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STARDUST∮FLAMEHAZE

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第三部 ZODIAC CRUSADERS
CHAPTER#50
  FAREWELL CAUSATIONⅩ~Made in Inferno~

【1】



 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッ!!!!
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!!!!!


 この世為らざる場所。
 冥劫の世界、常闇の大陸にしか存在添し得ない暗黒大樹。
 光浴び糧を生み大気を澄ます現世の本質とはまるで逆、
曠野(こうや)を搾り瘴気を穢し地竜を()らう生態階層の最頂点に位置するモノ。
 意志も無ければ目的も無い、ただ無造作(ランダム)な法則のみによって動き、
遭遇した者を無分別に(ころ)す、後には認識すら遺らない。
 その強大さは正に紅世の 【真王(しんおう)】 と呼んでも過言ではなく、
嘗ての王やフレイムヘイズが束で掛かっても、
それこそ彼の【殺戮の三狂神】 或いは亜の【悪魔皇】
と呼ばれる男でもなければ対抗出来ない。
 ソレを支配するは一人の少女、永劫の虚無に囚われ、永遠の喪に服する。
 亡くしたモノを 『認識していながら』 それでも探し続ける狂憐の【愛染双真】
 もう彼女の心には、雨が降る事さえない。
 その裡に確かに、最愛の者が存在しているコトを知らないまま。
「うっ……ぐぅ……!」
 数秒ではあるが完全に意識が飛んでいた創痍の少女は、
素肌に砕けた甲冑の残骸を被った状態で意識を覚醒させた。
「際どかった……鎧がなかったら、全身粉々だった……!」
 能力の解らないスタンドへ迂闊に攻撃を加えてはならない、
スタンドバトルでは当たり前の定跡であるが
アノ時生まれつつ在るモノを畏れた彼女の選択を誰も責める事は
出来ないだろう。
「でも……ッ! どうしろっていうの……!?
あんなモノ……あんなモノ……!
もう、どうしようもない……ッ!」
 地竜をも呑み込む極大存在(ファフニール)、全力を尽くさばアノ “甲鉄竜” すらも、
ソレを覚醒双力を携えたとはいえ、一人の少女が討ち果たそう等とは、
年端もいかぬ幼子が時間を逆行させるスタンド使いに挑むに等しい。
「一人、じゃ……」
 意志とは無関係に、今一番傍に居て欲しい者の風貌が浮かぶ。
「一人じゃ……!」
 でも、護らなきゃ……!
 傍に居て欲しいけどそれ以上に眠っていて欲しい、
こんな恐ろしい存在の事など知らなければいい。
 知れば戦ってくれるから、何がなんでも護ってくれるから。
 だから!
「一人でもッッッッ!!!!」
 生まれたままの姿、たった一振りの大刀を片手に少女は立ち上がった。
 双眸が深度を増し、炎髪が火旋を放ち全身を(おお)う。
再構成される甲冑、空間を焼き払う紅蓮の火噴き、
気高き意志在る限り人間の精神の力は無限、
それを顕すかの如く少女の存在は一面の暗黒の中
確かに存在する篝火の如く鮮明に映った。
「一人じゃ、ありません」 
 自らの足で立ち、苦難に立ち向かおうとする者を、
天は、人は決して独りにはしない。
 原初の刻から在った真実をそのまま投影するように、
瑠璃色の光を鏤め両翼を携えたスタンドに抱えられた
少女が眼前に舞い降りた。
「おま、え」
 予期しない、誰かと違える事も無い、
余りにも意外な人物が少女の視線を受け止めた。
 最初の邂逅から再開まで、まだ二時間と経過していない。
 だが二人は、その様相も然ることながら内面の変化に瞠目した。
 まるで数年も戦いの最中を掻い潜ってきたような鮮明なる気配を
互いに否応なく感じ取った。
「無事で、何よりです」
 鎧? スタンドとは違う異能の存在を注視する少女に
「そう見えるの? 何度か死にかけたわ」
何その服? と別の意味合いで少女が返す。
「……」
「……」
 味方同士ではあるが微妙に険難な雰囲気、
すぐそこに暗黒大樹が聳えているというのに。
「空条君は?」
 くだらない口論をしても仕方がない、
それくらいの割り切りは出来るようになった少女が問う。
「眠ってる。もう、この戦いには参加しない。
“アレ” も、私一人で何とかする」
 関係ないでしょ、と、どこぞの伝説的プロモーター張りに視線を切る少女、
微力でも増援は地獄柱の裂け目のように有り難いこの状況で
吉田の存在は眼中にない。
「そ、そんな言い方」
「何が出来るの? おまえに」
 無慈悲(リアル)な一刀両断で切り捨てる少女。
 この状況で別に彼女の事が気に入らない等という低次元な理由ではない
(気に入らないが)
 この戦場、この領域(レベル)で未だ生き残っているという時点でその実力は察して然るべし。
先刻の一斉破壊も策略というよりは何かの「能力」の
印象が強いのでそれは彼女の功績かもしれない。
 だからといってそれ以上望むのは過信というもの、
自分はこの女を信用してない、してない以上信頼も在る筈がない、
不確定な状況で中途半端な能力は却って迷惑だ。
「……」
という言説を無明の双眸に込め一瞥で叩きつけた少女、
戦闘者でなければ半時は再起不能に陥る眼圧である。
「……!」
 片や少女は一瞬怯んだものの、即座に朽木倒された精神を立て直し反駁を試みる。
 自分だけなら兎も角(それは言われても仕方がない、少し活躍した程度で調子に乗るほど莫迦でもない)
その 『能力』 に対してまで無能扱いされるのは流石に業腹だった。
“彼女” は、本当にスゴイのだ。
『……』」
 その気持ちが伝播したのか眼前の小娘を “敵” と判断した
スタンドがオートで動き出そうとした刹那。






 ヴォァッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!



 


 大樹がさざめいた。
 継いで捲き起こる光景も、この存在には葉鳴りに過ぎなかった。





 グュララララララララララララララララッッッッッッッ
ッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!







 大惨劇、という表現も凡庸となろう。
“葉” ではなく 『刃』
 自然の恩恵などない、生命同志の繋がり等存在しない、強者と弱者の区別すらない、
ただ虐げ合い、躙り合い、貪り合う、淘汰のみの世界から来訪()たモノに、
破壊と破滅以外の機能は存在し得ない。
 







 ヴァグンンンンンッッッッッッッッ!!!!!!!!








 在るとしたなら、山岳(やま)をも斬っただろう。
 視る者が視れば、超々大の巨人が街を喰らったように映っただろう。
 ソレくらい無造作に、常闇の樹王は脆き世界の大陸を “払った”
 理由などない、ただ、己と約せし者と精神が同調しただけに過ぎなかった。
「お兄サマ……どこ……? ドコ……? 何、処……?」
 対してその者は、気流にも掻き消える譫言を断続的に漏らすのみ。
 己ほどの存在を召喚せし代償として精神が破綻したか、
或いは最初から壊れていたのかもしれない。
 ソレならソレでイイ。
 この哀れで儚い小さき者の渇望(ねがい)に乗じてヤるのも一興。
 悦べ、羸弱(るいじゃく)なる者、(かそ)けき存在の貴様が、
今一時この最大最強たる我の繋累(けいるい)だ。



 




 ズズ、ズ……ッッッッッッ!!!!!!








 そう嘱した真王がその総軀()を睥睨したのはシャナでも吉田でも、
ましてやこの戦場に居る何れでもない(約一名だけ食指が反応したが)
 此処より遥か彼方(とおい)南南西、其処に居る四つの存在と
その深奥に坐する現世の帝王に対して。
 樹掌()の少女が一言命ずれば、即座にソコへ向けての進撃を開始するだろう。
 それは最大の好機かもしれない、極大なる存在同士の超激突、
何れが勝つにしても双方共ただでは済まない。
 それを知ってかしらずか、敵に背を向けられた少女の漏らした言葉は
皮肉にも理に適っていた。
「な、な、な、何なんですか!? アレ!! 今の!?
たまたま攻撃が逸れたってだけでッ! アレがこっちを向いてたら!
襲い掛かってきてたらッ!?」
 既にスタンドが傍に立ち彼女を庇護する態勢を整えていたが
無感情な幻 像(ヴィジョン)にも一抹冷たい雫が伝う。
 剣林刃雨、斬軌狂乱等という言葉も生温い、
文字通りの断頭台(ギロチン)の嵐。
 葉という刃が、枝という刀柄(えだ)が、全 方 位(オールレンジ)という表現も当らない、
全 致 命(オール・フェイタル)攻撃と成って射程のスベテを埋め尽くしたのだ。
 後の惨状は修羅が駆け抜けたが如し、多数の斬痕すら遺らない、
アスファルトが消滅し土台のコンクリートとその下の岩盤すら抉ってしまっていた。
 最早策や技、能力の通用する次元ではない。
 吉田のスタンドも、その成長性に視るべきものはあるが
この場合象と蟻の戦力差にすらならない。
「む、無理ですよ……絶対に無理ッ! 勝てるわけありません! あんなの!!」
 何時、さっきの斬嵐がこちらにクるか、
もう次の瞬間かもしれない窮地に鼓動は限界を越えて全身に響いた、
既にスタンドは彼女を抱え離脱体勢に入っている。
 敵う筈のない相手に向かっていくのは勇気ではなく無謀。
 ソレくらいは戦闘経験の(非常に)浅い少女でも解っている。
 故にもう一人の少女はそれを一瞥しただけで視線を戻した。
別段失望や諦念、明日屠殺される家畜を視るような表情ではない。
 寧ろ彼女の反応こそが自然、自分の方がズレているのだと
妙に落ち着いた気持ちで再認しただけだった。
「だから “その程度のヤツ” が首突っ込むなって言ったのよ。
一度や二度マグレが続いたからって、戦いを舐めない方がイイ。
寧ろそっちの方が却って危険よ。
勝手に酔って熱噴いて、周りを巻き込んだまま
抜き差しならない状況に陥らないと眼が覚めないンだもの。
それで結局私に助けを求めるとか、フザけるなって話よね」
「……ッ!」
 あからさまに一線を引かれた頭上からの言葉、
そりゃ自分は人並み以下の女子高生かもしれないが
私の能力は、スタンドは――
「あ、あ、あんなのと戦おうなんて考える方がオカシイんです!
どう考えたって無理じゃないですかッ!
戦えるなら私だって!」
「その “あんなの” が、封絶の 『外』 に出ていったら、
どうなるでしょうね?」
「――ッ!」
 言葉を遮られると同時に少女は絶句した。
「関係のない人間とまでは言わないけれど、
“アレ” がおまえの家族や友人を避けて襲ってくれるとイイわね? 
最も、その間に何万人、何百万人死ぬか解らないけれど」
 暗黒大樹その頭頂部に、巨大な一つの兇々しき眼が出現した。
 スベテを蔑みスベテを嘲笑う、現世(このよ)の存在など須らく己を愉しませる
供贄(くもつ)に過ぎない、一片の慈悲もなき恫線。
 人間が微生物に感傷を持たないのと同じように。 
 まだ、そんな所に這い蹲っていたのか?
 逃げる知能もないのか?
 そんなに死にたければ殺してやる。
 フレイムヘイズとスタンド使い、両者の異能に感応したのではない。
強者と弱者という区分すらない、人間がさしたる理由もなく虫螻を捻り潰すように、
二人の存在は紅世の真王にとって羽虫の雑音にしか過ぎなかった。








 ギ・ヲ゛・ン!!!!!!!!!!!!  








 闇の淫肉、現世と魔界の境界線、その狭間から這い擦リ出してくる
悍ましきナニカのように、暗黒の螺旋が永劫の回帰線を描きながら
渦巻いていきその虚無の往き着く最終点、
どんな極小よりも更に小さき領域で到達する無次元の収束。
 行使する者の顕力(チカラ)にもよるがソレは理論上この地球(セカイ)を呑み尽くしても
まだ余剰(あまる)という極絶の因果を形成せしめる。









次 元 境 界 断 滅 砲(グ ラ ヴィ ティ ー ・ フォ ト ン)









 黙示録に於ける天使の喇叭。死海文書に於ける滅びの矢。
 古の例を出すまでもなく、嘗て、意にそぐわぬ生 物(マガイモノ)を完全消去する為、
幾度となくこの偶像の光が地上に降り注いだのだろう。
 使処(タイプ)が違うがコレはソレと同質のモノ。
 偶像(カミ)は虫螻に力の加減などしない、
結果としてその行為が妥当だったか等と考慮もしない、
ただ目障りな塵芥が消えればソレでイイ。
 







 グュドォッッッッッッッッ!!!!!!!!!!








 栄華を極めた悠久の都が忘却の空の彼方へ消し飛んだように、
ソレは無慈悲よりも冷たい摂理に拠って発射された。
 規模や人数は関係ない、絶対なる真王(カミ)にとって、
如何なる人の理も須らく無価値。
 ただ “選ばれなかった” ソレだけのコト。
 是非を問うにも値しない、万物が存在してから
繰り返し行われてきたコトだ。






 


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッ!!
 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッ!!!!
  ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッッ!!!!!!








 ソコに大地が在ったコトを、誰が想像し得るだろう?
 ましてや近代都市の路上で在ったコトを。
 破壊ではない、 『消滅』 したのだ。
 破壊には莫大なエネルギー、その抵抗、反動も相俟って後にはエネルギーの余燼が燻る、
そこから存在したモノ、起こった現象を解くことも可能となろう。
 しかし何も無ければ想像する(よすが) もない。
 真王の放った寂滅の光砲は大地ではなく
ソレが 『存在する空間ごと』 スベテを撃ち抜いたのだ。
 空間が無くなるというコトは次元の “向こう側” が露わとなるコト。
 同時対消滅が起こり同じ存在は洩れなく消し飛ぶ。
 それは一秒に満たない刹那の時なれど 『神の法則』 にはソレで充分。
 逃れられるものは、現在北米大陸の地下深くに
安置されているアルモノ以外存在し得ない。
 ある種のスタンドがその特性故に災厄となるコトは在るが、
コレはソレと比類してもケタが違い過ぎる。
 極絶の行使力、大陸の地殻第3層まで刳ってしまった特大の闇孔は、
最早ヒトの()める領域(ばしょ)ではなくなってしまったのだから。
 地球の真核(コア)へと続く深淵、そこまでの大惨状を引き起こしたにも関わらず
真王は、一瞥は疎か葉鳴りひとつ動かさず背を向けた。
 微細な虫螻を潰して感傷に浸る者などいない、
戦闘や勝敗とは根本的に違うモノ、
ソレが “淘汰” だ。
「お兄、サマ……」
 底無き闇孔に、一瞬その姿を垣間見たもののそれは虚ろなる狂気が生み出す幻影。
 彼女はこれからもそれを探し続けるのだろう、
この地上が壊滅の焦土と化し、虫一匹、草一本生えない世界と成り果てても、
常闇の真王の手の中、永劫に。
 破滅の化身は動き出す、絶望という言葉にも当たらない、
消えた二つの存在は、希望と呼ぶには余りにも儚き光なのだから。
 そう、生きていようと生きていまいと……
「……」
 ゆっくりと動き出した暗黒の巨魁を見据えながら、
甲冑の少女はビルの屋上で放心していた。
 遠間に見える闇孔、乱れない断面を覗かせる周囲のビルが
そのまま呑み込まれていきそうな存在感に
躰が(おこり) を犯したかの如く震える。
 紅世の王の顕現は、今までの経験上その凄まじさは熟知している。
だが 「在る」 事より “無い” というコトがコレほどまでに怖ろしいとは。
 そしてそのような災禍に見舞われながら自分が生きているという事実、
それがまるで奇蹟のような、奇蹟としか云い様のない畏怖を精神に刻みつける。
 どうして助かった? そういえば……
「……」
 極限の恐怖と安堵、その相克により停止していた意識が傍らの存在を見失わせた、
戦闘者である自分でも放心するほどの事象、並の人間なら発狂してもおかしくない。
「……ぃ…………ょ…………ぃ……ょ…………ぅ……」
 両膝をついたまま、自分の前だというのに泣きじゃくる少女。
 躰の震えは自分の比ではない、許容以上の負荷により、
何が怖くて何故泣いているのかも解っていない状態だ。
 でもそれは「逃げた」という事をはっきり認識しているから起こる現象、
というコトはつまり。
『……』
「おまえの、おかげ?」
 跪き光を透かす手を少女の肩に当てるスタンドにシャナは歩み寄った。
 途端、火花がついたように鋭い視線をこちらに向ける、
敵意や殺意、何れとも似ているが違う、まるで子を護る親鳥だ。
「わかった、わかった。 さっきは言い過ぎたわよ。
少なくとも敵じゃないから今はやめて」
 意志を持つ異能に手甲で覆われた両手を振る少女、
巨大な暗黒樹は傲然と聳える背景には些かシュールな光景、
にも関わらずその主体は彼女に在った。
「瞬間移動? アノ時、存在力の収斂も開放も一瞬で行ったわよね?
移動に生じる反動や風圧も感じられなかった。
なら何かの 『能力』 としか」
 曖昧な論拠で問われる推測にスタンドがゆっくりと頷く。
 スタンド法則では特段珍しくない事、
能力発動の際、それを妨げる公然はその対象物に限り除外される。
 直近の例で云えばホルホースの 『皇 帝(エンペラー)
ジョンガリ・Aの 『マンハッタン・トランファー』 等も
スタンドを経由した後は風向きや空気抵抗等の影響を受けない。
 そうでなければシャナの甲冑はともかく吉田の衣服は
摩擦熱で燃え尽きているだろう、無論本体も無事では済まない。
 如何にスピードの在るスタンドでも、
生命の原理上いきなりMAXに達するコトは難しく
それはフレイムヘイズも同じ。
先刻シャナも回避行動を執ろうと試みたが
吉田を抱えての状態では直撃は兎も角
その 「余波」 までも躱せたかどうかは疑問の残る処。
 そして真王と虫螻の格差からすればそれで充分、
即死、絶命、何れを避け得ても
四半身が身切れ再起不能になっていた公算が高い。
 何より時空の裂け目の露面が悪く、
“向こう側の自分” と眼が合ったりでもしていたら、
魂諸共バラバラに吹き飛んでいた可能性すら在るのだ。
 故に少女の機転は称賛に価、最初の大斬乱舞の時点で既に、
いつでも急速離脱出来るよう秒 読 み(カウント・ダウン)の光球を
足元に複数設置して於いたのだ、シャナの批難に反駁しながらも。 
 しかし故に負った精神的ダメージは重篤、
底の視えない闇孔はそのまま自分がソレを喰らった結果。
アノ光砲と真正面から対峙したに等しい。
年端もいかない生身の少女が、当然心は戦闘不能にまで圧し折れる。
 莫迦は死ぬまで誰かが助けてくれると無根拠に盲信するものだが、
『男』 で在るなら恥ずべき事であろう、
ここまで彼女に “させてしまったコト” を。
「……」
 それは傍らに立つ少女も同じであった。
 戦場で落涙する者など論外である筈だがソレに救われた。
 それより惰弱で唾棄すべきだった少女が目の前で泣いている事に対して、
何故か、無性に――
「許してね」
 一度スタンドに許可を取った後、返事を待たずに(というか喋れないのだが)
甲冑で少女の躰を包んだ。
「……!」
 渦巻く破滅を背景に交感される慈愛の光景、
あの時のように、更にアノ時のように。
 どうすれば震える者の肩を止めてやれるのか、
どうすれば怯える者の涙を止めてやれるのか、
それはきっと、戦い以上に大切で、使命よりも尊いもの。
「ありがとう。 よく頑張った。スゴイわ、おまえ……」
 鎧と服越しに交わる、少女の鼓動と体温。
 甘いなら甘いと言えばいい、情けない姿だと笑えばいい、
でも、世界で私だけは、コイツを笑わない。
 抱きすくめられた少女が自分にしがみついてきた、
好意や友愛ではないだろう、ただ “怖い” 時は
「誰か」 に居て欲しいのだ、自分だってそうだった。
(少しは、アナタに近づけたかな……戦うだけじゃない、真実(ほんとう)の強さ……)
“戦い” に終焉(オワリ)は無いから、連鎖する力は、実は強さでもなんでもない。
 それを見極めるコト、護るコト、ソレが 『正義』 と “悪” を割かつ
最初の(しるべ)となる。
(みんなの想いが、存在が、力を与えてくれる……!)
 腕の中の一人の少女、同じ戦場で共に闘い続ける者、
まだ視ぬ者達ですら力に成る、
ソレが 『正しい』 と呼ばれるモノの真の強さ。 
「行ってくる……おまえの分も含めて二発……!
必ずアイツにブチ込んでやる……ッ!」
 決死決生、相反する覚悟を決めた真炎の戦士(フレイムヘイズ)
「私の 『仲間』 を傷つけるヤツは、絶対に赦さないッッ!!」

←To Be Continued……



















「あとがき」

字数オーバーしたのでこちらに記載します。







はいどうもこんにちは。
こんなDIOサマ並にヤバイヤツ出してどーすんだ?('A`)
という話ですが、気が付いたらそーなってたんです。すいません。

さて、作中でも彼女が言ってましたが今回はストーリー作品に於ける
「戦いの理由」について少し考えてみましょう。
まぁ毎度毎度作品批判から入って申し訳ないのですが、
「片方の」方はこの戦いに於ける「動機づけ」がホントなってないですネ・・・・('A`)
だってその理由が「~の前でいいかっこしたい」とか
「日常がつまんないから刺激が欲しい」とか「~に負けたくないから(対抗意識)」
とか全部ただの「自己満」ですから。
ソレは殺人事件が起こって「やった♪ 捜査が出来る♪」と
ウキウキしながら笑ってる莫迦な刑事と同じで(「踊る~」とか言いましたか)
被害者を非常に「侮蔑」した態度です。
(被害者はおまえを楽しませるために、女の子の好感度を上げるために、
駆け引きの材料に使われるために死んだわけじゃない)
毎度毎度「ジョジョ」と照らし合わせると一目瞭然なのですガ、
ジョジョの主人公で上記のような「個人的理由(私情)」で
戦ってる者は一人もいません。
ジョナサンは、エリナさんの好感度が上げたくて
ディオサマに立ち向かったんでしょうか?
ジョセフや仗助は日常がつまらないから
柱の男や吉良吉影と戦ったんでしょうか?
ジョルノも徐倫も「自己利益」のためだけに
ボス(ディアボロ)や神父と戦ったわけではないでしょう。
記憶を失ってる定助ですら、恩義のあるホリーさんや協力者の吉良 吉影 (8部)
康穂ちゃんのために自分を犠牲にしてまで戦っています。
では何故そういう戦いの「動機づけ」になるかというと、
最初に言いましたがそうしないと
他の人の「生命」を「侮辱」する行為に
繫がってしまうからです。
いい加減な気持ちで、「使命」だかなんだか知りませんが
他の人間を「大切」に想わず「結果的に救えた」だけでは、
他人は自己満足の「ついで」で助けられるという事になってしまい、
あぁなんだ、所詮他人の生命なんて自己満足で救える程度のモノなんだと
生命の重さまで「軽く」なってしまうコトになるのです。
例えば警察官や医者が「他人の事なんか関係ない。自分が満足すればそれでいい」
とかいう考えの持ち主なら、そんな人に生命や安全を任せる事は出来ないでしょう。
そしてそういう生命を蔑ろにする人間が、
見るに堪えない低劣な事件を起こすというのは
わざわざここに記すまでありません。
コレは本質的に「傲慢」な行為で、
勝手に自らの信念や思想(覚悟、使命、愛等と言い換えても可)を
他者の生命より「上」に持ってくる。
結果としてその生命は蔑ろにされる(本人の自覚がないまま)
その行きつく先が所謂「セカイ系」と揶揄されるモノのコトでしょう
(ワタシもこの手の作品は好きではありません)
人の生命が地球より重いとはいいませんが、
人の生命がフレイムヘイズの使命より軽いとも想いません。
ソレは聴くに堪えないヘンな歌唄ってたどこぞのカルト宗教と同じ考え方でしょう。
あげくの果てに「私達は自己満足が全ての酷いやつらだから!」とか
初代の人にドヤ顔で言わせたりしてるのは、
もう唖然とするのを通り越してただただ呆れるしかありません。
ソレこそ刃物振り回して馬鹿な事件起こしたヤツの言い分と同じコトでしょう。
一時期、陰惨な猟奇事件の加害者が未成年だったりすると、
その幼稚で稚拙で身勝手な言い分をまるで金科玉条のように
奉りあげた言論人や知識人が結構な数いましたが
この方もどうやらその系統の人のようですネ・・・・('A`)
だからやっぱりEVAは「貞本版」に限ると深く想い至った次第です。
(まぁ「破」までとスパロボ位なら観れますが・・・)
ソレでは。ノシ






 
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