怪獣の来訪
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第六章
「そうしたことをしても下手に怒ってもな」
「駄目っていうしね」
「そうなんだよな」
「そう、だからね」
「落書きは仕方ないっていうかな」
「水性ペン出してるし」
しっかりとだ、そこは。
「拭き取れるから」
「落書きされそうな場所はあらかじめ備えてるしな」
紙等書かれたら終わりの場所はもう覆いをしてあるのだ。紙自体も破られたら困るものは出さない様にしている。新聞紙等は破かれたら掃除をしている。
「そっちもな」
「ええ、暴れてもね」
「壊されたら困るものはなおしてるし」
「全部ね」
「事前の備えもしてるな」
「お口に入れたら困るものもなおして」
「食べるものな」
「そうしてるから」
だからだ、勇人は酒好きだがその瓶も飲んだらすぐになおしているのだ。
「その都度ね」
「ああ、しかしな」
こうもだ、勇人は言った。
「ここまで注意して用意して掃除したりとかな」
「育児って大変ね」
「まさにあれだな」
「あれって?」
「怪獣への備えみたいだな」
「災害じゃないの」
「災害は自然だろ」
それに基づくものだというのだ。
「だからな」
「怪獣だっていうのね」
「家の中に怪獣が来た様なものだ」
息子のことをこう言うのだった。
「本当にな」
「言われてみれば」
「そうだろ」
「そうね」
「全く、育児はな」
「怪獣との格闘ね」
「そうだな」
しみじみとして言う勇人だった。
「いつも見ていないと駄目だしな」
「少しでも目を離すとだし」
「そうだろ、怪獣だって目を離すとな」
特撮ものに出て来る彼等はというと。
「無茶苦茶するだろ」
「正義のヒーローが来るまでね」
「だから怪獣なんだよ」
まさにというのだ。
「翔平はな」
「野球選手の方も凄いけれど」
息子の名前のもとになったその選手もというのだ。
「投げて打ってで」
「背も高いしな」
「怪獣みたいね」
「あんな選手いたら優勝出来る」
どれだけ相手チームが強大でもだ。
「だからな」
「名前をあやかったけれど」
「怪獣だなんてな」
「夢にも思わなかったわね」
「全くだな」
勇人もぼやきながら言った。
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