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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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87部分:雷神その三


雷神その三

 別の男が剣を突き立てながら上から襲い掛かる。少女は左手で手刀を作り下から上へ一閃させた。風の刃が敵の左脇から右肩を切り裂いた。
「姫様!」
 騎士は剣を手にしたまま二人の少女の方へ駆けて行く。目の前に三人の男が立ちはだかる。だが騎士はその三人の男をたちまちのうちに斬り伏せた。そして白の法衣の少女の方へ駆け寄った。
「よくぞご無事で・・・・・・」
 騎士は安堵の表情で少女を見た。汗に濡れた顔が見る見るうちに落ち着いたものになる。
「遅いわよ、コノモール。もう敵は全員やっつけちゃったわよ」
 少女は騎士を見上げながら言った。気の強そうな瞳に悪戯っぽい微笑を浮かべている。
「申し訳ありません・・・・・・」
 コノモールと呼ばれた騎士は頭を垂れた。
「良いわよ、ちゃんと助けに来てくれたんだし、有り難ね。あ、紹介するわ。あの女の子はディジー、解放軍の一員よ。セリス公子に言われてあたしを助けに来てくれたんだって」
「解放軍の・・・・・・。かたじけない、感謝致します」
 コノモールは片膝を折り机から跳び下りてこちらに来たディジーに礼をした。
「エヘヘ、何か照れるなあ。ミランダ、この人誰?」
「コノモールっていうの。元はアルスターの将軍だったの」
「じゃああんたの家の家臣だったのね」
「うん。けどフリージ家がレンスターに入った時アルスター王家は実権を奪われちゃってね。一貴族に落とされちゃったの。父様と母様はそれを苦にしてそのまま死んじゃってあたしはこの修道院に入れられてね。仕方無くフリージ家に仕えてたの。けどずっとあたしに会いに来てくれてたし色々と助けてくれてたりしててね。今度もあたしの命が危ないって知って駆けつけて来てくれたの」
「ふうん、いい人ね」
「まあね。ちょっと口煩いけれど」
 ミランダはコノモールの前に出た。
「コノモール、あたし解放軍に入るわ。そしてアルスター王家を滅ぼした帝国をやっつけるの。いいでしょ?」
 主の言葉に騎士は微笑んだ。にこりとした柔らかな笑みだった。
「勿論です。及ばずながら私も御一緒させて頂きます」
「コノモール・・・・・・」
 ミランダは立ち上がったコノモールの左手をその小さな両手で握り飛び跳ねながら上下に振り回した。コノモールはそのミランダの姿を見ながら優しい笑みを浮かべていた。
「むう、またしても奴等にしてやられたか・・・・・・」
 ブルーム王が上空で舞う竜や天馬を忌々しげに見ながら呻いた。次々と解放軍の兵士達が城内に降りていっている。
「陛下、ここはもう危のうございます。早く行きましょう」
「ぬう・・・・・・」
 城から東門への路から数人の男女が駆けて来る。見ればまだ若い。
「ブルーム王ね、覚悟なさい」
 ラクチェが剣を構えた。スカサハとロドルバン、ラドネイがそれに続く。
「ラクチェにばかり活躍させないんだから!」
 城壁の上からタニアとロナンが姿を現わした。手に弓を持っている。
「そうそう、いつも真っ先に切り込んでんだ、たまには休んどけ」
 王の右手にリフィスが出て来た。シヴァとマリータもいる。
「まああたしは人の事言えないけれどね」
 マチュアがホメロスと共に王の左手に現われた。王の上空には四天馬騎士と竜騎士の兄妹がいる。
「貴様等、シアルフィ軍の・・・・・・」
「そうよ。今日はあんたに会いたいって人がいるから連れて来たわ」
「何っ!?」
 ラクチェがそう言い横に動くと銀髪の少年が前に出て来た。見覚えのあるその顔立ちに王はその少年が誰であるかすぐに解かった。
「貴様、ティルテュの・・・・・・」
「そうだ、アーサーという。覚えておいてくれ」
「何用だ・・・・・・」
 彼は睨み付ける王に対し言った。
「残念だが用があるのは俺じゃない」
「どういう事だ」 
「貴様に用があるのはこの娘だ」
 アミッドとリンダに守られ出て来たのはアーサーと同じ色の髪を持つ少女だった。
「ティニー、生きていたか」
 それに対し彼女は一言も発しない。ただ前にいる叔父を見ている。
「どうやらわしに言いたい事があるようだな。良いだろう。おい、卿等」
 周りで防護を固める側近の騎士達に言った。
 
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