レーヴァティン
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第三話 生きるか死ぬかその九
「その時はな」
「そうだな、だが」
「村が見付かればっていうんだな」
「そうだ、そしてだ」
英雄は目を鋭くさせた、そして。
刀を抜いた、すると久志もだった。
目を鋭くさせて剣を抜いた、そのうえで英雄にあらためて言った。
「ここで、かよ」
「敵の登場だな」
「御前より気付くのが遅かったな」
「いや、ほぼ同時だ」
「俺の方が遅いだろ」
「刀を抜くだけか」
「ったく、俺もまだまだだな」
剣を構えてからだ、久志は自分自身の未熟さに舌打ちした。そしてだった。
横から来た何かから身体を屈めてかわしそうしてだ、自分が今までいた空間を一閃した。すると何かを断ち切る感触があった。
久志もだ、後ろから来るものをだ。
振り向きざまに切った、そして切ったものはというと。
人の顔を持つ漆黒の鳥だった、身体つきは梟に似ている。夜目になっているその目で見てだ、久志は言った。
「この世界のモンスターか」
「そうだな」
「人面鳥か」
見れば二羽いる、どの人面鳥も急所を切られて死んでいる。赤い血が流れているのが見えた。
「こうしたのもいるんだな」
「そうだな」
「そうした世界ってことか」
「モンスターとしては弱いな」
「ああ、それはわかるな」
「一撃で倒せた」
「そう考えたら昼の連中と同じかそれ以下だな」
久志は人面鳥の強さのランクをこう推察した。
「本当にな」
「俺もそう思う」
「そうだな、そういえば金も」
人面鳥が落としたそれはというと。
「一羽辺りさっきの盗賊の半分以下だ」
「盗賊一人辺りのだな」
「その程度か、金にしても」
「弱い相手だった」
「そんなところか、まあそんな敵だってってことは」
「何ともないな、しかしだ」
「その何ともない連中も倒してまた金が入った」
久志はこの現実も話した、金の問題は切実なので忘れられない。
「いいことだな」
「そうだな、それではだ」
「この金も貰って行って」
「先に行くか」
「やっぱり野宿か?」
金を懐に入れてからだ、久志は苦笑いでまたこの話をした。英雄も彼が倒した分のモンスターの金は手に入れている。
「今日は」
「まだ覚悟をしていないのか」
「せめてテントでもあればな」
「ないものを言っても仕方ない」
「そうした旅道具もないとな」
久志はまた現実にぶち当たった、ただ武器があるだけではどうしようもないというそれを。
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