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ファイアーエムブレム聖戦の系譜 〜幾多の星達〜

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41部分:魔剣その二


魔剣その二

「そうか、二人共良い名じゃな。してそなたの名は?」
 ブラムセルは詰め寄らんばかりに身体を前のめりにして緑の髪の少女に問うた。少女は僅かに眉を顰めたがすぐにそれを直して答えた。
「リーンです」
 ブラムセルは涎を垂らさんばかりににやけ手招きをしつつ言った。
「そうかそうか、リーンよ。近う寄れ、近う寄れ」
 下心丸出しの声でリーンを側に寄せようとした。それに対しリーンはキッとブラムセルを睨みつけるとプィと後ろを向き大広間から立ち去ろうとした。
「こ、これ何処へ行くのじゃ」
 ブラムセルは慌ててリーンを引き止めようとする。リーンはブラムセルの方を向き強い口調で言った。
「あたしはあんたみたいな奴が一番嫌いなのよ。そんな下心見え見えの言葉に誰が従うと思ってるの!」
 それに対しブラムセルは口の片端を歪ませて言った。
「やれやれ気の強い小娘じゃ。増々気に入ったぞフォフォフォ。だがぞう、口のきき方を教えてやろう」
 衛兵が左右から現われリーンの両手を押さえた。
「何すんのよ!」
 衛兵達はブラムセルの前へ引き立てて行こうとする。レイリアとラーラがリーンを助けようとした時一人の男が衛兵達の前に立っていた。
「汚い手を離せ、屑共」
 先程ブラムセルがリーンを好色そうな眼で見るのを睨みつけていた男だ。見事な金髪に強い光を放つ藍氷色の瞳をした長身の青年である。白面の整った美しい顔立ちからは気品が漂ってさえいる。黒と金の軍服に黒いズボンとブーツの上に黒マントを羽織っている。
「さもなければ俺が相手になろう」
 腰にかけている剣を抜いた。大剣と見間違うばかりの大きな剣である。刀身は白銀色の光を放ち様々な宝玉で装飾された柄の部分は黒曜石の様に輝いている。
「この剣は人の血を欲する・・・。貴様等の血を吸わせてやろうか」
「ひっ・・・・・・」
 衛兵達に剣を突きつける。場は騒然となった。男の周りを衛兵達が取り囲む。その時二人の男女が出て来た。
 一人は深緑の髪に黒い瞳の男らしい顔立ちの大男である。深緑の軍服に白ズボン、赤がかった黄のマントとブーツを身に着けている。もう一人は短く切った黒髪とやや細い黒の瞳をした女剣士である。細いがやや高くしっかりした身体に黒い服と灰のズボン、皮鎧とブーツを着けている。
「もう舞は終わった。今度は剣の舞でも披露するつもりか?」
 深緑の男が黒服の男に言った。
「ブライトン・・・・・・」
 女剣士も衛兵達と黒服の男の間に入って来た。
「マチュアもか」
「そうよ。あんたまさか本気でその剣を使うつもりじゃないでしょうね」
「うっ・・・・・・」
 男は詰まった。マチュアは更に言葉を続ける。
「あんたの腕ならここの衛兵が何人かかろうと敵じゃないでしょうに。何でそんなもの抜く必要があるのよ」
「ミストルティンは神器でありながら血を好む魔性の剣・・・。それを言ったのは他ならぬ御前自身ではないのか」
「ミストルティン!?」
 ブライトンの口にしたその言葉に場の一同はどよめきだった。聖戦の折十二聖戦士の一人黒騎士ヘズルが使った神器であり大陸最強と謳われたクロスナイツを率いて活躍した名将エルトシャン王が手にしていた伝説の剣、その力は一個軍に匹敵するとまで言われている。今それを持つ者の名も世に知らぬ者はいなかった。エルトシャン王の遺児でありシャナン王子と並び称される大陸最強の剣客の一人、その男の名は。
「そうか、貴様があの黒騎士アレスか」
 ブラムセルが黒服の男を見た。彼はかってエルトシャン王をアグストリアへ商売で行った時に見た事がある。そういえばよく似ている。まるで生き写しではないか。
 
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