Blue Rose
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第四十九話 受験の後でその三
「ひょっとして」
「いえ、違います」
女性のその言葉にだ、優花は驚いた顔になって答えた。
「普通の高校生です」
「そうですか」
「そうです、そんな」
「タレントさんじゃないの」
「本当に違います」
「あら、可愛いから若しかって思ったけれど」
女性は笑ったまま答えた、見れば黒いサングラスをかけていて目はわからないが顔立ち自体は非常に整っている、特に口元が。
「違ったの」
「そうですけれど」
「そうなのね、まあ私はね」
「お姉さんは」
「普通のOLだけれどね」
「そうなんですか」
「大阪の会社で働いてるの、アパレルの会社にね」
勤めている企業の話もしたのだった。
「勤務してるけれど」
「そうですか」
「ちょっと福岡まで休暇取って旅行に行ってたの」
「福岡まで」
「そう、美味しいもの食べてね」
そしてというのだ。
「野球の試合も観てたの」
「野球、ホークスですか」
「いえいえ、八条リーグの方よ」
「あっちですか」
「普通のプロ野球もいいけれど」
日本のもう一つのプロリーグのというのだ。
「あっちも好きでね」
「観に行かれてたんですか」
「そうなの、他にも福岡の名所回ってたわ」
「そうだったんですか」
「ラーメンも食べたし」
何といっても福岡といった食べものだった。
「鶏もね」
「あっ、福岡ですから」
「食べたわ」
そうだったというのだ。
「もう名物を食べられるだけね」
「食べてそして」
「野球も観て」
「そうされてきたんですか」
「そうよ、やっぱり福岡はいいわ」
優花にこうも言ったのだった、それも笑顔で。
「私としてはね」
「福岡お好きなんですね」
「生まれも育ちも大阪だけれどね」
実際に言葉の訛りはそちらだ、関西弁の言葉ではないが訛りはそうだ。
「福岡は好きなの」
「それはまたどうしてでしょうか」
「中学の時に旅行に行ってね」
「その時にですか」
「ラーメン食べて美味しかったから」
「ラーメンですか」
「それで福岡ドームも行ってね」
ホークスの本拠地だ、大阪から本拠地を移転したのである。最初は平和台球場が本拠地だったがドームが出来てそちらに移ったのだ。
「ホークスもいいって思って」
「福岡がお好きになったんですか」
「そこから年に一回は行ってるの」
福岡、その街にというのだ。
「それで楽しんでるの」
「そうなんですね」
「いい街よ、福岡」
笑顔でだ、女性はまた優花に言った。
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