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眼鏡っ子は筋肉がお好き

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第三章

「筋肉に関わるお仕事がいいわね」
「筋肉に関わる!?」
 友人達は亜美の今の言葉に首を捻った。
 そしてだ。怪訝な顔でこう言うのだった。
「何、それ」
「ちょっと意味わからないけれど」
「トレーナーさんになるの?」
「それかプロレス事務所に入るの?」
「私自身は運動はできないけれど」
 実は亜美は運動御地だったりする。走ることもその他の身体を動かすことも得意ではないのである。だからこそ余計という一面もあった。
「筋肉は大好きだからね」
「それでなのね」
「筋肉のお仕事につきたいの」
「何がいいかしら」
 今もリングで行われている華麗かつダーティーなファイトを観ながらの言葉だった。
「果たしてね」
「まあ。考えたら?」
「色々あると思うけれどね」
「その中であんたが就きたい仕事を選べばいいからね」
「筋肉でもね」
「日本がマッチョだらけになればいいのに」 
 今度はこんなことを言い出した。
「切実に思うわ」
「想像するとちょっと気持ち悪いけれど」
「あまり趣味じゃないから」
 これが彼女達の主張であり趣味だった。誰もが亜美の様に筋肉一辺倒とはいかない。むしろ亜美の方が特殊なのだ。
 しかし亜美の筋肉好きは止まらない。その中でだ。
 彼女のところに一人の男子生徒が来てだ。こんなことを言ってきたのだった。 
 亜美は丁度自分の席でプロレス雑誌を熱心に読んでいた。その彼女にこう言ったのである。
「あの、いいかな」
「あれっ、誰?」
「二年三組の若林健太郎だよ」
 彼は名乗った。背は高いがひょろ長く髪は七三分だ。顔は面長で黒縁の四角い眼鏡をかけている。その彼が言うのだった。
「宜しくね」
「ええ、宜しく」
「それでだけれど」
 その彼健太郎は亜美に言った。
「今度の日曜日ね」
「デート?」
「あっ、それは」
「そうね。ちょっとね」
 その健太郎を雑誌を開いたまま見上げてだ。亜美はこう言った。
「身体がね」
「身体が?」
「そう。弱いわね」
 ここでも筋肉だった。
「というかひょろひょろじゃない」
「それはその」
「背は合格ね」
 ひょろ長いにも程があった。何と健太郎は一九〇はあった。
「けれど身体がね」
「あの、まあ何ていうか」
「まあいいわ。それでね」
「それで?」
「今度の日曜よね」
 亜美は健太郎を見上げたまま彼に言葉を返す。
「私とデートしたいのよね」
「ええと、つまりは」
「わかるから。私に直接言いに来たのはね」
 亜美は結構勘がいい。それで自分から言うのだった。
「だったらね」
「駄目かな」
「基本的には駄目よ」
 亜美は妙な返事で応えた。
「いきなり初対面で。少なくともお話したのははじめてでそれはね」
「じゃあ」
「だから基本的にはよ」
 ここでまた言う亜美だった。
「基本的にはって言ったでしょ」
「っていうと?」
「実は私日曜ある場所に行くの」
 思わせぶりな笑みでの言葉だった。
「美術館にね」
「美術館?」
「そう、そこにね」
 行くとだ。亜美はにこりと笑って言うのだった。
「行くけれど」
「それに僕も?」
「今回は最初は一人で行くつもりだったけれど」
 だが、だというのだ。
「行かない?一緒に」
「いいんだ」
「いいわ。それじゃあね」
「有り難う」
「お礼はいいわよ。私も一人より二人の方がいいから」
 だからだというのだ。亜美にしても。 
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