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風魔の小次郎 風魔血風録

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143部分:第十三話 暖かい風その二


第十三話 暖かい風その二

「聖剣の力は互角の筈だ、それでどうして」
「貴様は何か勘違いしているな」
「何っ!?」
 今の武蔵の言葉に顔を向ける。
「どういうことだ、それは」
「今言ったまでのことだ」
 その言葉は冷静なままであった。
「その所有者の技量はそれぞれ違うということだ」
「俺が手前より劣るっていうのかよ」
「腕をあげたのは事実」
 それは認める武蔵であった。
「だがこの武蔵に勝てるにはまだだ」
「ちいっ!」
「しかし。それでもこの威圧感」
 小次郎から今まで彼が感じたことがないものも感じているのも事実だった。
「壬生を倒した頃からもしやと思っていたが。あの時感じたのはこれか」
「これ!?何言ってるんだ手前はよ!」
「この男放っておけば恐ろしい男になる」
 武蔵は見抜いていた。
「風魔を背負うだけではない。何時か何か途方もないことまでしかねぬ」
「ああ、それをやってやるさ!」
 小次郎もその言葉を受けて叫ぶ。
「武蔵!手前を倒すことをな!」
「それはさせん」
 黄金剣を中段に構えて応える。
「少なくともこの闘い。勝たなければならん」
 この時武蔵の目に。小次郎以外の者も映ったのだった。
「何があろうとも。死ね!」
「来たか!」
「飛龍覇皇剣!」
 武蔵の渾身の突きが放たれた。
「これで決める。覚悟しろ!」
「くっ、速い!」
「小次郎さん!」
「小次郎!駄目か!」
 姫子と蘭子は小次郎に対して叫ぶ。最早間に合わないかと思われた。だがここで小次郎は。かわすことが間に合わないと見るとすぐに別の動きに移ったのだった。
「かわすのが駄目ならよ!」
「むっ!」
「こうするだけだ!俺も行くぜ!」
 何とここで風林火山を振ってきたのだ。それと共に叫ぶ。
「喰らえ、風魔烈風剣!」
「何だと!ここでか!」
「御前がそう来るなら俺もやってやるだけだ!」
 これが彼の考えだったのだ。
「手前の飛龍覇皇剣と俺の風魔烈風剣、どっちが強いか勝負だ!」
「言うか、この俺の剣に勝てる者なぞ」
「それがこの俺だ!」
 少なくとも心では負けていない小次郎だった。
「今ここでな!それを手前に見せてやるぜ!」
「やらせん!」
 二人の技がぶつかり合う。死闘も今正念場を迎えていた。そしてこの頃絵里奈は。自室のベッドの中で呻いていたのであった。
「お兄ちゃん・・・・・・」
「絵里奈ちゃん・・・・・・」
「やはりな」
 看護婦も医師も彼女の側に座り沈痛な顔で彼女を見守っていた。
「もう駄目かと思ったが」
「駄目だったのですか」
「誰にも言えなかった」
 医師はその沈痛な顔で看護婦に対して語る。
「お兄さんにもな」
「そうだったのですか」
「私は・・・・・・臆病な男だ」
 また語る。
「このことを誰にも告げられずに今はこうして」
「もう・・・・・・無理なんでしょうか」
「・・・・・・・・・」 
 今度は看護婦の言葉に対して首を横に振るだけだった。もうそれしかできなかった。絵里奈の命の炎が今消えようとしていたのであった。
 武蔵の技と小次郎の技がぶつかり合った。それにより双方吹き飛び合う。だがそれでも二人は起き上がる。まだ闘えたのである。
「まだだ・・・・・・」
 起き上がった小次郎は明らかにダメージを受けていた。制服の所々が破れ血が滲んでいる。しかしそれでも立ち上がったのである。
「まだやれるぞ俺は」
「俺もだ」 
 そして武蔵も。彼もまたあちこちから血を滲ませていたがそれでもだった。立ち上がってみせたのである。
「敗れるわけには・・・・・・何があっても」
「手前、どうしてそこまで」
 小次郎はここで武蔵の飽くなき闘いへの執念に気付くのだった。
「闘いにこだわる、どうしてなんだ」
「貴様に言うつもりはない」
 こうは答える。しかしであった。ここで彼の過去のことが走馬灯の様に思い浮かぶのだった。
 かつて普通に学校に通っていた頃だった。廊下を歩く武蔵にクラスメイト達が教室の窓から罵るのだった。
「おい化け物!」
「御前何でここにいるんだよ!」
「この学校から出て行けよ!」
「・・・・・・・・・」
 罵られ彼等に目をやる。その目は無意識のうちに黄金色に輝いている。その目を見て彼等はさらに言うのであった。
 
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