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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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85部分:雷神その一


雷神その一

                       雷神
−アルスター城ー
 アルスター西においてフリージ軍の主力部隊が解放軍に一敗地にまみれたとの方はすぐにブルーム王の下にも届いた。それを聞いて王は怒りで肩を震わせた。
「馬鹿な・・・・・・。その様な事が有り得るものか・・・・・・・・・」
 ブルーム王は背に大きなガラス窓がある広い執務室で騎士の報告を雷の様な声で半ば怒鳴る様に否定した。
「で、ですがこれは・・・・・・」
 騎士は王の剣幕に慄きながら震える声で言った。
「真だというのか。して軍は!?」
「ケンプフ、バルベデス、ザイルの三将軍が戦死、ヴァンパ、フェトラ、エリウの三将軍は退却する軍を率いてアルスターに到着しました。軍は十二万程にまで減っております」
「四万も倒されたか・・・・・・、シアルフィの奴等め、小癪な真似を。してティニーは!?」
 騎士の顔が暗くなる。
「それが・・・・・・」
「戦死したというのか。クッ、まさか我がフリージの者が討たれるとはな」
 ブルーム王は歯噛みした。その時部屋に別の騎士が入ってきた。
「陛下、大変です。ダンドラム要塞が陥落しました!」
「何ィ!」
「守将レイドリック将軍以下全将兵が戦死、シアルフィ軍はアルスターの後方へ進軍しております!」
 別の騎士が入ってきた。
「陛下、レンスター城攻略中の我が軍がシアルフィ軍の奇襲を受けました!グスタフ将軍は戦死、兵はコノート、アルスターへ散り々々に逃げております!」
「なっ・・・・・・・・・」
 王は絶句した。そして同時に全てを悟った。自分がシアルフィ軍の戦略の前に完敗した事に。そして今虎の口の中にいる事に。
「レンスターからこちらに向かっている我が軍の兵力は?」
 王は何とか冷静さを取り戻しながら問うた。
「二万程。残りの一万程がコノートへ」
 騎士の一人が答えた。王は壁に掛けてある地図を見た。レンスター、メルゲン、ダンドラム、三方からシアルフィ軍は向かって来ている。だが一つだけ道が残っている。アルスターから北東へ向かい森を抜けコノートへ至る道だ。慰安はこの道しかない。
「その二万の兵は今何処にいる?」
「レンスター北を進んでいます。今日の夕刻には全軍このレンスター城に着きます」
「そうか・・・・・・。そしてシアルフィ軍の動きは?」
「明日の昼頃には城に攻め寄せて来るでしょう。大軍とは思えぬ程の速さです」
「そうか」
 それを聞いて王は意を決した。騎士達の方へ向き直る。
「決定した。このアルスターからコノートへ一時撤退する。明日の夜明けには全軍この城を発ち始めるようにするぞ」
「篭城は為さらないのですか?」
 騎士の一人が問うた。
「うむ、今の我が軍の士気は低下し兵力も敵より劣っている。そして三方から包囲されようとしている。ここは一先ず退き態勢を立て直す」
 如何にも合理的で冷徹なブルーム王らしい考えだった。騎士達も納得して頷いた。
「皆に伝えよ。傷を負っている者や軽装の者は食糧だけ持ってすぐにコノートへ発てとな。そして次に歩兵や魔道師が行け。次は騎兵、最後はわしが近衛軍である雷騎士団と共に撤退する。事は一刻を争う、すぐに取り掛かれ!」
 「はっ!」
 騎士達はフリージ式の敬礼をし、すぐに部屋を発った。そして次々とフリージ軍の将兵達が城を発ちコノートへと撤退していった。
 夜が明けた。フリージの将兵達は既にそのほとんどがレンスター城からの撤退を済ませており残っているのは王とその側近、そして雷騎士団だけとなっていた。
「では陛下、行きましょう」
「うむ。ところでレンスターから逃れてきた者達は如何した」
「今しがた城を発ちました」
「そうか」
「では我等も」
「うむ」
 ブルーム王は側近の者に促され王宮を出た。振り返り王宮を見る。
 アルスター王家の時より王宮として使われてきた宮殿である。神殿を思わせる荘厳な造りで有名であり彼もそのまま宮殿として使っていた。
「この宮殿とも暫しの別れだな」
 その時王の脳裏に一つの事が浮かんだ。
 
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