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夢幻水滸伝

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第一話 夢の世界その一

                 夢幻水滸伝
              第一話  夢の世界
 この時中里雄一はクラスメイトの芥川宗介に自分達のクラスである三年A組の教室の中でこんなことを言われていた。
「御前もあれやな」
「あれって何やねん」
 中里は眉を顰めさせて芥川に返した、細面でしっかりとした眉に奥二重の目である。髪の毛は黒くショートにしている。
 背は一七五あり身体は細めで引き締まっている、そのうえで芥川に言ったのだ。
「いきなり言われてもわからんわ」
「そやろな、今から受験のこと言うつもりでや」
「そう言ったんか」
「そや、御前経済学部進むんか」
「推薦はそっち受けるつもりや」
 芥川に素っ気ない感じで答えた。
「それで勉強もしてるわ」
「そうか、法学部ちゃうねんな」
「うちの法学部めっちゃレベル高いやろが」
 法学部と言われてだ、中里は芥川にすぐに怒った感じの顔で言い返した。
「あそこは」
「八条大学の中でもな」
「この高校付属やけどな」
 その八条大学の、というのだ。彼等が通っている八条学園高等部はこの大学の付属なのだ。
「それでも推薦で行くにしても」
「偏差値が必要やな」
「それこそ東大受かる位のな」
「そやろな、そやから僕も冗談で言うたんや」
「下手な冗談や」
 中里はこう言った。
「御前らしいな」
「ははは、そう言うか」
 芥川は笑って応えた。茶髪を短くしていて頭の左右を短くしていて明るい大きな目を持っている。細い顔はよく日焼けしていて唇は真一文字だ。眉は細い。
 背は一七四位であり中里より細身だ。中里は赤い詰襟を着ており芥川は黒のブレザーだ。どちらも八条学園高等部の制服だ。この学園は生徒それぞれが学校の所定する百近い制服から好きなものをそれも複数選べるのだ。見ればクラスの他の面々の制服もそれぞれ違う。
「これでも吉本に就職考えてるやけどな」
「漫才するつもりか」
「落語や」
「御前落研に入ってるしな」
「忍者部とな」
「掛け持ちやったな」
「どっちも楽しいで」
 芥川は明るい顔で中里に所属している部活のことも話した。
「ほんまにな」
「それはええことやな」
「そやろ、人生は楽しむもんやしな」
「僕もそれは同じ考えや。けどな」
「けどって何や」
「漫才やないんやな」
「漫才は一人ではできん」
 芥川ははっきりと言い切った。
「コンビかトリオか」
「三人漫才は減ったな」
「そやな、そういえば」
「二人やな、今は」
「それで御前は二人ではせんのか」
「そや、落語家でやっていくで」
「そんで大学は文学部かいな」
 中里は芥川の進学のことを聞いた、自分も聞かれたので聞き返したのだ。
「あそこに行って落語勉強するんかいな」
「古典落語をな」
「創作落語はせんか」
「それも好きやけどまずはや」
「古典か」
「そっちをやって基礎固めたくてや」
 こう考えているからだというのだ。
「僕はまずは古典落語やるで」
「そうか。ほな頑張るんやな」
「そうするわ」
「僕は経済学部行くけどな」
「合格出来るんやろな」
「そうなる様に受験勉強してるわ」 
 これが中里の返事だった、自分の席に座って前の席に座って話をしてきている芥川に対して答えている。 
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