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風魔の小次郎 風魔血風録

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134部分:第十二話 聖剣の真実その八


第十二話 聖剣の真実その八

「それではだ。はじめるか」
「一対一ではじめていく」
 武蔵の言葉だった。
「まずは私だ」
 壬生が最初に前に出て来た。
「相手は。小次郎」
「やっぱり俺かよ」
 壬生が出て来たところでそれは察していた小次郎だった。
「俺しかねえってことかよ」
「そうだ。貴様の風林火山と私の黄金剣」
 言いながら右手に持っている黄金剣を前に突き出す。
「今日こそどちらが上か決めるのだ」
「そして俺の相手はだ」
「俺か」
 武蔵が声をあげたところで竜魔が彼に応えた。
「この独眼竜竜魔を相手に望んでいるな」
「そうだな。同じサイキックソルジャーだ」
 このことが大きな決め手となっていたのだった。
「相手にとって不足はない」
「不足はないか。それではだ」
 お互いに前に出る。そのうえで見合う。
「その申し出受けて立つ。いいな」
「行くぞ」
 二人もまた木刀を抜き向かい合う。そして他の者達もそれぞれ構える。今風魔と夜叉の闘いが本格的にはじまったのだった。それはそれぞれの意地をかけた一騎打ちであった。
 だがその中で陽炎だけは。一人神殿の前に立ち扇を弄んでいるだけだった。その彼に対して同志の一人が彼に声をかけてきた。
「陽炎、いいのか」
「何がだ?」
「貴様だけ相手がいないではないか」
 彼が問うのはこのことだった。
「それでもいいのか?」
「こちらは十人、向こうは九人」
 上を見上げてとぼけたような顔をしてみせる。
「ならば仕方があるまい。貴様等と同じく見ているだけだ」
「見ているだけか」
「だが。仕事がないわけではない」
 しかしこうも言うのだった。
「仕事はな。あるのだ」
「仕事!?何だ」
「そろそろだ」
 ここで視線を前に戻してみせた。その視線は強いものだ。
「姫様があの文を読み解かれるのは」
「夜叉姫様がか」
「少し席を外す」
 そのうえでこうも言ってみせた。
「それぞれ生半可な実力ではない。闘いは容易には終わらぬだろうからな」
「それはな」
 夜叉の者もそれはわかったのだった。今風魔も夜叉もそれぞれの力と技を尽くして闘っている。羽根も炎も雷も乱れ飛び剣が乱舞していた。誰もがその技を出し合っていた。
「喰らえっ!」
「受けよっ!」
 その中でもとりわけ小次郎と壬生、竜魔と武蔵の闘いが熾烈だった。聖剣同士が打ち合い能力と能力がぶつかり合う。竜魔の右目が青く、武蔵の目が黄金色に光っていた。
「やらせんっ!」
「無駄だっ!」
 竜魔が放った青いエネルギーの球体は武蔵の長刀の横薙ぎによって打ち消された。
「この程度の攻撃で。この武蔵を倒せるものか」
「くっ、やはりそれだけの力があるか」
「忍としての力は貴様の方が上だ」
 攻撃を打ち消したうえで告げる竜魔だった。
「だがそれでも。サイキックソルジャーとしてはな」
「貴様の方が上だというのか」
「そうだ」
 彼ははっきりと言い切ってみせた。
「その飛鳥武蔵の真の力、見せてもらうぞ」
「見せるだと?」
「そうだ。あの時貴様が見せたその技」
 武蔵の目の光がさらに強くなる。黄金色の光がこれ以上になく強くなっている。
「今それを使わせてもらおう」
「何っ!?まさかそれは」
「そう、それだ」
 応えると同時に両手に持った剣を大きく振り被ってきた。
「行くぞ、死鏡剣!」
「うっ!」
 振り下ろしたその剣から鏡が放たれる。その鏡は縦軸で回転しつつ竜魔に対して向かう。それで竜魔を捕らえ封じようというのだ。
「技は己だけのものとは思わないことだ」
「俺だけのものではないというのか」
「そうだ」
 技を放ち終えた武蔵は言い切る。
「この武蔵一度見た技は覚えられる。このことをよく覚えておくのだな」
「だが。所詮は人真似」
 元々竜魔の技だ。だからかわせると思っていた。しかしであった。
「むっ!?」
「逃げられはしない」
 何と鏡の中に封じられてしまったのだ。鏡の中に強張り驚愕した彼がいた。
「竜魔!」
「逃げろ!」
「無駄だ」
 それを見て驚愕する風魔の者達と武蔵の言葉が交錯する。
「サイキックソルジャーとしてはこの武蔵の方が上だと言った筈だ」
「うう・・・・・・」
「忍としては貴様の方が上だとしてもだ。この死鏡剣はサイキックソルジャーの技だ」
 だからこそ風魔では竜魔しか使えないのだった。
「ならば。この武蔵の方が強いのは道理だな」
 言いながらまた剣を振り被ってきた。
 
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