風魔の小次郎 風魔血風録
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116部分:第十一話 武蔵の力その一
第十一話 武蔵の力その一
武蔵の力
レシピ勝負の日が近付く中でも小次郎の素振りは続く。今日も柳生屋敷において風林火山を振り続けている。一人黙々と振り続けている。
「小次郎君」
その彼に麗羅が声をかけてきた。
「ちょっといい?」
「んっ、何だ?」
「はいっ」
声と共に何かを何個か投げてきた。それは。
「むっ!?」
小次郎は咄嗟にその何かを風林火山で斬っていく。その巨大な木刀をまるで木の枝の如く縦横に振るい見事に斬ってみせたのだった。
「いきなり何しやがるんだ麗羅」
「風林火山の使い方も随分上手くなったじゃない」
麗羅はその斬られたもののうちの一つを手に取ってにこりと笑ってからそれにかぶりついた。見ればそれは焼芋であった。
「何かと思えば芋かよ」
「そう、焼芋」
美味そうにその芋を食べながら答える。
「これ大好きなんだよね」
「大好きなのはいいけれど俺にやらせるなよ」
少し怒った顔で麗羅に言葉を返してきた。
「こんなのよ」
「まあまあ小次郎君」
「まあまあじゃねえよ」
相変わらず芋を食べながら述べる小次郎だった。
「御前は前からな」
「前から?」
「何でそう俺に対して何かと絡むんだよ」
「だって同期じゃない」
「同期・・・・・・ああ、そういやそうだったか」
小次郎は今の麗羅の言葉でふとした感じで思い出した。二人の付き合いはかなり深いものなのだ。
「御前も俺もな」
「そうだよ。交流だよ交流」
「俺をいつもからかってるばかりじゃねえか」
「だって小次郎君気になるんだもん」
休憩して屋敷の廊下のところで自分も焼芋を手に取って食べだしている小次郎の隣に座っての言葉だった。にこにこと笑っている。
「いつも馬鹿なことばかりするからね」
「馬鹿っておい」
流石にこう言われては小次郎も怒る。
「御前までそう言うのかよ」
「御前が馬鹿じゃなかったら何なんだよ」
後ろから今度は兜丸が出て来た。彼の手にも焼芋がある。
「風魔一の馬鹿じゃねえかよ」
「ちぇっ、何か俺言われ放題だな」
「その馬鹿がいいんじゃない」
麗羅はまた小次郎に言ってきた。
「小次郎君から馬鹿取ったら何にもならないよ」
「何でここまで言われるんだ?」
風塵火山を右肩に担いで不満な顔になる。
「馬鹿だから一直線に突き進んでそれで今だって風林火山を使いこなせるところまでいってるんだしね」
「そうかな」
「そうだよ」
小次郎への言葉を続ける。
「だからさ。そのまま突き進んで大物になればいいよ」
「大物かあ」
「まあ確かにそうだな」
「小次郎は大物だな」
ここで項羽と小龍が出て来た。見れば二人も焼芋を食べている。
「馬鹿を大物と言うんならな」
「そうなるな」
「御前等何時の間に」
「俺達もいるぞ」
「確かに御前は大馬鹿だな」
劉鵬と林彪もまた焼芋を食べていたのだった。小次郎の目がかなり嫌なものを見る目になっていた。
「それも始末に終えない馬鹿だ」
「成長し続けている馬鹿だしな」
「俺は何処まで馬鹿なんだよ」
「少なくとも風魔では一番だな」
霧風の手にも焼芋がある。
「御前のレベルの馬鹿はいない」
「俺今回特に馬鹿って言われてねえか?」
「まあまあ小次郎君」
麗羅がまた笑って小次郎に声をかけてきた。
「そんなこと言わずにね」
「最初に御前が言い出したんじゃねえか」
「小次郎、気にすることはない」
最後に出て来たのは竜魔だった。
「御前は御前だ。己の信じるようにしろ」
「兄ちゃん・・・・・・」
「しかしそれにしてもだ」
彼も焼芋を食べている。
「麗羅、見事な焼き加減だな」
「有り難うございます」
「今度のレシピ勝負も楽しみだな」
「はい、そうですね」
「サポートが期待できるな」
何故か姫子と蘭子が出て来た。洗濯の白いシーツの左右から出て来た。二人も手には焼芋がある。皆が皆焼芋を食べている。
「今回も小次郎さん出られるんですよね」
「あっ、姫様」
小次郎は姫子の姿を認めて思わず立ち上がった。
「どうしてここに」
「どうしても何もいつも来られているだろう」
蘭子はこう小次郎に突っ込みを入れた。
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