風魔の小次郎 風魔血風録
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123部分:第十一話 武蔵の力その八
第十一話 武蔵の力その八
対峙するがまずは両者睨み合うだけだった。互いに隙を窺っていた。
しかしだった。兜丸が先に動いた。その剣を横薙ぎにしてきたのだ。
「むっ!?」
「喰らえ!」
振るうその剣に何かが宿っていく。それは。
稲妻だった。青い稲妻が木刀に宿る。そしてそれは武蔵に対して放たれたのだった。
「この兜丸の稲妻を受けて無事でいられると思うな!」
「確かにな」
青い稲妻が放たれた。それは武蔵に一直線に向かう。
「あの雷電を退けただけはある。見事なものだ」
「それを受けて倒れろ!」
兜丸は叫ぶ。
「まだこっちには切り札もあるしな!」
今度は木刀を大地に突き刺した。そのうえで大地に稲妻を走らせようとする。
「受けろ!」
「させん!」
兜丸が雷を放つより一瞬早かった。武蔵は前に跳びそのまま剣を突き出す。兜丸はその突きを咄嗟に避けた。しかしだった。
「くっ!」
「流石と言うべきか」
かわしはした。だが完全ではなかった。その突きは兜丸の左腕を貫いていたのだ。焼け付くような激しい痛みが彼の左腕を襲う。
「今の一撃をかわすとはな」
「この俺の雷より早いだと・・・・・・」
「雷使いは確かに手強い」
武蔵もこれはわかっていた。二人は既に間合いを離している。兜丸は左腕を抑えつつ何とか武蔵と間合いを離しているのだった。
「しかし弱点もある」
「弱点だと。この兜丸に」
「そうだ。これは雷電も同じだがな」
今は同志である男の名前も出した。
「雷を放つ瞬間全神経をそこに集中させる」
「その通りだ」
「雷を操るのは難しい」
今度はその理由について言及してみせた。武蔵はそこまでわかっていたのだ。
「操ることに失敗すれば己に跳ね返る。だからこそ神経を集中させる。そうだな」
「そこまでわかっていたというのか・・・・・・」
「如何にも。だからだ」
武蔵はさらに言葉を続ける。
「その隙を突けばいいのだ。それだけだ」
「不覚・・・・・・そこまで知っていたか」
「だが。見事だ」
武蔵はここでは兜丸を褒めてみせた。
「今は心臓を狙っていた。それをかわしてみせるとはな」
「戯言を。この傷では」
「闘うことはできないというのだな」
「無念・・・・・・」
歯噛みしての言葉であった。
「これ以上の戦闘は無理か」
「兜丸さん」
しかしここでもう一人の声が来た。
「その声は」
「後は僕に任せて下さい」
麗羅であった。紅蓮の炎が兜丸の前に出てそこから彼が出て来たのだった。口元は微笑んでいるがそれでも視線は強いものだった。
「今は」
「だが俺は」
「今の傷では無理です」
麗羅もまた彼の傷のことを言うのだった。
「ですからここは」
「任せろというんだな」
「はい。是非共」
兜丸を護り背を向けたまままた述べたのだった。
「ここはそれで御願いしますね」
「わかったって言うしかないんだな」
兜丸はそれがかなり無念そうではあった。
「ここはな」
「御願いします。それでは」
「ああ。飛鳥武蔵」
今度は忌々しげに武蔵を見据えての言葉だった。
「決着は今度だ。去らせてもらう」
「そうするといい。だがこれで貴様は当分闘えまい」
武蔵が今度指摘したのはそこであった。
「風魔、これで一人欠けたな」
「くっ・・・・・・」
「残り八人だな」
「それは大した問題じゃないですよ」
麗羅がここで武蔵に対して言い返した。
「どういうことだ」
「ここで貴方も倒れるからですよ」
やはり兜丸を護ったまま言うのだった。
「それでおあいこですから」
「頼む、麗羅」
何時になく真摯な兜丸の声だった。
「俺が油断したばっかりにな」
「いいですよ。それより」
その兜丸を気遣ってまた言う。
「早く撤退して下さい。そして傷を」
「わかった。そうさせてもらう」
「御願いします」
こうして兜丸は雷と共に姿を消した。麗羅はそれを背に受けつつあらためて武蔵と対峙するのだった。既にその全身からは激しい殺気を放っている。
「次の相手は僕ですね」
「風魔八忍の一人麗羅だな」
「如何にも」
まずは名乗るのだった。
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