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風魔の小次郎 風魔血風録

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125部分:第十一話 武蔵の力その十


第十一話 武蔵の力その十

「小次郎」
「へっ、闘いの途中で悪いがってやつだな」
「そういうことだ。勝負は預ける」
 彼はあらためて小次郎に告げた。
「また会おう。それでいいな」
「わかったぜ。じゃあまたな」
「では壬生」
 また夜叉の者が彼に声をかけた。
「戻るぞ、誠士館にな」
「うむ」
 こうして彼等は姿を消した。小次郎は一人残ることになったがまずは彼の耳に後ろから歓声が起こった。それは試合場の中からだった。
「姫様の声もあるな」
 それがどういうことか彼にはすぐにわかった。
「白凰が勝ったな。よし」
 そのことにまずは気分をよくさせた。だがすぐに。
 何かを察した。それを察して彼は。顔を真っ青にさせてしまったのだった。
「何だ、この感触は」
 すぐに森の方を見た。
「あそこか・・・・・・まさか」
 それを察してすぐに姿を消した。門には誰も残らなかった。しかし森では今。麗羅と武蔵が激しく睨み合っていたのであった。
「あの兜丸さんを退けるなんて」
「あの一撃をかわすとはな」
 二人はそれぞれの口で述べていた。
「やはり飛鳥武蔵、噂通りのことはある」
「風魔九忍の力、伊達ではないのだな」
「けれど仇は討つ」
 麗羅の目に炎が宿った。
「この僕が。行くぞ飛鳥武蔵!」
「来い」
 武蔵はその場に立ち麗羅の言葉を受けた。
「この武蔵、相手が誰であろうと決して背を向けることはない」
「そうか。なら!」
 すぐに左手を前に掲げてみせた。そこから巨大な紅蓮の火球を出す。
「炎か」
「そうだ。あの紫炎さえ退けた僕の炎」
 その自信はあった。
「風魔朱麗炎。受けろ!」
 技の名を叫ぶと共に炎を撃ち出した。それは一直線に武蔵に対して向かう。
「この炎を避けられた奴はいない!」
「いないのか」
「そうだ。御前の失敗は唯一つ」
 激しい敵意をその美しい顔に見せて叫んでいた。
「僕を本気にさせたことだ。覚悟しろ!」
 その言葉と共に紅蓮の炎が武蔵に炸裂する。そしてすぐにその身体を覆い込んでしまった。
「この炎は」
「どうだ、僕の炎は」
 麗羅は武蔵が炎に包まれるのを見て勝利を確信していた。
「そのまま焼き尽くされろ。今ここでな」
「幻術か」
「何っ!?」
 今の言葉は麗羅にとっては意外なものだった。
「それは一体どういう意味だ」
「確かにあの紫炎を退けただけはある」
 それは認めるのだった。
「しかしだ。この武蔵には通用しない」
「馬鹿な、僕の炎を」 
 紅蓮の炎に包まれながらも表情を変えない武蔵を驚愕の目で見ていた。
「無効化するなんて」
「俺を倒したければ赤い炎では無理だ」
 麗羅に語りながらそのままゆっくりと前に出て来た。
「白い、極限の炎でなければな」
「くっ!」
「これで終わらせる」
 前に出た武蔵の姿が消えた。
「この一撃でな」
「何のっ!」
 麗羅も伊達に風魔最強の忍の一人ではなかった。咄嗟にその場から跳ぶ。しかしそれでも武蔵の剣を完全にかわすのは不可能だった。
 彼は右脚にそれを受けた。飛龍覇皇剣が貫いたのだった。丁度それは小次郎が受けた時とほぼ同じ状況であった。
「やはりかわしたか」
「うう・・・・・・」
「三人が三人してこの武蔵の剣を急所はかわすとはな」
 その剣を抜きながら述べる。麗羅は剣が抜けるとすぐに一旦姿を消し間合いを離してそこに移るのだった。左膝をつき何とか顔を武蔵に向けてはいる。
「風魔恐るべしと言うべきか」
「そうそう簡単にやられるわけにはいかない」
 麗羅は痛みに必死に耐えながら武蔵に言葉を返した。
「僕にも。意地がある」
「意地か」
「そうだ。死ぬわけにはいかない」
 それをまた告げた。
「何があっても。皆の為に」
「それは俺も同じこと」
「何っ!?」 
 今の武蔵の言葉に意外そうな顔になった。
「それは一体どういうことだ」
「それを言うつもりはない。しかしだ」
 武蔵はここでまた剣を構えてきた。長剣がそれに煌く。
「ここで止めを刺させてもらう。覚悟しろ」
「うう・・・・・・」
 ダメージがあまりにも大きく遠くへ跳ぶことはできなかった。最早武蔵の攻撃を防ぐことも無理だ。彼の命運はもう決まったかに見えた。
 
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