八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百七話 朝御飯の後でその五
「ドイツでは実際にね」
「痛風が多いな」
「ビールをやたら飲むし」
「その飲み方は特に駄目だな」
「痛風にはね」
この病気のことが念頭にあった、僕も。
「よくないよ」
「やはりな」
「うん、僕はなったことがないけれど」
そういえば僕もビールはあまり飲んでいない、何かワインなり焼酎なりだ。そうしたお酒の方を遥かによく飲んでいる。
「相当痛いらしいからね」
「私も聞いている、その話はな」
「わたくしもですわ」
留美さんだけでなく円香さんもこう言った。
「痛風の痛みは尋常なものではない」
「歩けなくなる程だとか」
「足の親指の付け根が痛むらしいな」
「万力で締められる様に」
「そして些細なことで痛む」
「それこそ風が吹いただけで」
「文字通りね」
その痛風という病名通りにだ。
「痛むっていうから」
「その様な食事をすることはだ」
留美さんはあらためて言った。
「しない方がいい」
「ビールに生卵を入れて飲む様なことは」
「明らかに痛風にだ」
「一直線だね」
「確実にそうなる、そもそもだ」
「そもそも?」
「ドイツ人は私のクラスにもいるが」
留美さんのクラスにもというのだ、何しろ世界中から留学生が来ていて先生、職員、生徒全体で半分程がそうなのがうちの学園だ。
「父上がそうらしい」
「痛風なんだね」
「朝からビールを飲んでいてな」
「ドイツとかじゃ普通らしいね」
「毎日朝から晩まで飲んでいるとだ」
そのビールをだ。
「痛風になるのも道理」
「そうだよね」
「しないに限る」
「じゃあ食欲がないなら」
「牛乳がある」
これが留美さんが出すものだった、ビールの代わりとして。
「欧州ならばだ」
「牛乳なんだ」
「牛乳にパンを浸すなり小さいものを入れてだ」
「それで飲む」
「それでいいではないか」
所謂パン粥でもというのだ。
「幾らビールが飲むパンといってもな」
「それでもだね」
「朝から飲んでそれから水代わりに夜まで、しかも毎日になるとだ」
「本当に痛風になるね」
「そうなる」
こう僕に言った、言い切った。
「少なくとも私は賛成出来ない」
「わたくしも。それは」
無意識のうちにだ、円香さんは自分の足を見た。痛風になれば最初に痛むという親指の付け根をである。
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