夢幻水滸伝
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第三話 都へその十六
「中原君には大砲隊を率いてもらうつもりや」
「やっぱりそうか」
「陸の方のな、海は海で指揮するのおる」
「ひょっとしてそれは」
「私や」
帝国海軍の軍服を思わせる黒を基調として手首のところに太い金モールを二本巻いた男がいた、肌はやや青くよく見れば耳が鰭に似ている。
「水軍、海軍って言うてもええけど私が率いてる」
「その格好や」
「これでわかるやろ」
「自分が水軍、つまり海軍を率いてるんやな」
「そや、名前は吉川明文。八条学園高等部水産科の三年や」
吉川は自分のことも名乗った。
「この勢力の海軍を任されてる、星は天寿星や」
「そうか、それで神具は」
このことはだ、中里は自分から問うた。
「何や」
「双眼鏡と海図と羅針盤や」
「その三つか」
「そや、双眼鏡は海や水なら何処までも見える」
「千里眼やな」
「陸は海程やないが遠くまで観られる」
そうしたものだというのだ。
「海図は海と陸のある程度なら何処でも地形、海底から山の高さまでわかって災害や敵やモンスターの場所までわかる」
「ええ海図やな」
「開いたらな、それぞれの場所までわかるし空とかのことも立体的に出る」
「それはええな」
「そして羅針盤は自分の位置も方角もわかる」
「その三つでやな」
「海では完璧に戦えるんや」
「そうか、それやったら海では無敵やな」
まさにとだ、中里もそのことを聞いて唸った。
「海は最強か」
「空の船も指揮も出来るしな」
「海図と羅針盤はそっちでも使えるんやな」
「そや、ただ私自身が戦うとや」
その場合はというと。
「普通の剣とか位しか使えん」
「そっちの神具はないか」
「あと泳げるけどな、マーマンやし」
「人魚やな、けど人魚っていうても」
中里はここで吉川の脚を見た、黒い軍服のズボンに覆われている。その脚を見ればごく普通の脚にしか見えない。
「脚は普通か、それに陸におるし」
「この世界の人魚は脚変えられるんや、変えろって自分が思ったらな」
「そうなんか」
「確かに水の中が一番やけど陸でも普通に生活出来る」
「成程な」
「そやから心配無用や、あと下半身が魚になったら海で何時までも泳げる」
それが可能だというのだ。
「泳ぎは河童にも負けんで」
「流石人魚ってことか」
「そや、それで海は任せてもらってる」
見れば鋭利な整った顔だ、面長で目は切れ長である。黒髪は短く刈っていてスマートな長身が軍服によく似合っている。海軍士官らしい外見だ。
「船も今よおさん建造中やしな」
「そうしてるで、実際に」
ここでまた芥川が言う、そしてだった。
最後に赤と黄色の陣羽織、青と紫の具足、橙も赤も青もある派手な柄の服を着た背の高い女が笑って言って来た。眉は太めで赤髪は収まりが悪く後ろでおさげにしている。口は大きく白い歯が見えている。目は明るく右手には馬鹿でかい槍がある。
ページ上へ戻る