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八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる

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第百八話 プールサイドからその九

「表には出さないからね」
「そういう人なのね」
「うん、涙を見せるなとか」
 他の人にはだ、特に息子の僕にはだ。
「そうした考えみたいだね」
「ダンディズム?」
 僕のその話を聞いてだ、イタワッチさんは言った。
「それって」
「そうだろうね、親父流のね」
 何でもどんな時でも、痩せ我慢でもいいから笑って余裕があるというかクールでいろとか言っていた。それが多分親父のダンディズムだ。
「それに親父は手の平返しとかからかいとかしないよ」
「そうしたこともなのね」
「しないのね」
「そんなことはしないよ」
 そんな人間じゃない、間違っても。
「あれで気遣いもするから」
「そんなことを相手に言ったら」
 振られた人にだ、テレサさんは考える顔で述べた。
「言われた相手は忘れないわね」
「絶対にね」
 そうだとだ、僕もテレサさんに答えた。
「それが一番嫌なことだから」
「言われたら」
「心を傷付けられたら」
「もうね」
「痛みは忘れられないから」
 特に心のだ、僕もそれはわかる。
「恨みに思われるよ」
「軽い気持ちで言ってもね」
「自分は軽い気持ちでも」
 言われる方はそうじゃない、相手にとってそれは絶対に言われたくない心の傷なら軽いことでないことは間違いない。
 だからだ、Aさんにしてもなのだ。
「恨んで覚えてるよ」
「そんな覚えられ方はね」
「嫌ね」
 二人も言った、人に覚えられるにしてもとだ。
「恨まれて覚えられるとか」
「絶対に嫌よね」
「うん、覚えてもらうのなら」
 僕も思った、心から。
「笑顔で覚えていられたいよね」
「全くよ、恨まれるとかね」
「いい気持ちじゃないわよ」
「ましてやAさん相当傷付いたから」
「恨みどころじゃないでしょ」
「憎んでるでしょ」
「そこまでいってるわよ」
 二人はAさんの気持ちになってみた、確かにだ。
 そんな目に遭って心を閉ざした位だ、それこそ恨んでるどころじゃない。その心は憎しみにまで達しているだろう。
 だからだ、僕もAさんのことを考えるとだった。
「憎まれたくないよ」
「そうね、嫌なことを言ったら」
「それは自分に返ってくる」
「まさにそういうことね」
「Aさんに言った連中は」
「そうなるね、けれど憎んでばかりのAさんはどうなるのかな」
 その人のことも思った。
「先輩以外に心を支えてくれたお友達やいい人がいるっていうから大分ましかな」
「他にも支えてくれている人がいるのね」
「そうなの」
「うん、凄くいいお友達がいてくれて交際相手の人もいるのかな」
 この辺りのことは僕は知らない、何か先輩もこの人のことは話してくれなかった。 
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