提督はBarにいる・外伝
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提督はBarにいる×たんぺい編・その1
前書き
はい、というワケでウチの常連さんの中でも古参の部類に入るたんぺいさんの登場です。ハーメルンの方で短編や長編、様々な作品を書かれているたんぺいさんですが、今回は1話限りの短編に登場した提督がご出演です。
この提督業界……ってのも変な言い回しだが、この世界にも下衆な野郎ってなぁ、少なからずいるもんさ。大将5人が派閥闘争やってるなんて陰口を叩く奴もいるが、俺ぁ上昇思考ってのが欠けてるモンでね。そういう事にゃあ興味がねぇ。まぁ、ウチに粉かけようなんて奴がいたら、全力で叩き潰す所存ではあるが。
提督同士の権力争いなんてのは可愛いモンさね。人は競い争う生き物だ、それが進化の原動力だし本能だ。止めやしねぇ……ただ、艦娘を食い物に私腹を肥やそうって輩は犬も喰わねぇようなクソ外道だ。実際、ジジィの差し金でそういう鎮守府を潰す手助けをしたのも1つや2つじゃねぇ。そしてそういう所は大概、『ブラック鎮守府』なんて揶揄されるような所だ。
『ブラック鎮守府』ーー元々は反社会的勢力……まぁ要するにヤクザ者だ、そういう連中がシノギの為に作った隠れ蓑ってのが語源らしいが、最近じゃあ大量に人材を雇用し、違法労働や過重労働でそれを使い潰して企業の利益を上げる会社の事を指す。ブラック鎮守府ってのぁその鎮守府版だな、正に。
艦娘に人権を認めず、休息も認めず、使い物にならなくなれば解体し、夜な夜な慰み物にする。ひたすらに鎮守府の……いや、提督個人の利益と名誉を追求した鎮守府……艦娘にとっちゃあ正に生き地獄。死んだ方がマシ、なんて考える連中も出てくるだろうさ。勿論、大本営はブラック鎮守府を認めていないし、取り締まりは相当に厳しい物だ。だがそれでも、無くなる事はない。そんな外道は一人残らず叩っ斬ってやりたいが、俺もそんなに暇じゃねぇ。
そんな中、奇妙な鎮守府の噂を聞いた。人に聞けばそこは間違いなくブラック鎮守府だ、と答える。しかしウチの諜報部員(主に青葉とか)の調査によれば運営は健全そのものだし、艦娘への被害報告もない。これは一体どういう事だろうか?ここは一つ、ウチの鎮守府にお招きして俺自らが見定めてやろうじゃねぇか!と考えたのが3日程前。そして今、俺はそれを激しく後悔している。目の前で繰り広げられているカオスなこの状況、何とかしてくれ。
「す……酢醤油ですっ!」
「いいや、黒蜜や!」
……何かどっかで聞いた事があるような口論を繰り広げているのは、件の鎮守府の提督の嫁艦である羽黒と黒潮。そしてその2人に挟まれて小さくなって黒霧島のロックをチビチビと舐めているのが噂のブラック鎮守府の提督、『黒野 割人(くろの わるひと)』大佐だ。
あぁそういう事か、と会ってすぐに理解した。何せ名は体を現す、というか名も体もブラック鎮守府を示していたのだ。何故か提督の服装は葬式でもないのに真っ黒な軍装、後ろに控える嫁艦は羽『黒』と『黒』潮。そして極め付きに提督の名前が
『黒・ノワール・人』
だもの。どんだけ黒が好きなのよ。何?黒いものじゃないといけない呪いなの?寧ろその軍装が呪われてて黒い物しか受け付けない身体になっちゃったの?……とか思ってたら名前も本名。血統だったぜ畜生。そして嫁艦2人が何で言い争っているかと言えば、
『ところてんに何をかけるか?』
である。夏の暑い日のお供、ところてん。おやつに食べるもよし、涼しげな肴とするもよし。しかしところてんというのは無色透明がデフォルト。真っ黒大好き黒野大佐のお気に召さないのでは?と思ったが、かける物の定番が黒かったね、そういえば。そして関東系の羽黒は酢醤油を、根っからの関西人である黒潮は黒蜜をそれぞれプッシュしている、というワケか。そしてこんな不毛な争いが毎日のように繰り広げられているらしく、間に挟まれた黒野大佐の顔にはありありと疲労の色が伺える。下手すると顔にちっちゃく『たしゅけて……』って書いてあったかもしんない。仕方ねぇ、助け船を出してやるとしますか。
「あ~、お嬢さんがた。ウチの店は喧嘩はご法度、幾らこっちがお招きした客人だからと言って例外は無いんだがね?」
「何やと!そっちが呼びつけておいてその態度はないんやないの!?」
真っ向から噛み付いて来たのは黒潮。成る程、大阪の気の強いネーチャンって感じだな、正に。
「郷に入っては郷に従え、って言葉があるだろ?お嬢ちゃん。ましてやここは自分の家じゃねぇんだ、そこのルールには従うモンだと思うが?」
こちらに身を乗り出して来た黒潮の顔面を、右手で鷲掴みにする。力を籠めるとミシミシと頭蓋骨が軋む音がする。ダメージを与えるつもりは無い、軽い脅しだ。そのまま力づくで椅子に座らせると、放心状態というか少し青冷めているようにも見える……少しやり過ぎたか。
「すいません、ウチの部下が粗相を」
「いやいや、呼びつけたのはこっちだからな。黒潮の反応も尤もだ」
さて、騒ぎは一旦収まったが、この調子ではすぐに再燃するだろう。なら、ところてんに黒ではない物も合う、ということを教えてやればいいか。我ながらナイスアイディア。
「まぁ、ところてんにゃ黒蜜と酢醤油ってのが定番だがね。それ以外にも美味い食べ方はあるんだぞ?」
俺がそう言うと3人はキョトンとしている。さぁて、ここからが俺の本領発揮だ。
まずはところてんで簡単に作れる、ツマミを2つご紹介。……何?『ところてんはそのままでもツマミになるだろ』だと?一手間加えて更に美味しくするんだ、文句はねぇだろ?
《腸内のデトックスに!ところてん納豆》
・ところてん:300g
・納豆:1パック
・卵:1個
・醤油:適量
・マヨネーズ:小さじ1/2
※ねぎ、大葉、辛子等はお好みで。
ところてんはザルにあけ、水気を切る。別の器に納豆、卵、醤油、マヨネーズを入れ、よく混ぜる。お好みで辛子やねぎ、大葉なんかを足して。
ところてんを器に盛り、かき混ぜた納豆をかけたら出来上がり。よく混ぜて納豆をところてんに絡ませて頂きましょう。
《ところてんにコクをプラス!鶏皮ところてん》
・ところてん:70g
・鶏皮:20g
・小ねぎ:適量
・一味唐辛子:適量
・ポン酢:適量
ところてんはザルにあけて、流水で洗って水気を切っておく。
鶏皮は茹でては洗いを2~3回繰り返して余分な脂を落とす。茹で上がったら千切りにする。小ねぎは小口切りに。
器にところてん、鶏皮、小ねぎを盛り付け、一味を振って、ポン酢をかけたら出来上がり。
「お待ち。『ところてん納豆』に『鶏皮ところてん』だ」
「え、これところてんなん?」
「こんなの見た事無いです……」
「まぁ、騙されたと思って食ってみな。不味けりゃ残してくれて構わんよ」
こんなのが本当に美味しいのか?という表情で恐る恐るチュルリ、と啜る3人。途端にズルズルと猛烈な勢いで啜っていく。感想はいらん、リアクションでわかる。さて、このペースだと食べ終わるのも相当早い。お次の料理を仕込むとしますか。
《ダイエットや夜食に!ところてんDEきつねうどん風》
・だし汁(昆布だし):800cc
※水800ccに昆布茶大さじ4、ほんだし大さじ1弱
・薄口醤油:大さじ2
・みりん:大さじ2
・酒:大さじ2
・塩:小さじ1/4
・砂糖:小さじ1
・えのき:10g
・ほうれん草:40g
・きつねうどん用油揚げ:2枚
・かまぼこ:4切れ
・あさつき:適量
さて、作っていこう。ところてんは水に晒して30分程置き、しっかりと水気を切って冷蔵庫で冷やす。売られているところてんは防腐用の酢水に浸けてあるからな、しっかりとそれを抜かないとうどんつゆが酸っぱくなるぞ。
お次はつゆを作る。鍋に出汁と調味料を入れて合わせ、火にかけてえのき、お揚げを入れて煮る。ほうれん草は別の鍋で茹でておき、かまぼことあさつきも必要な大きさにカット。
仕上げは丼にところてんを盛り、具材を載せ、つゆを温かい内にかければ完成。所謂『ひやあつ』で仕上げるのがポイントだな。ところてんは加熱すると溶けちまうからな……あぁ、うどんつゆかけたぐらいなら大丈夫だぞ?
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