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歌集「春雪花」

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 暁の

  紫煙に見えし

   昔日の

 夜にそぼ降りし

     君の思い出



 夜と朝の狭間…煙草に火をつけて一人…朝を待つ。

 立ち上る紫煙は、まるで穏やかな波を描く様に広がる…。

 そこに見え隠れするのは…彼がこの街にいた時間…。

 雪の舞い散る夜空…星の降る夜更け…他愛ない話をしたあの刹那は、今ではあまりにも遠い…。

 記憶は寄せては返し…私が波間を漂っているのか、波間が私の内にあるのか分からない…。


 そんな侘しい…一人きりの夜明け…。



 過ぎ来たり

  白妙染めし

    春の世に

 想い降らせし

     名残雪かな



 過ぎ去ったと思えば、またやって来る…それが季節と言うもの…。

 陽が射せば雪は溶けて…まるで春が白い衣に色を差すかのようだ…。

 だが、時に冬が舞い戻り…儚げな名残雪を散らせる…。

 あの時も…そう、彼がこの街からいなくなった時も…寂しげな名残雪が舞っていた…。


 私にとって、春とは…そう言う季節なのだ…。



 
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