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~異世界BETA大戦~ Muv-Luv Alternative Cross Over Aubird Force

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タケルと純夏

 
前書き
前回は、ちょっと冒険してしまいすみませんでした。
どうしても系統の全く違う異世界も描きたかったもので・・・。
剣と魔法の世界で成長した入江君がマヴラブ世界に帰還して活躍するのか?・・・は未定です。
需要ありそうでしたら閑話として続けようかと思います。 

 
エレミア歴1033年8月28日
オルキス連邦首都 ブリトニア
「暑いなー。」そう、ここオルキスの首都ブリトニアの季節は現在夏真っ盛りであり、とても暑い。
ブリトニアの夏の昼間平均気温は35℃であり、雨もほとんど降らないというどちらかというと乾燥帯な気候なので湿度は高くないが、いかんせん気温が高すぎるのだ。
機動第一艦隊は今から2時間前にオルキス連邦本星首都ブリトニアの軍用宇宙港に帰還して、保安要員と保守要員を残して全員下船して、帰還報告のためそれぞれの司令部へ向かった。
情報部の司令部は宇宙港に比較的近い場所にあるので、俺は麾下の部隊全員を連れて司令部に向かう途中の通路をぞろぞろと歩いている。

「ブリトニアは久々っすね!・・・・たぶん。」タケルちゃんが自信なさげにそう言っているが、実は俺も記憶ではあるのだけど、なんだかフィルターがかかっているというか、自分自身の体験じゃなくて、なんとなく植えつけられた記憶というか、ちょっと気持ち悪い感じがしている。
タケルちゃんもおそらく同じ気持ちなのだろうなと思う。

「中佐殿!すごい近代的なビルだらけですね!こちらの文明は我々の地球よりはるかに進んでいるというのが良くわかります!」遠山中尉が興奮しながらビル群を見上げている。
「空の青さも地球と同じ・・・もしかしたら地球人はこちらの世界に移住してしまう方が良いのでは?とまで思ってしまいます・・・。」碓氷中尉が意図せずにオルタネイティヴ5のバビロン作戦と同じような考えを示してきたな。
ああ、でもさすがにオルタネイティヴ4を進めている香月博士直属A-01の部隊長がその方向に言及したらマズいよね・・・。
ハッとしてタケルちゃんを見たら、やはり悔しい思いがあったのか、苦虫を噛み潰したような顔をしていた。

俺はそっとタケルちゃんに近づき小声で「今回は絶対に純夏を助けるぞ。こちらのバイオニクスはかなり進んでいて、身体の欠損なんてすぐに治す事が出来る。DNA解析で無事な時の状態で復活させる事が可能だしね。極端な話、脳さえ無事なら戦死する事も出来ない世界だからな。」と励ました。
「確かにそうですね。でも純夏は本当に脳だけにされたんですけどね・・・・。」あー、励ますつもりが辛い事思い出させるだけになってしまったか・・・・すまん、タケルちゃん。

司令部に到着して最初に情報部長のザンデール中将に帰任の報告と、遠山・碓氷達の正式な辞令の交付まで終えた。
ここでタケルちゃんが大尉に昇進、そして地球人組の階級は“臨時”が取れて正式な階級になった。
そしてタケルちゃんを含め彼らには1週間の休暇辞令が下りた。
タケルちゃんや遠山たちにしてみれば、早く地球へ帰還できる道程を見つけたいだろうし、気も逸るだろうけど、ここは英気を養うと思って耐えて欲しいと思う。
ただ、休暇と言ってもシュミレーター使用を含む自主訓練は制限されていない、と言ったら彼らはほぼ毎日頑張るつもりでメニューの組み立てを始めた・・・・ワーカーホリックという言葉が頭をよぎったが、彼らは次の戦闘でも万全を尽くせるように頑張る!という意気込みらしいので、それを揶揄するような考えはダメだな・・・・みんな、すまん。

まぁ俺は佐官なので休暇は下りず、勤務に勤しまなければならないのだけど。
実は、帰還報告の際に情報部長から、俺の麾下にもう1個中隊を加えて大隊編成にすると聞かされた。
エレミア星系全体を驚愕させた敵性生物(BETA)の発生源を探り、その根拠地を叩く計画が進行中だそうで、その索敵攻撃部隊に機動第一艦隊や俺の部隊も含まれるので、そのための増強であると。
攻撃部隊は各国混成艦隊になり、オルキス、アマティス、デュミナスの艦隊が主力の編成となるらしい。
確かにデトロワとラファリエスは戦力がまだ十分に回復していないので、正規艦隊の参加は無理だろうな。
分艦隊規模での参加はあるらしいけどね。
ただ、肝心なのはやつらがどこを経由してやってきたか?だけど、どちらにしてもまずはワームホールの探索からだな。
無人探索船を複数用意して送り込むことになったから、後は細かく観測チェックしていくだけか。
さて、そろそろ報告書を仕上げて今日は早めに帰ろう。



オルキス連邦軍ブリトニア基地内官舎――――タケル自室

『なんだか知らないうちに昇格とかして、気が付いたら大尉になってるとか・・・・伊隅大尉に知られたら怒られそうだな・・・。
あ、そっかこの時間軸だとまだ俺に出会ってないからそれは無いのか・・・。
伊隅大尉に追いつくなんて考えた事もなかったな・・・。』
タケルはA-01に所属していた頃を思い出し、あの頃の自分の無知・無経験な姿などを考えると良くここまでになったものだなぁ・・・などと考えていた。
『地球につながるゲートはダイスケさんが見つけてくれるとは思うけど、どの辺につながっているんだろう?いきなり地球の軌道上に現れたりしたら向こうの政府はみんな大騒ぎだろうしなぁ。まぁ、今はわからないことは考えなくてもいいか!』

『月の軌道上・・・・だよ。』タケルの心のつぶやきに応えるように女の子の声がした。
タケルはその声に聞き覚えがあった。
絶対に忘れるわけが無い・・・・当然の事・・・・それは彼の愛してやまない女性(ひと)の声だから。
「?!純夏??純夏だろ?どこにいるんだ?」タケルは咄嗟に叫び、周りを見回した。
すると部屋の隅に光の珠がどんどん集まってきて、人の形になる。
「タケルちゃん!元気そうだね!」その人の形の光は純夏だった。
「純夏!・・・ごめんな、まだそっちにいけないんだ・・・もうちょっと待っててくれ!絶対に助けに行くからな!」純夏の姿を見るなりタケルちゃんは謝罪の言葉を純夏に向けた。
「ううん、私は大丈夫だよ?こうしてタケルちゃんの姿を見る事も出来てるし、霞ちゃんが毎日会いに来てくれているから!」純夏はタケルの謝罪を必要無い事だと優しく応えた。
「そっか、霞が来ているのか・・・という事はもう横浜ハイヴが攻略されて横浜基地も稼働しているって事か。」
「そうだよ?そういえばそっちに地球から何人か迷い込んだと思うけど、タケルちゃん見守ってあげてね?」
「ああ、彼らなら俺と同じ部隊に配属されたから、言われなくても見守るよ!任せてくれ!」
「うん、特に鳴海さんと平さんは、何周かしたタケルちゃんなら知ってると思うけど、速瀬さんと涼宮さん・・・お姉さんの方のね、彼女達の同期生なの。」
「ああ、俺も本人達から聞いたけど、その時二人の事や最後を思い出して泣きそうになったんだ。」
「急に泣き出したら、変な人と思われるね!あはは。」
「純夏のくせに!・・・・ははは!」

純夏とタケルは楽しそうに会話を続ける。
だが、今まさにこの時においても純夏は脳髄のみにされたままODL漬けになっているはずで、それを思いタケルは何度も泣きそうになった。
タケルはこれまで何周も同じ体験をしてきて、何度も彼らを救おうと努力したが、それもむなしく、必ず彼女たちはBETAとの戦闘で命を落とす展開となっている。
それはまるで逃れられない運命のようにまとわりついているかに思えた。
しかし、今回は今までと全く違う経緯で圧倒的なエレミア星系の科学力で必ず救えると考え直し、泣くのを堪えた。

「純夏・・・俺、純夏を必ず救って見せる。そして伊隅大尉や速瀬中尉、涼宮中尉達も必ず救う!今度こそ、絶対だ!」タケルは新たにした決意を純夏に伝えるのだった。
「うん。あ、タケルちゃんにひとつ伝えておきたい事があるんだ。」純夏が急にあらたまって切り出してきた。
「何?なんか良くないこと?」タケルは恐る恐る純夏に尋ねる。
「ううん、いくつかあってね、私今BETAからも情報が流れてくるんだけど、私みたいに脳だけにされてる人が他にもたくさんいるんだ。」純夏が驚愕の事実を告げてきた。
「マジか?!他の人たちはどこのハイヴに捕まってるんだ?」
「うんとね、地図みたいなものはイメージが流れてくるんだけど、私世界地理とか不得意だったじゃない?だから良くわからないの・・・ごめんね。タケルちゃんがこっちに来たらイメージを伝えて誘導する事が出来ると思うんだけど、今は距離がありすぎて無理みたい。でもみんなも助けてあげて欲しいんだ!タケルちゃん、お願いできる?」
「ああ、もちろんだ!純夏を助けてみんなも助ける!」タケルは語気を荒げて純夏に皆の救助を誓う。

「もうひとつはね、BETAは地球にいる種類が全てではないみたいなの。」
「母艦級や重頭脳級なら知ってるけど、その他にも種類があるのか?」何周かしているタケルは桜花作戦時に確認された新たなBETA種を知っているが、その事を純夏が知らない可能性があると思って確認してみた。
「えっとね、宇宙空間を飛ぶものとか、大きな宇宙船みたいなのとかがあるみたい。」
「マジか?!飛ぶ種類の奴がいるのか・・・・それ地球の方に現れたらヤバいな!」
「ううん、今のところは大丈夫みたい。来るのにもう少し時間がかかるみたいだよ?でもあと3ヶ月で太陽系に到達するみたい。」
「どっちにしてもあんまり時間が無いじゃんか!」
「あのねタケルちゃん、ダイスケさんには向こうとつながっている場所をそれとなく伝えるようにするから、あまり時間がかからずに出発できるようになると思うよ?」純夏はとても重要な事をさらっと言ってのけた・・・・。
純夏・・・・ぱねぇな、まるで水晶玉覗いている魔女みたいだな・・・まぁ老婆じゃないけど。
「あれ?タケルちゃん今失礼な事考えなかった??」うわ、思考が純夏に読まれてるのか?!
やべ、「じゃ、とにかく俺は地球人組を鍛えつつ出発できる準備を整えておけばいいんだよな?」タケルは慌てて話題を変えた。
「もぉ、ごまかされた・・・・まぁいいけど・・・うん、そうだね、彼女達は元々運命の灯が弱いから気を付けてあげてね。」

「運命の灯?なんだそれ??」タケルは初めて聞く単語の意味がわからず、思わず純夏に訊く。
「ええと、彼女たちはほんとうだったら既に亡くなっているはずの人たちなのね。だけど、ダイスケさんやタケルちゃんがこの世界、エレミア星系に来て出会った事で時空の理にちょっとだけエラーが出たの。それでね、アメリカが横浜ハイヴを攻撃した時に使った爆弾が時空を歪ませた時に一瞬裂け目が出来て、こっちに飛ばされたんだ。」
「ああ、アメリカが横浜ハイヴ攻略の時に純夏が言ってた爆弾、五次元効果爆弾―G弾って言うんだけど、それを使った影響でその後の横浜一帯がずっと重力異常の発生する場所になっちまったんだよ。」
「うん、さっきも言ったんだけど、彼女たちはほんとうならそこで終わる運命だったんだけど、タケルちゃんがエレミア星系にいたから、そこに細い縁が出来て本当に低い確率だったんだけど、消滅しないで飛ばされたんだよ。」純夏の説明にタケルは納得した・・・だが。

「そうだったのか!・・・?じゃ俺はなんでこっちに飛ばされたんだ?」良く考えるとタケルもこっちに来ているのが不自然だという事に気が付いた・・・今さらなのだが。
「タケルちゃんはね、また2001年にループさせられる為に魂が移動していたんだけど、もうそこから外してあげたいと思って、力を振り絞って魂を掴んだら出来ちゃったんだよ。それでね、良くわからない存在に取り返されそうになったから、振り切って力いっぱい放り投げたら、そこがエレミア星系だったの。」
「そうか・・・だから今回はループしないでエレミア星系に来たのか!って力いっぱい放り投げるとかどんだけぞんざいなんだよ?」ひどい扱いを受けたタケルはジト目で純夏を非難する。
「うふふ、ごめんね?あの時は必死だったから・・・でもおかげでループから抜けられたでしょ?」純夏はドヤ顔で胸を張ってタケルを見下ろす。
「ぐぬぬ、純夏のくせに、エラそうに!・・・・・でもほんと助かったよ、ありがとうな。」
「エヘヘ、それほどでもないよ。」純夏は照れて少し赤くなっている。
「あ、そろそろ時間だから、わたし消えるね?あまり長時間こうしていると向こうに戻れなくなっちゃうから。」
「ああ、そうなのか。わかった!純夏、ありがとうな!また会えるよな?」
「うん、またこうやって来るからね!じゃね、ばいばい。」
そうして周囲がスーッと暗くなっていく・・・・。
 
 

 
後書き
さていよいよ反撃の狼煙があがるのでしょうか。
デュミナスは今回、結構な戦力を送り込んで来るみたいですよ。 
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