夢幻水滸伝
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第五話 出雲へその十一
「ここまで強い敵なくてよかったな」
「そうですな、ここまでは」
「大きな戦はなかったです」
「降る勢力が殆どでしたし」
「民も従ってくれてます」
「よかったわ、ほな社まで行こうな」
出雲に入ってとだ、中里はとにかくまずは弥生のいる社を目指していた。そうしてその出雲に入ったが。
進軍中に先陣から旗本が来てだ、中里に言って来た。
「前に妙な者がいました」
「妙な?」
「はい、赤くてやけに大きな馬に乗ってまして」
旗本はまずは馬から話した。
「中国の鎧と紅のマントと服を身に着けてまして」
「中国のかいな」
「両手にはそれぞれ戟を持ってます」
「何や、戟か」
「はい、戟です」
旗本は中里の怪訝な言葉に答えた。
「中国の武器の」
「ここ日本やけどな」
「それでも中国の具足や服で」
「戟かいな」
「そうですわ」
「けったいな奴やな」
中里はここまで聞いて自分が思ったことを素直に述べた。
「それはまた」
「多分星の奴やな」
鵺がここで言ってきた、ここでもだ。
「それは」
「それか」
「ああ、それでどうする?」
「星の奴やったら味方にしたら大きいな」
考える顔になってだ、中里は犬に答えた。
「それやったら」
「そこに気付いたか」
「気付くっていうかな」
「星の奴としてか」
「ああ、出来る限り頼れる仲間は欲しい」
こう考えてというのだ。
「そやから会おか」
「そうするか」
「ああ、そいつこっちに連れて来てくれるか?」
中里は鵺との話の後で旗本に言った。
「そうしてくれるか?」
「わかりました、ほな」
「はい、今から案内します」
「そうしてくれるか、進軍は続けるで」
その中華風の男が来るまでもというのだ、中里はこの間も社に向かうことを優先させていた。そしてだった。
金の鎧に白と緑の中華風の服、紅のマントを身に着けていた。赤く大きな馬に乗っている。馬の鬣も燃える様な赤だ。そして両手にはだ。
それぞれ一本ずつ戟を持っている、槍の刃の片方に三日月型の刃がある。中里はその戟を見て言った。
「方天戟か」
「そや」
男も言ってきた、面長で黒い髪を短く刈っている。目は丸く小さめで唇は薄いが口はかなり大きい。平たい感じの顔で何処か異装だ。兜は着けておらず長い飾りを着けている。
「知ってるやろ」
「三国志で呂布が使ってた武器やな」
「まさにそれや」
男もこう言ってきた。
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