風魔の小次郎 風魔血風録
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53部分:第五話 メッセージその十一
第五話 メッセージその十一
「おいおい、マジかよ!」
「五月蝿いぞ小次郎」
「だってよ、兜丸」
小次郎はその兜丸に対しても言う。
「項羽と小龍だけしか使えねえ白羽陣を白虎まで」
「あいつも八将軍だぞ」
劉鵬が驚く小次郎に対して言う。
「それがどうしたんだよ」
「何をしても不思議じゃないだろうが」
劉鵬が言うのはそれだった。
「相手の技を一度見て覚える位はな」
「ちっ、何て野郎だ」
「流石と言うべきか」
竜魔は至極冷静に今の白虎の羽根を見て述べた。
「俺達ですら真似できない白羽陣を一度見ただけで覚えるとは。不意討ちとはいえ林彪を倒しただけはある」
「風魔とはいえ褒めてもらい光栄だ」
羽根が舞う中で笑っている。
「このまま貴様等全員を倒したいところだが残念なことにそうはいかぬ」
「手前、逃げるっていうのかよ!」
「撤退するのも忍の技」
また小次郎に答える。
「ではこれでな」
「今度は!」
青い羽根を出して投げる。同時に赤羽根も。それで小龍を牽制したうえで姿を消したのだった。
「小龍!」
「追うぞ!」
「いや、それには及ばん」
小龍は小次郎と兜丸に答えた。至極冷静に。
「俺は何だ。コピーか?オリジナルか?」
「御前は御前だ」
竜魔が彼に言った。彼の後ろで腕を組みながら。
「それ以外の何者でもない。御前は小龍だ」
「そうだな。ならば白羽陣を万全に使える」
「その通りだ」
「わかった。兄者は兄者、俺は俺だ」
それも悟ったのだった。
「こだわることもない。俺は俺でいいのだ」
「!?何が言いたいんだよ」
「白虎、確かに貴様は見事だ」
既に姿を消している白虎に対して告げた。
「林彪を倒しただけでなく羽根まで使ってみせた。しかし」
「しかし?」
小次郎が問う。
「所詮はコピーだ。オリジナルではない」
「何が言いたいんだよ、一体」
ここで思わず前に出て白虎の追跡にかかろうとするが劉鵬に手を掴まれて止められた。
「その必要はない」
「どうしてだよ、おい」
「小龍に任せろ」
こう小次郎に言うのだ。
「いいな」
「任せるっていうのか」
「御前ここで動いたら今日飯抜きだぞ」
「何だよ、それって」
飯抜きと言われて思わず抗議する。
「俺は一食抜いたら死ぬんだぞ、鬼かよ」
「・・・・・・御前本当に人間か?」
劉鵬は一食抜いたら死ぬとまで言う小次郎をいぶかしむ目で見ながら問うた。
「モグラか何かじゃないだろうな」
「何で俺がモグラなんだよ」
「モグラは少しでも食べないと死ぬんだよ」
「すげえ生き物なんだな」
「とにかく今は大人しくしても」
兜丸も小次郎に言う。
「いいな」
「ちぇっ、わかったよ」
「兄者の白羽陣は相手の動きを的確に知らせる」
小龍は呟くようにして告げる。
「陣を組んだ時に相手の動きに合わせて動きな。だがこの小龍のそれはそれに関してはいささか弱くとも兄者のそれとは違った属性がある。それは」
屋敷の塀のところに目をやる。そこに羽根が数枚あった。白い羽根が。
「相手に付きその所在を知らせる。そう、そこだ!」
青羽根と赤羽根を数枚ずつ右手から放った。それは的確に白羽根を貫いた。
「うう・・・・・・」
「逃がしはしない。残念だったな」
「見事だ、小龍」
塀の上に白虎が姿を現わす。胸を貫かれていた。
「このまま去ろうと思ったが」
「急所を狙ったのだがな」
「ちっ、生きてやがるのかよ」
「むざむざやられるつもりはない」
屈み込みながらもまだ立っていた。
「また会おう・・・・・・」
こう言い残して姿を消した。だが白虎の敗北は明らかだった。
「項羽と林彪が一時離脱か」
「二人か」
竜魔と劉鵬は言い合う。
「夜叉は三人。数のうえでは互角だな」
「いや、それはすぐに崩れる」
しかし小龍は二人に対して言った。
「この小龍が来たからには夜叉八将軍に好き勝手はさせん。一人残らずこの羽根で倒してやる」
「羽根でか」
「そうだ、この小龍の羽根でな」
兜丸に対しても答える。白虎を退けた小龍は右手に羽根を持っていた。その青い羽根と赤い羽根を。紛れもなく彼の羽根であった。
第五話 完
2008・5・4
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