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真田十勇士

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巻ノ八十九 水を知りその三

「よいな」
「はい、その時は」
「そして武士の道を歩まれよ」
「そうさせて頂きます」
「幕府により天下は治まるが」
 これからはだ、そうなるがというのだ。
「しかしな」
「それでもですな」82
「天下は一つではない」
「統一されても」
「心は違う」
 一人一人そして家ごとのそれはというのだ。
「だからな」
「我等もですな」
「頼れる者もおる」
「そういうことですな」
「西を頼れ」
 村上はこうも言った。
「わかったな」
「それでは」
「その様にな」
「では」
 こうしてだ、海野が免許皆伝となってだった。
 彼と海野は九度山に去った、そしてだった。
 幸村は昌幸に村上が言ったことを話すとだ、彼もこう言った。
「わしもそう思っておる」
「父上もですか」
「両家はな」
 毛利、島津両家はというのだ。
「違う考えじゃ」
「やはりそうですか」
「幕府に従ってはおら」
「心からは」
「だから何かあればな」
「その時はですか」
「動かれる」
 両家共というのだ。
「そうされるわ」
「やはりそうですか」
「だからな」
 まさにというのだ。
「その時が何時になるかわからぬが」
「時が来ればですな」
「貴殿達が生きていれば」
「わかりました、ただ」
「幕府は固まってきておるな」
「おそらくその治世は長いでしょう」
 幸村はこう見ていた。
「世に絶対はなく若しやするとですが」
「あくまで若しやじゃな」
「その程度です」
 幕府が早く終わることはというのだ。
「最早」
「そうじゃな。相当なことがないと幕府は早くは潰れぬ」
「天下の民は泰平を欲しています」
「我等が生きておる間ではないであろうな」
「はい、しかし」
「それでもか」
「それがしは戦いますし」
 それにというのだ。
「武士の道を進みます」
「やはりそうか」
「そう考えています」
「ではな」
「はい、その様に」
 こう村上に言うのだった。
「して参ります」
「そしてやるべきことはか」
「果たします」
「そうか。それで村上殿の話をな」
「より、ですか」
「してくれるか」
「わかりました」
 父の言葉を受けてだ、幸村は村上のことを話した。その話はというと。 
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