レーヴァティン
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第一話 夢幻の世界へその十二
「じゃあまた次だ」
「また勝負をする」
「そして今度こそ決着つける」
「白黒をな」
「ああ、そうしろ」
「また勝負しろ」
「まだ納得しないのならな」
周囲は二人がまた勝負をするということには反対しなかった、だが今回の勝負はこれで終わってだった。
二人はそれぞれの部活に戻り汗をかいた、そうして久志も英雄もそれぞれの家に戻った。ここで久志は家でだ。
母にだ、食事中にこんなことを言われた。
「あんた最近何か」
「最近?何だよ」
「また大きくなったわね」
「沢山食って沢山運動してるからだな」
母のその言葉にだ、久志は笑って返した。
「だからだな」
「背が高いのはいいとして」
「このまま大きくなれ、か」
「違うわよ。一九〇まではね」
その背丈まではというのだ。
「ならないでね」
「そこまではか」
「そこまで大きくなったら困るから」
「背って大きい方がいいだろ」
「何言ってるのよ、服は特注でないといけなくなるし」
そこまで大きくなると、というのだ。
「海外から注文するか」
「お金かかるからか」
「あんた自身あちこちに頭ぶつけるわよ」
「ああ、バスとか乗ってもな」
「そこまで大きいとよ」
「そうなるか」
「力士さんなんか大変よ」
言うまでもなく大柄な者が多い、体格第一の仕事だけあってだ。
「それこそね」
「あの人達体重もあるしな」
「そうよ、あまりにも大きいと」
「かえって不便か」
「あんた自身がね」
そうなるというのだ。
「それ言っておくわよ」
「そうなんだな」
「だから今よりちょっと高い位でね」
「それ位がいいか」
「そう、巨人になりたいの?」
母は息子にこうも問うた。
「まさかと思うけれど」
「俺阪神ファンなんだけれどな」
「それお母さんもお父さんもよ」
母もそこは言う。
「アンチ巨人よ」
「それで俺にそう言うのかよ」
「そうよ。巨人になりたいの?」
「あそこまででかいとかえって不便だろ」
これが久志の返事だった。
「小さいので大体六メートルだよな」
「まあそれ位かもね」
「でかいので地球サイズとかな」
「ダイダラボッチだってかなりでしょ」
「そこまで大きくはなりたくないさ」
流石に、というのだ。
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