風魔の小次郎 風魔血風録
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18部分:第二話 夜叉八将軍その六
第二話 夜叉八将軍その六
「来たか」
「どうしたんですか、小次郎さん」
「いや、ちょっと友達に挨拶して来ようと思ってさ」
「お友達ですか」
「まあそんなところ」
こう述べて誤魔化す。
「それじゃあちょっと」
「そのお友達ですけれど」
事情を知らない姫子の言葉はおっとりしたものだった。立ち上がる小次郎に対しての言葉だった。
「よかったら私にも紹介して下さいね」
「いや、それはちょっと」
だが小次郎はその言葉には苦笑いをして首を捻る。
「難しいかな、やっぱり」
こう言い残してスコアボードの裏に回る。そこには武蔵と壬生、八将軍が揃っていた。狭く周りには鉄も見える粗末な造りのプレハブを思わせる場所であった。そこに彼等が揃っていた。
「へえ、雁首揃えてお出ましかよ」
小次郎は右手に木刀をかついでややガニ股でやって来た。その顔はにやにやと笑っている。
「夜叉八将軍かい?」
「ほう、流石に我等の名前は知っているか」
「風魔だけはあるということか」
「まさか全員でこの小次郎様に相手しようっていうのか」
自信に満ちた顔で彼等に問う。
「いいねえ。まっ、それだけ俺が強いっていうわけだけれどな」
「言ってくれるな」
今の小次郎の言葉に黒獅子がその指をボキリ、と鳴らす。
「この黒獅子が直接潰してやるか」
「いや、俺がだ」
雷電が出て来た。
「黒焦げにしてやる。風魔の小僧」
「まあ待て」
しかしその二人を陽炎が制止する。
「今は我等は観客だ」
「むっ」
「どういうことだ、陽炎」
「武蔵に見せ場をやったのだ」
決して期待する目ではなかった。酷薄ささえ感じられる冷徹な目で彼を見ての言葉であった。
「ここは。見せてもらおうか」
「頼むぞ、武蔵」
壬生は率直な言葉を武蔵に向けた。
「ここは」
「わかっている」
「おっ、この前のサッカーの試合の時の奴か」
小次郎も壬生に気付いた。
「どうやら大丈夫みてえだな」
「生憎あの程度で倒れる私ではない」
そうは言っても目は怒りに燃えていた。
「この傷が癒えれば借りは返す」
「まっ、その前に俺がここでこいつ等全員叩きのめしてやるけれどな」
「貴様にそれができるか?」
武蔵は長剣を持ちながら述べる。
「この飛鳥武蔵を倒すことが」
「飛鳥武蔵か」
その名を呟いた小次郎の目が光る。
「名前は前から聞いているけれどな」
「そうか」
「まさかここでこうして会うとは思わなかったぜ」
「一つ言っておく」
長剣を動かしながら小次郎に対して告げる。
「何だ?」
「覚悟はいいな」
その言葉が進むと共に彼の全身をまとう気が大きくなってきていた。
「この飛鳥武蔵、敵に対しては一切の容赦はない。行くぞ」
「なっ!?」
構えた武蔵から小次郎が感じたものは。ただの気配ではなかった。
彼がこれまで感じたことのない気だった。その恐ろしいまでの闘気を前にして小次郎も顔を強張らせる。
「こいつ・・・・・・できる」
「では参る」
構えた武蔵が一歩すっ、と前に出た。
「風魔、覚悟するのだな」
「くっ、負けてたまるかよ!」
小次郎も構えた。右肩から剣を下に向けて構える。あえて武蔵と同じ中段は取らなかった。
「ここで手前を倒して他の奴等も倒しておくんだからな!」
「できればな」
その言葉と共に武蔵が一歩前に動いた。すると突きが小次郎に放たれた。
「うわっ!」
小次郎はその突きをすんでのところでかわした。速いだけではなかった。その威力もかわした彼の頬を風圧で切り裂く程であった。小次郎は己の頬を流れる血を見て冷や汗をかく。
「何テ攻撃だ。まともに受けていたら」
「今のをかわしたか」
武蔵は己の突きをかわした小次郎に対して述べる。目がやや鋭くなっていた。
「流石だな。壬生を退けただけはある」
「言っただろ。俺一人でかたをつけるってな」
「では。やってみるがいい」
言いながら一旦間合いを離してきた。
「この飛鳥武蔵を倒してな」
今度は上から下に切ってきた。小次郎はそれを己の木刀で受け止める。それから左から右に横薙ぎに払うがそれはあえなくかわされた。
「身のこなしも万全ってわけかよ。ならよ!」
さらに攻撃を仕掛ける。今度は上から唐竹割だ。だがここで。
切ったと思ったその瞬間に武蔵の姿が消えた。小次郎は思わず周りを見回す。
「何っ、何処だ武蔵!」
「ここだ」
後ろからだった。その声と共に攻撃が来た。
「うわっ!」
その攻撃は上から来た。転がって慌ててかわす。何とか攻撃をかわしたがまた来た。横に縦に縦横に攻撃を繰り出してくる。時折その手の中で長剣を振り回す。それからまた攻撃を出してくる。小次郎はそれを交わすので精一杯だった。しかしその中で何とか攻撃を出した、しかし。
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