300系が姿を見せたその瞬間、東京駅のホームは怒号とフラッシュの嵐となった。
当の300系・・・のぞみは内心苦笑しながら、静かにホームに止まった。
バイザーを上げてテツユキとミナヨを探したかったが、そんな事をすると騒ぎが一層大きくなるだけなので我慢した。ま、いずれバイザーを上げることになるが・・・。
出発式の終わりごろにバイザーを上げ、目を出した。
予想通りフラッシュの集中攻撃に遭った。
目をパチパチさせながらテツユキとミナヨの姿を探したが、見当たらなかった。
もう乗ってしまったのか。それとも、やっぱり・・・。
ミナ「のぞみ、もしかして私たちを探しているの?」
テツ「もうとっくに乗ってるよ。」
二人の声だ。
ミナ「疑っているなら今、画像送るわね。」
のぞみのカメラアイにスマホから送ったらしい車内の映像が移った。
先頭車内だ。ミナヨとテツユキが顔を出す。
のぞみ「良かった。てっきり・・・。」
テツ「何せ人が多くてさ。ろくに近づけなかった。」
ミナ「のぞみ、昔からいつもただで乗せてくれていたわよね。
今思うと、私もいっぱいワガママ言ってのぞみを困らせて・・・ごめんね。」
テツ「ミナヨらしくないだろ。本当に違う意味で俺が困っちまうよ。」
昨日の言い争いがウソと思えるような光景だった。大丈夫だ。ミナヨちゃんはもう暴走少女じゃない。
テツユキ君も同じだ。昨日のアレは気恥ずかしさか何かが悪い形で出ただけだ。
のぞみ「言えたな。二人とも、今日一日は好きに楽しんでくれよ。」
ミナ「・・・そうね。のぞみって車内が広く作られていることだし、ゆっくりさせてもらうわ。」
テツ「そう。300系の車内は広いから、俺みたいな脚の長いやつだって背も足もグーンと伸ばして・・・。」
ミナ「・・・アレ?いつもズボン買ったとき、裾いっぱい切っていた人誰だったかしら・・・???」
テツ「ギク・・・いや、それはミナヨだろ。」
ミナ「いや私が短くしていたのはスカート・・・って何言わせるのよ#。」
のぞみ「プ・・・クフフヒヒヒハハハ・・・。」
ミナ「ちょっとのぞみ、何笑っているのよ。」
のぞみ「いやいや、そういうホノボノしたやり取り、いかにも君たちらしいなって・・・。」
ミナ「はい?」
テツ「ままま・・・のぞみ、リラックスできたんならよかった。」
のぞみ「ははは・・・そろそろだ。携帯回線をOFFにする。」
テツ「ああ・・・。」
ナ「のぞみ・・・頑張ってね・・・。」
プワアアアアアン・・・。
10時47分、300系「のぞみ」最後の出発だ・・・。