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風魔の小次郎 風魔血風録

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23部分:第三話 忍の掟その一


第三話 忍の掟その一

                      忍の掟
 夜叉姫の部屋。武蔵、壬生と八将軍達を前に控えさせた夜叉姫は己の机の上にある風魔からの果たし状を見ていた。武蔵が竜魔から受け取ったあの果たし状である。
「風魔九忍のうちの八人ですか」
「夢魔だけは名がありません」
 陽炎が右手の扇を扇がせながら夜叉姫に対して述べる。
「詳しい事情はまだわかりませぬが」
「ならばよい」
 夜叉姫はそれはよしとした。
「来たら来たらで数は互角。大した違いはありません」
「左様ですか」
「そうです。そして武蔵」
 今度は武蔵に顔を向けた。
「貴方の危惧通り風魔の者達が来ましたが」
「はい」
 武蔵もそれに答える。
「手は考えてありますね」
「無論。既に」
 言おうとしたその横から。雷電が出て来た。
「姫様、それには及びません」
「雷電」
「この雷電にお任せを」
 少し屈み剣呑な目で語るのだった。
「風魔の者達、一人残らず倒して御覧に入れましょう」
「また随分と大きく出たな、雷電」
「何が言いたい、黒獅子」
 口の左端を歪めて語る黒獅子に殺気立った目を向ける。
「俺では役不足だというのか」
「貴様の実力は認める」
 伊達に八将軍ではないというわけだ。
「しかしだ。貴様は八将軍になって間もない」
「むっ」
「しかも風魔九忍のうち八人だと。大言壮語だな」
「貴様、俺を愚弄するのか」
「心臓の鼓動が高まっているぞ」
 今度は闇鬼が雷電に言ってきた。
「闇鬼っ」
「突き進むのもいいが自重しろ。さもないと死ぬことになるぞ」
「くっ・・・・・・」
「まあ見ている分には面白いがな」
「そうだな」
 紫炎が白虎の言葉に頷く。
「観客としてはな」
「この舞台は。しかしだ」
 白虎はまた言ってきた。
「できれば奴等が揃う前に倒したいものだな」
「林彪と小龍だったな」
 紫炎はその二つの名を出した。
「奴等が来てはかなり厄介になるぞ」
「来れば来ればで結構だがな」
 二人の後ろの妖水は右手でヨーヨーを弄びながら述べた。
「敵が多い方が楽しいものだ」
「それでだ、武蔵」
 陽炎が武蔵に声をかけてきた。
「どちらにしろ手を打っておく必要がある。ここはだ」
「既に手は打ってある」
 しかし武蔵はこう言うのだった。
「不知火を行かせた」
「何っ」
「そういえば」
 皆今の武蔵の言葉を聞いて慌てて周囲を見回した。見れば確かに彼の姿はない。
「何時の間に」
「出たのだ」
「今度のボーリングの試合の援護に向かわせた」
「待てっ」
 陽炎が今の言葉を聞いてその目を鋭くさせた。
「そんな話は聞いていないぞ」
「あえて秘密にしていた」
「この陽炎に話さずにか」
 陽炎はそれが不満なようであった。
「参謀に対して話さないというのか」
「何時から御前が参謀になった」
 その陽炎に言うのは妖水だった。
「俺達百八人は全て姫様の下に対等な筈だが。その役目も」
「くっ・・・・・・」
「武蔵、それでだ」
 妖水は壁にもたれかかり右手でヨーヨーを弄び続けながら武蔵に問うてきた。
「不知火に対するのは誰だ」
「そこまではわからない。しかし」
「しかし?」
「風魔も然るべき者が出て来る筈だ」
「そうか、風魔もか」
 妖水は風魔と聞いてその口の端に酷薄な笑みを浮かべた。
 
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