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Blue Rose

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第四十六話 対策その二

「戸籍管理の場所にはいなかったけれど」
「あっ、そうなんですか」
「管理担当の一人の若い娘に乱暴してその写真をタテに脅迫したらしいわ」
「その役人も屑ですね」
「類は友を呼ぶ、ね」
 副所長はこの言葉も出した。
「まさに」
「そうですね」
「そしてその言葉通りにね」
「そいつはそうしてですね」
「蓮見さんの本籍地を調べて」
「そんなこともしたんですか」
「本籍地は奈良らしいわね」
 優花のそれはというのだ。
「そこの市役所にもつてがあったらしくて」
「そこからですか」
「戸籍謄本の情報を手に入れたみたいよ」
「無茶苦茶なやり方ですね」
「普通はしないわね」
「犯罪ですし」
 そもそもというのだ。
「滅多なことでは」
「そうね、けれどね」
「今回はその滅多なことが起こりましたね」
「その通りよ」
「そうした人間もいるのですね」
 岡島は苦々しい顔になって言った。
「世の中には」
「遵法精神もモラルもないね」
「話は聞いてましたけれどね」
 医師としてだ、岡島は精神鑑定のことも学んでいる。それで犯罪にまつわる精神心理についても造詣があるのだ。
 その造詣からだ、彼は言った。
「サイコパスですね」
「どんな悪いことをしても平気なね」
「そうした奴等ですか」
「そうかも知れないわね」
 副所長も岡島のその言葉を否定しなかった。
「あの人達は」
「滅多にいませんがね」
「ええ、しかも責任ある立場にいる確率はね」
「さらに低くなりますね」
「そうよ、けれど今回はね」
「その相当に確率の低い事態がですね」
 まさにその事態がというのだ。
「起こったのよ」
「そういうことですか」
「確かに滅多にないことよ、けれどね」
「もう二度とこんなことが起こらない様にですね」
「しないといけないわ」
 こう言うのだった。
「やっぱりね」
「そうですよね、ですが」
「この療養所の情報、蓮見さんに関するそれはね」
「もっと別のところに隠すことで対応出来ますね」
「八条病院の院長室とかね」
「そうしたここよりもずっとセキュリティのある場所に保管してもらう」
「それでいいですね、ですが」
 それでもというんおだ。
「戸籍謄本になると」
「あんなの本人でも閲覧出来ないですからね」
「そうよ、そうそうはね」
 滅多なことではだ、役所の方も本人の要望でも抄本で済まないのかと何度も言ってとにかく謄本は渡そうとしない。
「そんな工作員みたいなね」
「とんでもない方法で仕入れるとかは」
「しないわ」
 衝夫達の様な、というのだ。
「だから余計になのよ」
「対策が難しいですね」
「正直そこまでするとはね」
「副所長も思いませんでしたね」
「想像もしていなかったわ」
 到底、とだ。副所長は岡島に答えた。
「私にしても」
「そうですよね」
「またこうした相手が出るかって思うと」
「その可能性はゼロに近いにしても」
「考える必要があるわね」
「そうですね」
「謄本の蓮見さんのその部分だけは」
 優花がかつて男であったこと、まさに謄本にしか書かれていない様なことはというのだ。 
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