ける際、見知った気配を感じる。
 これは...。

「父さん、母さん。いつの間に家に。」

「あ、帰ってきたわね。」

 家に父さんと母さんが帰ってきていた。連絡もなしなのは珍しい。

「連絡もなかったから驚いたよ。」

「まぁ、それは悪いと思ってるわ。でも、ちょっとクロノ執務官から言伝を預かっていてね。そのついでに朝食を取りにきたのよ。」

「言伝...?」

 また何か厄介ごとだろうか...?

「八神さん所でユニゾンデバイスを作るらしくて、同じくユニゾンデバイスを持つ優輝に同行してもらいたいらしい。」

「あー...前にも聞いたなぁ...。でも、どうして僕に?」

 なんでも、本来ユニゾンできるはずのリインフォースさんだが、闇の書から夜天の書に戻る際にその機能を少し失ってしまったらしく、それを補うために後継機を作るとクロノやユーノから聞いたことがある。
 短時間ならユニゾンできるけど、長時間は無理だから...らしい。
 はやてにとっては新たに家族が増えるという側面が強いだろうけど。

「そりゃあ、優輝は形式上ユニゾンデバイスを所持し、デバイスマイスターだからよ。おまけに同じ地球出身。」

「実際所持扱いになっているのは椿だし、僕は資格を得たばかりの新米なんだけど...。」

「細かい事は気にしちゃだめよ。」

 確かに、椿は僕の使い魔扱いで、そのユニゾンデバイスである葵も僕が所持している事になるんだろうけど....それでもなんで僕が...。

「クロノ執務官直々の推薦だから、優輝なのよ。」

「...うーん、随分と信頼されたものだなぁ...。まぁ、断る理由もないしいいけどさ。」

 しかし、急だから急いで準備しないとな。

「(...問題は魅了関連なんだけど...どうするべきか。)」

 生まれてすぐにあいつに魅了されるなんて酷だろう。...自覚症状がないから余計に。
 未だに予防はできても解く事は魔力の問題で難しい。
 魅了が根深くなったせいか、さらに魔力が必要になったし...。

「(...司に連絡して、あいつより先に会うようにするか。)」

 理由付けはおまじないとか適当なのでいいだろう。







「...まさかの八神家総出か。」

「新しい家族の誕生なんやから当然やろ?」

 ミッドチルダに行き、はやてと合流したのだが、全員勢揃いだった。
 ちなみに、父さんと母さんは別件で既に別れている。
 それと、椿や葵もついて来ている。

「とりあえず、なんでデバイスマイスターになって初めて立ち会うデバイスの種類がユニゾンデバイスなんだ...。」

「あたしらが知るかよ。」

「...クロノがそれだけお前の腕を買っているという事だろう。」

 なんとなく呟いた言葉に、ヴィータとザフィーラさんにそう言われる。
 ...まぁ、わかってはいるけどさ。

「それで、件のユニゾンデバイスは...。」

「こっちや。」

 案内されたのは普通のデバイスを作る部屋とは違う部屋。
 ...まぁ、ユニゾンデバイスは珍しいからな。

「あれ?マリーさん?」

「優輝君?どうして...って、そういえばつい最近デバイスマイスターになったっけ。」

 メンテナンススタッフのマリーさんが、作業室にいた。
 まぁ、別段おかしくはない。はやてもマリーさんに協力してもらってたんだろうし。

「...既にほとんど完成してるのに、僕の必要性あるのか?」

「新人として、現場を見ろという事では...?」

「理解はできても納得がいかない...。」

 リインフォースさんの言葉に、僕はそういう。
 ...いや、理由は大体掴めたんだけどさ...。

「(...クロノも予測して僕を宛てたんだろうな。)」

 僕を必要性がほぼないのに派遣したのは、おそらく織崎の魅了を防ぐためだろう。
 僕が傍にいれば、何か理由を付けて予防できるかもしれないからな。
 ...司の方が確実なのになぁ...。

「あれ?小さい...。」

「葵やリインフォースさんが特別なんだよ。本来ならそれぐらいのサイズだ。」

 起動前のユニゾンデバイスを見て呟いた葵にそういう。
 まだ眠っている“彼女”は、掌に乗れる程の小ささだ。妖精さんみたいだな。

「...とりあえず、残り少ないけどやれる事はやるか。」

「じゃあ、データの入力と確認、お願いね。」

 空いている椅子に座り、表示されたデータを見ながらチェックなどを済ませていく。
 ベルカ時代の時と違い、色々便利になっているからデバイス制作も楽だな。

「...何をやっているのか全然わからないわ。」

「うーん、あたしもさっぱりだね。一応、あたしもデバイスなのに。」

「二人は機械関連に疎いからなぁ。葵はまだマシだけどさ。」

「生憎、それと関係のない生活を送ってたからね。」

 仕方がない事だし、そこまで必要としないからいいと思うけどな。
 ...って、本当にもう終わったんだが...。

「後は目覚めさせるだけ...か。」

「早いわね。」

「そりゃあ、ほとんど完了してたし。」

 さて、どんな性格のユニゾンデバイスなのやら...。
 見た目としては、リインフォースさんの銀髪を少し水色っぽく、服の色を黒を基調としたものから白にして縮めただけだが...。

「そういえば...名前は付けてないみたいだな。決めてあるのか?」

「もちろんや。」

 データをざっと確認した時に、まだ名前が登録されていなかった。
 その事について尋ねるが、実はもう決めてあったらしい。

「この子はリインフォースから生まれた妹みたいなもんや。リインフォースと同じ、祝福の風を起こしてくれる...そんな想いも込めた名前なんや。」

「そうか...。じゃあ、目覚めさせるぞ。」

 名付けると同時に目覚めさせる事にする。
 はやて達もそれを望んでいるみたいだしな。

「...起きて、リインフォース・ツヴァイ。」

 ...なるほど。妹みたいなものだから、リインフォースさんとほぼ同じ名前か。
 名前が登録されるのを確認すると、名付けられたデバイスが起き上がった。

「んっ....!...おはようございますです!」

「...異常なし、正常に起動したな。」

 軽く伸びをして、はやて達に挨拶をするリインフォース・ツヴァイ。
 どうやら、性格は元気のいい女の子って感じらしい。

「(...そういえば、どちらも“リインフォース”になる訳だが...どう呼び分けるんだ?)」

 一応、彼女の方には“ツヴァイ”がついているけど...。

「えっと、こっちの方達は...?」

「あたしは薔薇姫葵っていうんだよ。ユニゾンデバイスとしては先輩になるのかな?まぁ、よろしくねー。」

「よろしくです!」

 早速ユニゾンデバイス同士だからか、仲良くなる二人。
 ちなみに、八神家の皆とはもう挨拶を交わしたようだ。

「えっと...ロードはどちらなのですか?」

「かやちゃんの方だよ。」

「私ね。草野姫椿と言うわ。」

 ロード...使用者の事だな。...一応、僕や奏もユニゾンできるんだけどな。
 まぁ、持ち主としては椿だから間違ってはいないが。

「僕は志導優輝だ。椿の主だな。それと、新しくデバイスマイスターにもなった。」

「そうなんですか?よろしくです!」

 うん。元気のいい子だ。何気にこういうタイプの子は周りにいないな。
 アリシアは...似ているようで違うしな。

「ところでさ、名前の呼び分けどうするんだ?さっきから気になってたが。」

「あー、その事かいな。それなら...。」

「私がリインフォース・アインスと名乗り、普段の呼び名を“アイン”や“アインス”とするように決めてある。」

「既に決まってたのか。」

 それなら安心だな。

「そして、この子は“リイン”って呼ぶ事にしたわ。」

「はいです!」

 うん、既に末っ子のように可愛がられているな。微笑ましい。

「...うー、リインもお姉ちゃんや葵さんみたいに大きくなりたいです!」

「ユニゾンデバイスとしてはそれが普通のサイズなんだが...まぁ、不便な事もあるだろうし、ちょっとやってみるか...。」

 少しコンソールを操作し、どうにかできないか確認する。
 元々ベルカが作り出した存在なのだから、ユニゾンデバイスに関する事は、僕だってそれなりに理解している。

「...今は無理だけど、ボディとなるフレームを用意して調整すれば変化は可能だな。けど、スペックとかの問題で、子供姿が限界だし、燃費が悪い。」

「結局は小さい姿がベストって事?」

「そうなるな。」

 もし大人モード的なものを追加するのならば、リインの根幹のシステムから調整していかなければならない。...さすがにそれは、な。
 ちなみに、リインフォース...アインスさんと葵はロストロギア級のユニゾンデバイスなため、こうして普通のサイズでいられるみたいだ。

「うぅー...それなら...諦めますぅ...。」

「まぁ、それでも子供ぐらいのサイズにはなれるから、こっちで準備するか。」

「手慣れてるね優輝君。こっちも了解したよ。実装はまた別の機会になるけど。」

 マリーさんと協力して、とりあえずシステム面だけでも組み立てておく。
 機材とか、そういう類はまた後日だ。

「...よし、後は必要な機材があればOK。マリーさん、頼めます?」

「任せて。」

 今やれる事は全部終わらし、僕は椅子から立ち上がる。

「『...さて、どうやって彼女を魅了から守ろうか...。』」

「『何か考えてるかと思ったら、その事ね...。』」

 御札を用いた念(念話)で椿と会話する。ちなみに葵にも繋げてある。

「『なんでまた彼女だけなのよ?』」

「『いや、なんというか...純粋無垢な子が穢されるみたいに思えて。』」

「『想いが歪められるからねー。まぁ、防げるものは防ぎたいね。』」

 防ぐとなれば、僕でも一応可能だが、司の方が適任だ。けど、ここにはいない。

「『私の作った護符なら...って、彼女には大きすぎるわね。』」

「『そんなもの作ってたのか...。...ん?ちょっと待ってくれ。』」

「『何よ?』」

「『その護符、見せてくれないか?僕なら小さくできるかもしれない。』」

 一度念を止め、椿から件の護符を見せてもらう。
 一見普通の御札だが、それに込められた術式はとても複雑なものだった。

「うーん...これなら、何とか...。」

「どうするの?」

「こうやって....!」

 魔力を使い、創造魔法の応用をする。
 創造魔法は物体の構成を弄る事も可能なため、こうして小さく縮小も可能だ。

「...どうだ?」

「...術式はそのまま。出来てるわ。」

「じゃあ、後は御守りの袋でも作るか。」

 指にちょこっと乗る程度にまで、護符は小さくなる。
 だが、術式はそのままで、まるで布団圧縮機のように小さくできた。

「何してるんや?」

「いや、椿が御守りを作ってあったから、何かの縁としてリインに渡そうかと。」

「御守りですか?」

 気にしていた皆の内、はやてが代表して聞いてくる。
 僕はともかく、椿の作った御守りなら、受け取ってくれるだろう。

「リインのサイズに合わせて今御守り袋を創造してる...っと、出来た。」

「ちっさ!?器用だなおい...。」

「結構精神を集中させたよ。」

 ミニチュアを作る気分だったため、結構きつかった...。
 ヴィータもその小ささに驚いていた。シグナムさんやシャマルさんも興味を示すように小さな御守り袋を見ていた。

「リインの首に掛けれるようにして、後は中に御札を...よし。」

「わぁ...ありがとうございますぅ!」

 完成し、リインに渡す。すると、喜んですぐに首に掛けてくれた。

「そういえば、どんな効果のある御守りなんや?」

「そうね...具体的に言ってしまえば、精神干渉を受け付けないわ。それと、ある程度の危険から身を守ってくれる...と言っても、たかが知れてる程度の、だけどね。」

「ほぉー...便利やなぁ...。」

 精神干渉...まぁ、織崎の事を考えたらそうなるわな。
 危険から身を護るのは、本当におまけ程度の効果しかないだろう。

「『...一応聞いておくが、魅了を防げるよな?』」

「『ええ。魂、心、脳、それぞれに干渉されないように術式を組んでおいたわ。それに、効果があるのは実証済みよ。』」

「『以前に管理局の仕事で彼と会ったでしょ?その時に弾いているのを確認したんだって。』」

 どうやら、既に織崎の魅了を試したらしい。
 御守りによって弾いているかは分かるらしいな。

「『ま、これで一安心だな。』」

「『そうは言っても、この術式は組むのに凄く苦労したから、量産はできないわよ。』」

「『まぁ、便利だし仕方ないだろう。』」

 むしろ予防する手段が増えただけでもありがたい。

「でも、これやと何かの拍子で千切れへんか?」

「あ、その心配もあったな...。」

 護符とは言え、肌身離さず持っていなければ無意味だ。
 首に掛ける紐が千切れたら元も子もない。

「幸い、紐と袋にも術式は込めれる...なら。」

「ちょっと貸してくれるかしら?」

「はいです。」

 椿に目で指示を出し、一度リインから御守りを返してもらう。
 そして、二人で共同して術式を込める。

「....よし、不朽の術式を込めた。これで、術式が壊れない限り紐や袋が千切れたり破れる事もないし、時間で劣化する事もない。」

「...便利やなぁ、霊術って。」

「魔法でも探せば同じようなものはあるけどな。」

 ただ、御守りなどでは霊術の方が適しているけどな。
 なお、グリモワールにそんな感じな魔法が載ってるし、僕自身知っている、

「はい、返すよ。」

「ありがとうございますぅ!」

 上手い事リインに御守りを掛け直す。

「言い忘れていたけど、御守りは肌身離さず持っておくようにね。そうでなければ、御守りの意味がないから。」

「ついでに不穢(ふわい)の術式をあまり強くない効果だけど入れておいたから、汚れる心配もないぞ。だから、常に身に着けられるな。」

「ふわぁ...凄いんですねぇ...。」

 ちゃんと常に身に着けるように言っておく。
 司の祈りの加護を与える前に、外した状態で接触されたら意味がないからな。

「あの...リインにこんな凄そうな物...いいのですか?」

「いいよいいよ。元々、デバイスマイスターとして来たのに全然やる事がなかったし。せめてもの贈り物って事で、遠慮なく受け取ってくれ。」

「作ったのは私だけどね。」

「........。」

 ...いやホント、デバイスマイスターとしての僕必要ないじゃん...。

「えっと、この後は...。」

「管理局と聖王教会に正式な登録をせなあかんわ。」

「そうだな。...じゃあ、ここでお別れだな。」

「せやな。」

 僕は聖王教会に用はないし、やれる事はやったからな。

「またですー!」

「またな。」

 リインが手を振ってくれたので、僕も返して別れる。
 ...さて、後は帰るだけか。

「ついでだから、何か買っていくか?」

「いいね!かやちゃんは?」

「このまま帰るのも寂しいし...いいわよ。」

 そういう訳で、ミッドの街の方へと向かう。





「...あれ?ティーダさん?」

「君は...優輝君か。奇遇だな。」

 街を歩いていると、偶然ティーダさんに出会った。
 すぐ傍にはティアナちゃんもいた。

「買い物帰りですか?」

「ああ。そっちは...。」

「ちょっとデバイスマイスターとして派遣されて...その帰りです。」

「なるほどな。」

 しかし、本当に偶然だな。
 強盗があったとはいえ、最初に会ったのも買い物の時だし。

「そっちの二人は...。」

「あぁ、使い魔の椿と...そのユニゾンデバイスの葵です。」

 椿と葵を紹介し、二人も自己紹介する。
 ちなみに、葵はその後ティアナちゃんの相手をして、既に仲良くなっていた。

「しかし、君は色々と話題が尽きないな。」

「えっ?」

「“魔術師殺し”などの通称が出るような活躍ぶりに、今度は“最年少のデバイスマイスター”と来た。...この前、新聞で見たぞ?」

「あー....。」

 僕は普段地球にいるから、ミッドのニュース関連には疎い。
 しかし、そんなに有名な扱いを受けてたのか...。と言うか、最年少だったのか。

「確か...第97管理外世界出身だったよな?最近は、その世界から優秀な魔導師が管理局に入って有名になっているが...。」

「あー...多分全員知り合いです。」

「管理外世界...と言うより、魔法がない世界なのになぜそんな優秀な人材が...。」

 ティーダさんの言う通りだな...。なぜ地球にこれほどまで...。

「まぁ、俺が気にしても仕方がないか。」

「次元世界は広いですから、そういう事もありますって。」

 主に魔法以外の力とかな。

「...時に優輝君、君は自分が才能に溢れていると思うか?」

「才能...ですか?なぜいきなり...。いえ、僕は才能は溢れてるとは思ってません。」

 凡人...とまではいかないが、よくて二流止まり...僕はそんな感じだ。
 剣術も体術も、全部ベルカ時代の経験から極めて行っただけに過ぎない。

「そうか...。...俺も、あまり魔導師としての才能はなくてな。得意な事と言えば、射撃魔法ぐらいだ。」

「あの時はお見事でした。」

 僕もやろうと思えばできるが、やはりティーダさんは射撃に優れていた。

「ありがとう。...それでな、才能のある魔導師が、俺を追い抜く活躍をしているのを見ていると、努力と言うのは実るのだろうかと思えてしまってな...。」

「なるほど....。」

 才能があるとは言えないからこその悩みだろう。

「...何も、相手の土俵で勝負する必要はありません。ティーダさんは、射撃が得意でしたよね?それを生かすようにすれば、例え相手が格上でも為す術なくやられる事はないでしょう。努力も同じです。例え実る事はなくても、必ず力にはなります。」

「...そうか...。」

 尤も、こういう類で悩んでいる人には、今の言葉では足りないだろう。

「...胸を張ってください。きっと、ティーダさんなら、どんな障害も撃ち貫けるはずです。ティアナちゃんを守るためにも、決して挫けないでください。」

「そう...だな。...あぁ、ティアナがいるのに、俺が挫けてられるか。」

 僕だって、シュネーが、緋雪がいたから挫けなかった。
 ティーダさんも、大事な妹がいるんだから、きっと強くなれるはずだ。

「お兄ちゃん....?」

「心配するなティアナ。ランスターの弾丸に、貫けないものなんてない。」

「....うん!」

 心配そうにしていたティアナちゃんを、ティーダさんは頭を撫でながらそういう。

「...時間を取らせたな。それじゃあ、俺達はそろそろ帰るよ。」

「あ、せっかくですし、連絡先を交換しておきません?」

「...そうだな。これも何かの縁だし、そうするよ。」

 偶然とは言え、二回も街中で会ったのだ。これも何かの縁として、連絡先を交換する。

「そうだわ。これを渡しておくわね。」

「これは....。」

「御守りよ。優輝。」

「はいよっと。」

 椿が御札を取り出したので、僕は創造魔法で御守り袋を創り出す。
 街中で魔法を使ってはいけないので、懐から取り出すように見せかけておいた。

「きっと力になるわ。」

「はい、ティアナちゃんにも。」

 ティアナちゃんには、リインにも渡した魅了防止の護符が入った御守り。
 ティーダさんには、いざという時に身を守ってくれる御守りだ。

「じゃあ、これで。」

「ああ。またどこかで。」

「またねー。」

 葵がティアナちゃんに手を振ったからか、ティアナちゃんも振り返してくれる。
 ...本当、仲のいい兄妹なんだから、どちらにも欠けて欲しくはないな。

「...どうしたんだ椿?」

「えっ、あ、いえ、なんでもないわよ?べ、別に会話に入れなかったとか、そんな事思ってないんだから!」

「お、おう...。」

 これは会話に入れなくて若干拗ねてるな....。
 ...じゃなくて、ティーダさんを見て何か考えてたような...。

「...彼、このままだと早死にする可能性があるわ。」

「え....。」

「...と言っても、“可能性”よ。逆に、それを乗り越えたら強くなれるわ。」

 つまり、生死を分ける出来事がティーダさんに訪れる可能性が....?
 椿が言う事だし、一概に否定できないな...。

「でも、大丈夫よ。家族を守るために強くあろうとしてるのなら、きっとね。」

「....そうだよな。」

「そうだよ!彼なら大丈夫だって!ほら、早く行こう!」

 きっと大丈夫だと僕はティーダさんを信じ、葵に引っ張られながら買い物に向かった。




 この後、特に何事もなく、僕らは買い物をして家へと帰って行った。









 
 

 
後書き
リインは皆の妹ポジ。異論は認める。(なんかそんな感じになってました。)
...と、言う訳で魅了の予防に成功。織崎関連で(優輝にとって)二人目の八神家の良心になりそう。(一人目はザフィーラ)

ティーダさんに色々なフラグが立ちまくっているけど、まぁ原作では故人だから仕方ないね!(生存するとは言っていない) 
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