風魔の小次郎 風魔血風録
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141部分:第十二話 聖剣の真実その十五
第十二話 聖剣の真実その十五
「もう」
「ああ、わかってるさ」
その二人に顔を向けて応える。
「行くか、勝ちにな」
こう言って風魔の兄弟達に背を向けて最後の戦場に向かう。兄弟達はその彼を静かに見送る。風が一陣起こりそれが彼等の間を舞う。それは暖かい風だった。
その暖かい風を受けてから誠士館に入り中を進んでいく。迷路の様に複雑なその中を進んでいき果てにある部屋の中に入る。その部屋こそが夜叉姫の部屋であった。階段で段になっておりその上に夜叉姫の座があり後ろには巨大な般若、即ち夜叉のシンボルが飾られている。夜叉の本陣に相応しく暗いそれでいて不気味な光が差し込んできている部屋だった。
「ここかよ」
「そうだ」
小次郎に武蔵が答えた。
「この部屋だ。ここで風魔と夜叉の決着をつける」
「俺と御前のな」
「言っておくが手加減はしない」
冷静な顔で小次郎を見据えつつの言葉だった。既に二人はそれぞれ部屋の左右に位置して対峙し夜叉姫は魔矢を傍に置き己の座に座っている。姫子と蘭子は部屋の隅で二人の対峙を見守っている。
「小次郎、貴様を倒す」
「それはこっちの台詞だぜ」
二人はそれぞれの聖剣を構えて睨み合いをはじめた。最後の闘いの幕開けだった。
「壬生より授かったこの黄金剣で貴様を倒す」
「黄金剣っていうわりにはよ」
構えながら武蔵に対して告げる。
「随分と輝きが鈍いじゃねえのか?」
「何っ!?」
「鈍いつってんだよ」
不敵な笑みと共に武蔵にまた言う。
「その輝きがよ」
そう言った瞬間だった。何とその剣が。不意に輝きだしたのだ。
「むっ!?」
「な、何っ!?」
持っている武蔵も小次郎も。姫子達も黄金剣の輝きに思わず声をあげたのだった。
「蘭子さん、あれは一体」
「まさか・・・・・・飛鳥武蔵は黄金剣の正統な所有者」
蘭子が意識したのはそのことだった。
「それが影響しているというのか」
「影響・・・・・・それでは」
「はい、それです」
強張った顔でその輝きだした黄金剣を見つつ姫子に答える。その間にも黄金剣は輝きを増し何時しか脱皮するように薄皮が剥がれていっていた。そしてそこから姿を現わしたのは。
真の輝きを持つ剣だった。黄金剣、今その真の輝きを見せてきたのである。
「ま、まさか」
小次郎はその黄金剣の輝きを見つつ呆然として言うのだった。
「それが黄金剣の真の姿だっていうのかよ」
「おそらくはな」
武蔵もそれが真だとは思わっていなかった。しかし今己が見ているものが真であるということもわかっていた。他ならぬ己が持っているものだからだ。
「今までとは違う。持っているだけでこの身体に力が溢れてくる」
「くっ、それが黄金剣の力かよ」
「小次郎」
その力を感じ取りながらまた小次郎を見据えてきた。構えは中段だった。
「今ここで貴様を倒す。いいな」
「だからそれは俺の台詞だって言ってんだろうがよ」
小次郎も構える。今二人の聖剣の正統所有者達が対峙する。最後の闘いが幕を開けたのだった。
第十二話 完
2008・8・20
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