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風魔の小次郎 風魔血風録

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121部分:第十一話 武蔵の力その六


第十一話 武蔵の力その六

「切るのは上手いからな」
「そうですね。ところでその小次郎君は?」
 麗羅はその小次郎について気付いた。
「何処に行ったんだろう。姿が見えないけれど」
「あいつは外だ」
 兜丸はすぐに麗羅に答えてみせた。
「外でここの警護に当たっている。夜叉の奴等の小細工に対してな」
「そうですか。それでいないんですね」
「ああ。それで麗羅」
 あらためて真剣な顔になって麗羅に声をかけてみせてきた。
「はい?」
「もうすぐ来るぞ」
 料理を作るのを見ながら麗羅に声をかけていく。
「あの男がな」
「飛鳥武蔵」
「壬生は小次郎が受け持つ」
 もうこれは決まっているのだった。
「俺達はあいつだ」
「夜叉八将軍が全員戦線離脱してもあの男がいるんですね」
「連中もそろそろ戻って来るだろうがな」
 彼等とて八将軍は侮ってはいない。既に復帰が近いことも読んでいるのである。つまり八将軍との再戦は考慮に入れているのだ。
「だがあいつをここで倒せば大きいぞ」
「ええ。夜叉の戦力がかなり落ちます」
 麗羅も真剣な顔になっていた。
「ですからここは何としても」
「まずは俺が行く」
 すっとキッチンに背を向けて姿を消そうとしてきた。
「あいつに俺の雷を浴びせてやる」
「じゃあ僕もすぐに」
 麗羅はまだキッチンを見ながら兜丸に答えた。
「行きますから」
「二対一か。問題はないと思うがな」
「いえ、一対一です」
 ここで麗羅は兜丸にこう訂正を入れてきた。
「今回は」
「一対一か」
「忍はそうでしょう?」
 訂正の根拠を忍に求めたのだった。
「勝負は常に同じ数、ですから」
「そうだったな。じゃああいつを倒すのは俺だ」
「期待していますよ」
「ここは頼む」
 最後にこう言って姿を消した。
「勝負が終わる頃にはケリがついているな」
「ええ」
 まずは兜丸が戦場に向かうのだった。この時小次郎は試合場の門のところに一人立っていた。人通りはなく今は風林火山を右肩に担いで立っているだけであった。
 その小次郎の顔を見ると。これまた随分と不機嫌そうなものであった。しかもぶつぶつと不平を述べてさえいた。
「ったくよお」
 不平は外に出ていた。誰も通らない、後ろに試合場になっている立派な建物と澄んだ青い空を持ちながら小次郎は不平を続けていた。
「姫ちゃんがいるのに俺は外で門番かよ。何なんだよ」
 姫子に会えないのが不満であるのだ。実に素直である。
「任務とはいえ。迷惑なことだぜ」
「私にとってはそうではないがな」
 ここで前から男が来て小次郎に応えてきた。
「好都合だ。ここに貴様がいるということがな」
「へっ、暫くぶりだな」
 壬生だった。その右手にあの黄金剣を持って立っている。強い光を放つ目で小次郎を見据えている。
「元気そうで何よりだぜ」
「生憎だが私とて倒れるわけにはいかん」
 言いながらその黄金剣を前にかざす。
「小次郎、貴様を倒すまではな」
「やるってんだな」
「無論」
 返答は決まっていた。その返答と共に剣を構える。
「来い。構えていない者に振るう剣はない」
「そうかよ、それはこっちだって同じだぜ」
「同じか。ならば話が早いな」
「ああ、そうだな」
 小次郎もまた風林火山を構えた。これで二人は完全に対峙した。門の前で小次郎が右、壬生が左に位置していた。二つの聖剣もまた向かい合っていた。
「壬生」 
 小次郎がまず壬生の名を呼んだ。
「何だ?」
「御前はどうしても俺に勝つつもりなんだな」
「否定するつもりはない」
 激しい敵意と共に答えてきた。
「あの時の敗北、決して忘れられぬ」
「それは俺も同じなんだがな」
「武蔵か」
「ああ、そうさ」
 小次郎もまた激しい敵意を燃え上がらせていたのだった。
「御前もあいつも絶対に倒してやる」
「武蔵を倒したいのならばだ」
 すっと一歩前に出て来た。摺り足で。
 
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