風魔の小次郎 風魔血風録
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89部分:第八話 聖剣伝説その十二
第八話 聖剣伝説その十二
しかしここで。一つの問題があった。それは。
「それでだ」
まず劉鵬が口を開いた。
「次の将棋の試合だが」
「ああ、それだ」
蘭子も劉鵬に対して応える。
「今度の試合は誰が出るのだ?」
「まず夜叉からは二人らしいな」
「ああ、そうだ」
劉鵬は兜丸の問いに対して答えた。
「陽炎と妖水だ」
「あの二人か」
小龍はその名を耳にして顔を顰めさせた。
「妖水は八将軍の中でとりわけ血を好むそうだな」
「快楽追及者ってわけですね」
「それだけじゃない」
林彪が麗羅に答える。
「腕もかなりのものだ。刃物の使い方じゃ右に出る奴はいないそうだ」
「そうですか」
「こちらはもう一通り出たしな」
霧風も難しい顔をしている。
「試合に出ていないのは小龍だけだった」
「そうだったな」
その小龍が霧風のその言葉に応える。彼は白虎との闘いがあったがそれでも試合には参加していないのだ。
「御前と竜魔で考えていたんだよ」
劉鵬が小龍に述べる。
「けれどな。竜魔がこの状態じゃな」
「どうしたものか」
「じゃあ俺は」
またここで小次郎が名乗り出て来た。
「俺が行くぜ。この風林火山で夜叉の奴等ぶった斬ってやる」
「馬鹿、御前はサポートだろうが」
劉鵬がその名乗り出た小次郎に突っ込みを入れる。
「向こうもサポートに壬生がいるんだ。そっちをやれ」
「そうか」
「全く。とにかく誰を出すかだ」
「私が出るか」
霧風が名乗り出て来た。
「ここは」
「それでいいのか?」
「私はいい」
こう劉鵬に答える。
「妖水も気になるが陽炎もいる」
「あいつか」
「夜叉一族随一の頭脳の持ち主」
それが陽炎の評価であった。風魔の中においても。
「他の奴等とはまた違った意味で手強いぞ」
「策か」
劉鵬の目が険しくなった。
「あいつの策が出るか」
「出ないと思う方が愚かだろうな」
霧風もまたその目を険しくさせていた。
「夜叉の策謀の多くはあいつのものだからな」
「じゃあそんな奴ならよ」
小次郎が懲りずに話に出て来た。
「余計に俺のこの風林火山が必要じゃねえか。やっぱりここは俺が」
「御前の脳味噌じゃ駄目だ」
劉鵬がまたしても駄目出しをする。
「絶対に変なことになるから止めておけ」
「何だよ、全然信用がねえのかよ」
「信用以前に頭鍛えろ」
かなり無理なことを言う。
「相手には壬生もいるんだぞ」
「壬生!?」
壬生と聞いて小次郎の表情が止まった。
「あいつもいる。だからせめてな」
「何しろってんだよ」
「風林火山、まともに使えるんだろな」
「へっ!?」
こう言われると目を丸くさせたのだった。今度は。
「まともにって!?」
「まさか御前」
「小次郎君」
劉鵬だけでなく麗羅も呆れた顔になっていた。
「持っただけで言ってるんじゃ」
「全くこの馬鹿は」
兜丸も参戦してきた。
「ちょっとは素振りでもして修行しろよ」
「修行!?」
「木刀は持ってるだけじゃ駄目だ」
林彪は小次郎を咎めはしないが真顔であった。
「慣れないとな」
「そういえばそうだよな」
「御前、本当にちょっとは頭動かせ」
劉鵬もかなり呆れながら忠告する。
「全然動かないのか!?錆びてるんじゃねえだろうな」
「何ィ!?俺が馬鹿だっていうのかよ」
「それはさっきから言ってるだろうが」
劉鵬は呆れつつまた言う。
「わかったらさっさと素振りしろ、素振り」
「それもそうだな」
素直に頷くとすぐに立ち上がった。そしてそのまま部屋を出る。
「ちょっとやって来る」
「外は雨じゃないのか?」
「いや、降ってねえぜ」
障子を開けて小龍に答える。
「別にな」
「じゃあ好きなだけやれ」
「言われなくてもそうするさ」
そう述べて素振りに出る。霧風はそれを見届けてから呟く。
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