八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百九話 観覧車その三
僕は暫く周りを見回した、すると。
井上さんとニキータさんの声が後ろから聞こえてきた。
「義和ではないか」
「どうしたの?」
「一人の様だが」
「今は誰もいないの?」
「あっ、実は」
見れば二人一緒だった、井上さんは白のブラウスと黒の丈の短いズボンという夏にしては控えめな露出のファッションでニキータさんはブラジルのあのカナリアチームの服だった。
「今までイタワッチさん達と一緒にいたけれど」
「別れたのか」
「そうなのね」
「二人はお風呂に行ったんだ」
スーパー銭湯にだ。
「流石にそこまでは一緒に行けないからね」
「そうだな」
井上さんは僕の説明を聞いて確かな顔で応えてくれた。
「混浴でもないとな」
「はい、ですから」
「そうか、ではだ」
「僕達と一緒にどう?」
二人で僕に誘いをかけてくれた。
「これから観覧車に乗るが」
「お昼も食べたしね」
「それなら一緒にどうだ」
「三人でどう?」
「あっ、いいのかな」
僕は二人の誘いを受けてこう返した。
「ご一緒して」
「構うことはない」
「むしろ大歓迎よ」
二人で僕に微笑んで答えてくれた。
「こうした時は多い方がいい」
「その方が楽しいからね」
「ではだ」
「一緒に乗ろうね」
「それじゃあ」
僕は二人の言葉を受けてだ、そのうえで。
三人で行くことにした、午後はこの二人と一緒になった。
その中でだ、井上さんは僕にこんなことを言った。
「実は私もだ」
「井上さんも?」
「一人になるのではないと思っていた」
そうだったというのだ。
「ハウステンボスに来た時はな」
「そうだったんですか」
「しかしだ」
ここでニキータさんを見て言うのだった。
「ニキータと同室でな」
「うん、僕と沙耶香一緒の部屋だよ」
ニキータさんは笑顔で井上さんの名前を呼んだ、そういえば僕は八条荘の入居者で井上さんだけは苗字で呼んでいる。
「だからなんだ」
「それが縁でだ」
「お二人で、ですか」
「こうして楽しんでいるのだ」
こう僕に話した。
「何よりだ」
「それでお二人が一緒ですか」
「うむ、ニキータと二人になるのははじめてだが」
「これが楽しいんだ」
ニキータさんも笑って言う。
「沙耶香よく気がついてくれるし」
「それでなんだね」
「うん、親切だよ沙耶香は」
ニキータさんは井上さんを見ていた。生真面目な井上さんと陽気そのもののニキータさんの正反対の個性の組み合わせだ。
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