風魔の小次郎 風魔血風録
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118部分:第十一話 武蔵の力その三
第十一話 武蔵の力その三
「八忍の二人は貴方が相手をするのです。いいですね」
「わかりました。それでは」
「今回の戦いはこれで行きます。そして」
「そして?」
「戦線離脱だった八将軍のうち七人はどうなりましたか」
このことを二人に対して問う夜叉姫であった。
「そろそろだと思うのですが」
「次の戦いまでには間違いなく」
壬生が夜叉姫に対して答えた。
「全員復帰します」
「そうですか。それではあの銀色の髪と目を持つあの男達に関して調べている陽炎も戻り」
「夜叉の戦力が完全に復活します」
また壬生が述べたのだった。
「その時こそ我等が雌雄を決する時です」
「はい、その通りです」
壬生の返答が続く。
「ですから今ここで勝利を収めればまさに」
「私達が有利に立てます。しかも勝敗を決するまでに」
夜叉姫が期待しているのはこれであった。話すうちにその目の光が強くなっていく。
「だからこそここは何としても」
「お任せ下さい」
今度応えたのは武蔵だった。頭を垂れながらもその目の光が強いものになっているのがわかる。それはまさに雷の光であった。
「この飛鳥武蔵、何があろうとも勝利を献上致しましょう」
「姉上、私も」
武蔵の言葉に刺激されてであろうか。壬生も言ってきた。言葉が少し上ずっている。
「是非共風林火山をここに」
「期待しています。それでは」
「はっ、只今より」
「いざ」
こうして二人もまた出陣するのだった。二人が出陣して試合場に向かう時に陽炎は。夜叉の同志達の言葉を聞いて顔を曇らせているのだった。
「何っ、それはまことか」
「うむ、間違いない」
「陽炎、これは紛れもない事実だ」
同志達は険しい顔で陽炎に述べていた。今陽炎は鬱蒼とした森の中で同志達の言葉を聞いている。薄暗く光も弱いその森の中でだ。
「今まで多くの忍の軍勢が謎の壊滅を遂げている」
「それについては俺も奇怪に感じていたが」
「この前遂に飛騨忍群も壊滅した」
同志の一人が陽炎に告げる。
「これも知っているな」
「今でも信じられぬ話だ」
右手の扇は扇がせている。しかし顔は強張らせていた。
「我等夜叉と風魔、伊賀、甲賀に並ぶ勢力を誇るあ奴等がな」
「それもまた奴等の手によるものだ」
「奴等のか」
「俺は見た」
また同志の一人の言葉だ。
「飛騨からあの銀色の連中が出て来たのをな」
「ふむ。では間違いないか」
陽炎は唇を噛み締めつつ同志の言葉に頷くのだった。
「やはりそれはな」
「そしてだ」
同志の言葉はさらに続く。
「そいつは手に剣を持っていた」
「剣だと!?」
「奇妙な形をした剣だった」
彼は言う。
「十字の形をした。少なくとも忍の持つものではなかったな」
「十字か。確かに妙だな」
これには陽炎も納得するものがあった。
「我等は木刀が普通だからな。十字の剣なぞ聞いたこともない」
「奴等は忍ではないか」
「銀色の髪と瞳」
陽炎が次に見たのはそこだった。
「そして白い超長ランだったな」
「そうだ」
「そんな外観の忍なぞ聞いたこともない」
夜叉の参謀である彼にしろそうであるのだ。陽炎はただ知略だけで参謀になっているわけではないのだ。言うまでもなく知識も備えているのである。
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