八条荘はヒロインが多くてカオス過ぎる
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第百二話 長崎に来てその十三
「あれで」
「世の中色々な方がおられ」
「そして、ですね」
「そうした方がおられてもです」
「いいですね」
「私はそう思います」
「僕は親父と違いますから」
今度は自分が遠い目になったとだ、僕は感じた。
そしてそのうえでだ、こう畑中さんに答えた。
「破天荒には生きられないですが」
「それでもですね」
「親父のそうしたところは忘れないです」
「そしてですね」
「はい、そしてです」
「大人になられて」
「結婚して子供が出来たら」
まさにその時はだ。
「親父みたいに子供のことを忘れない」
「そうした方になられますか」
「目指します」
実際になれるかどうかわからないけれどだ。
「そうします」
「そうですか」
「はい、そして」
僕は畑中さんにさらに話した。
「八条家のいんねんはまだありますね」
「はい、残念ながら」
いんねんは一つとは限らない、だからそれを一つずつ切ってそのうえでやっていかないといけない。子供達に悪いものを残さない為に。
「それはあります」
「それならです」
「義和様もですか」
「いんねんを切りたいですね」
「止様の様に」
「そうしたいです、親父は別れのいんねんを切ってくれたみたいですから」
死に別れるそれをだ。
「なら僕も」
「では頑張って下さい」
「そうさせてもらいます」
畑中さんに約束した。
「これから」
「そしてですね」
「その為に強くなります」
「お心が」
「そうなりたいです」
まさにとだ、僕は畑中さんに答えた。
「その強さでいんねんも切りたいですね」
「そうなのですね」
「そう思いました」
「素晴らしいことです」
畑中さんの僕への返事はとても暖かいものだった、これ以上はないまでに。
「では」
「はい、それなら」
「お励み下さい」
「本当にそうさせてもらいます」
「まずは決心されることです」
「そして動く」
「そうなります、では」
ここでだ、電車が停まった。窓の外を見れば。
日本にあるのに日本じゃない、不思議な街並みがそこにあった。僕達が目指していたその場所があった。
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