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女々しくて

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第一章

             女々しくて
 俺はこの時真剣だった、だからツレにも通っている高校のクラスの中でこう言った。
「御前がそう言ってもな」
「どうしてもか」
「ああ、絶対にだよ」
 本当にそれしかないという声で言った。
「もう一度な」
「あの娘とヨリを戻すのか?」
「そのつもりだよ」
「止めとけ」
 ツレの返事は素気なくはなかった、俺に真剣に言ってきた。
「あいつは」
「向こうから振ったからか」
「それでどいつのところに行ったんだよ」
 俺を振って別の男のところに行った、そしてその男がというのだ。
「あいつは最低の奴だろ」
「それは俺も知ってるさ」
 そいつのことは俺達が通っている学校でも有名だ、俺もツレも彼女もそいつも同じ学校の生徒だからだ。
「弱い者いじめが大好きでケチで底意地が悪くて強い奴には諂って嘘吐きで強い奴に嫌いな奴のこと吹き込んだりな」
「あいつは屑だ」
 ツレは吐き捨てる様に言った。
「そんな屑を選んだんだぞ」
「そんな女だからっていうのか」
「あいつの方から行ってよかっただろ」
 俺にこう言った。
「どっちみちこうなっていたさ、いずれな」
「随分クールだな」
「クールも何もあんな奴を選ぶか」 
 またあいつの話だった。
「普通ないだろ」
「学校でも有名な嫌われ者だしな」
「そんな奴よりな」 
「俺の方がか?」
「いいに決まってる、御前は馬鹿だがな」
「馬鹿は余計だろ」
「馬鹿でも屑じゃないからな」
 だからだというのだ。
「いいんだよ」
「そう言うんだな」
「まだな、遥かにましだ」
「それでそんな奴を選ぶ女はか」
「もう願い下げにしろ」
「御前はそう言うけれどな」
「忘れられないっていうんだな」
「そうだよ」
 俺にしては必死だ、とにかく彼女に戻って欲しい。
「何とかならないか」
「はっきり言われたろ、あの女に」
 ツレの目は鋭かった、声だけでなく。
「もう御前はいいってな」
「ああ、はっきりとな」
「下らない男とか言われたらしいな」
「言われたさ」
 実際にとだ、俺も答えた。
「冷たい声でな」
「じゃあそれまでだよ」
「もう終わったっていうんだな」
「あの女は無視しろ」
 これがツレのアドバイスだった。
「あいつよりずっといい女はこの世にごまんといるさ」
「そう言うのかよ」
「何度でも言う、あの女は御前より遥かに馬鹿だ」
 俺を馬鹿と言ったけれどその俺よりも遥かにというのだ。 
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